68 / 144
環境問わず楽しめちゃう人と、遠ざかる飛行機と
10
しおりを挟む
「ユーイチのお父さんが仕事で海外行ったのって、確かわたしたちが小学一年生の頃だよね?もう日本を離れて十年になるけど、いつ帰ってくるの?」
昨日聞こうとして、忘れていた質問。
それを問いかけてみたけれど、ユーイチはわたしが投げたクエスチョンに、同じくクエスチョンマークをつけて寄越してくる。
「覚えてるの、それだけ?」
「え、それだけ?」
「俺の父さんのこと、やっぱりそれだけしか覚えてないの?」
それだけとはやっぱりとは、どういう意味合いを含んでいるのだろうか、と悩む間は、ほんの少し視線をずらし、わたしはユーイチの襟足が夏の風と遊ぶのを見ていた。
飛行機が遠ざかり、エンジン音も段々と小さくなっていく。
「それだけって……ええと……」
ユーイチが放った「それだけ?」という疑問符に、わたしは言い淀んでしまった。
親しみやすいとかフレンドリーだったとかの他にもっと、具体的なメモリーを話してほしいということか。
ジュースを買ってくれたとか、トランプをしたとかオセロをしたとか、ユーイチのお父さんとの思い出なんていっぱい思いつくけれど、ユーイチ的には、もっと違う思い出を聞きたいのかな。
じゃあなにを話そう、と頭の中のアルバムを捲っているうちに、どうしてだかユーイチに諦められた。
「ごめん、やっぱいーや」
昨日聞こうとして、忘れていた質問。
それを問いかけてみたけれど、ユーイチはわたしが投げたクエスチョンに、同じくクエスチョンマークをつけて寄越してくる。
「覚えてるの、それだけ?」
「え、それだけ?」
「俺の父さんのこと、やっぱりそれだけしか覚えてないの?」
それだけとはやっぱりとは、どういう意味合いを含んでいるのだろうか、と悩む間は、ほんの少し視線をずらし、わたしはユーイチの襟足が夏の風と遊ぶのを見ていた。
飛行機が遠ざかり、エンジン音も段々と小さくなっていく。
「それだけって……ええと……」
ユーイチが放った「それだけ?」という疑問符に、わたしは言い淀んでしまった。
親しみやすいとかフレンドリーだったとかの他にもっと、具体的なメモリーを話してほしいということか。
ジュースを買ってくれたとか、トランプをしたとかオセロをしたとか、ユーイチのお父さんとの思い出なんていっぱい思いつくけれど、ユーイチ的には、もっと違う思い出を聞きたいのかな。
じゃあなにを話そう、と頭の中のアルバムを捲っているうちに、どうしてだかユーイチに諦められた。
「ごめん、やっぱいーや」
0
お気に入りに追加
0
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる