道理恋慕

恋慕と成就

恋慕と成就４

　小学5年生では、奇跡が起きた。4月のクラス替えで、再び芽衣と同じクラスになれたのだ。卒業までは、ずっとこのクラスのまま。俺は歓喜に沸いた。

『上原芽衣』と『内田大和』は、相変わらずのお隣スタート。この学校の出席簿が誕生日順ではなく、名前順で心底良かった。

　授業中、自然と綻ぶ顔を何度も真顔に復元し、窓の外を眺める振りして俺は君を目に収め続けた。毎日毎日それが日課のようになっていたから、とある日俺は気付いてしまったんだ。芽衣の心が、俺になんかないという事を。

「芽衣、勇吾が好きなの？」
「え？」
「古河勇吾。いつも見てんじゃん」

　10歳の俺はパンも焼けるようになったし、妹の世話にも慣れてきたが、女の扱い方は初心者だった。オブラートに包むとか、遠回しに聞くとか、そういったテクは使えない。

「み、見てないよ！」

　芽衣は教科書で顔を隠して言った。1年生の4月、はじめましての俺を人間違えしてしまった時を思い出させるほどに赤い耳朶。それがもう、答えだった。

　芽衣は勇吾の事が好きだ。いつも襟がある服、テストは満点で学級委員。俺とは正反対の、あいつの事を。