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恋慕と成就
恋慕と成就2
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芽衣の人違いから始まった出逢いだから、彼女の第1印象は変な子、不思議な子。それでも半月ほど彼女のお隣さんをやっていれば、そのキャラクターが掴めてくる。
「なあ、めい。けしゴムわすれちゃったんだけどかしてくれない?」
「けしゴム?きのうはアカアオえんぴつだったよね」
「うん」
「うっちゃんはいっつもなにかわすれるなぁ」
俺の家庭はどちらかと言えば放任主義で、宿題のチェックは勿論の事、翌日の持ち物に目も通されない。毎日行わなければならない連絡帳のサインも、入学初日から「自分でやって」と判子を渡される。
これだけを話せば、育児放棄だと捉える人も少なからずいるだろう。でも俺は違うと思っている。父親にも母親にも愛はある。それだけは言える。
彼等からの愛を感じる瞬間など無数にあって、誕生日には必ずケーキでお祝いをしてくれるし、欲しいと強請ったものを断られた経験もない。卒園式の時なんて、夫婦揃って泣いていた。
ただ、詳しい事は分からないが、両親共に少し特殊な仕事をしているらしくて、平日に家族以外の人間が家に来る事も暫しあるから、そういう時は、俺とふたつ歳下の妹はあまり居間で過ごさないように努めている。仕事仲間だという強面な大人達に緊張してしまうから、というのも理由のひとつだが。
普段の父親は俺よりも起床が遅い。母親もトースターに食パンをかけると、煙草を吹かしながら眠たい目を擦っている。それくらい、毎日忙しい仕事なのかもしれない。
妹の牛乳を入れてあげるのは俺の役目。「パンもおれがやくから、まだねてていいよ」と、そろそろ言ってあげないとな、なんて思っている近頃だ。
ゴソゴソとピンクの筆箱を漁った芽衣は、その中からフルーツの形をした消しゴムを取り出した。
「これ、うっちゃんにあげるよ」
「なにこれ。みかん?」
「オーレーンージー」
君はぷうっと頬を膨らませた後に、油性ペンで消しゴムに文字を入れた。
「はいっ。これでうっちゃんのものだから。なくさないでね!」
そう言って手渡してくれたのは、『うっちゃん』と書かれたオレンジの消しゴム。
「うっちゃん……」
「あはは。『やまと』ってかかないとへんだったかなあ」
「どっちでもいいけど……」
「あははは」
全身はまた、爪先まで痒くなる。
「サンキュ」
「なあ、めい。けしゴムわすれちゃったんだけどかしてくれない?」
「けしゴム?きのうはアカアオえんぴつだったよね」
「うん」
「うっちゃんはいっつもなにかわすれるなぁ」
俺の家庭はどちらかと言えば放任主義で、宿題のチェックは勿論の事、翌日の持ち物に目も通されない。毎日行わなければならない連絡帳のサインも、入学初日から「自分でやって」と判子を渡される。
これだけを話せば、育児放棄だと捉える人も少なからずいるだろう。でも俺は違うと思っている。父親にも母親にも愛はある。それだけは言える。
彼等からの愛を感じる瞬間など無数にあって、誕生日には必ずケーキでお祝いをしてくれるし、欲しいと強請ったものを断られた経験もない。卒園式の時なんて、夫婦揃って泣いていた。
ただ、詳しい事は分からないが、両親共に少し特殊な仕事をしているらしくて、平日に家族以外の人間が家に来る事も暫しあるから、そういう時は、俺とふたつ歳下の妹はあまり居間で過ごさないように努めている。仕事仲間だという強面な大人達に緊張してしまうから、というのも理由のひとつだが。
普段の父親は俺よりも起床が遅い。母親もトースターに食パンをかけると、煙草を吹かしながら眠たい目を擦っている。それくらい、毎日忙しい仕事なのかもしれない。
妹の牛乳を入れてあげるのは俺の役目。「パンもおれがやくから、まだねてていいよ」と、そろそろ言ってあげないとな、なんて思っている近頃だ。
ゴソゴソとピンクの筆箱を漁った芽衣は、その中からフルーツの形をした消しゴムを取り出した。
「これ、うっちゃんにあげるよ」
「なにこれ。みかん?」
「オーレーンージー」
君はぷうっと頬を膨らませた後に、油性ペンで消しゴムに文字を入れた。
「はいっ。これでうっちゃんのものだから。なくさないでね!」
そう言って手渡してくれたのは、『うっちゃん』と書かれたオレンジの消しゴム。
「うっちゃん……」
「あはは。『やまと』ってかかないとへんだったかなあ」
「どっちでもいいけど……」
「あははは」
全身はまた、爪先まで痒くなる。
「サンキュ」
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