道理恋慕

華子

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プロローグ

プロローグ2

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 俺はどんな判決でも飲む決意を固めた。遺族が望むのはどうせ死刑だろう。人を殺めたら己の命で償えと、俺でもそう思うよ。

 だから弁護なんて要らないし、法律の壁も要らない。求刑された内容に頷くと、当の本人が言っているのに、何をそんなに俺を守りたがる?

 俺が死ぬ意味は腐るほどあっても、生きる意味はない。だからいいじゃないか、遺族の思うままにさせてあげようよ。

 面会室に入室すると、いつもの弁護士が既に着席していて、俺を待っていた。

「ん……?」

 普段の彼は、ふたつある椅子のうちの右の席へ座り、左の椅子には自身の鞄やら上着やらを置いているだけなのに、今日は左にも人影があった。

 そう、誰か、女性。

 女性そのひとは俺を視界に捉えるやいなや、瞳を揺らせた。

 母親ではない。妹でもない。だとすると彼女は──

「うっちゃん」

 震える声で俺を呼んだ女性は、間違いなく今の今まで、俺の目蓋裏にいた人だった。
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