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傘不要の降水確率と、チャップリンの名言と

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 カチャッと静かに扉を開けて、わたしは帰宅。

 玄関に入り目線を落とすと、お母さんが週三日ほど勤めているスーパーに出かける際、いつも履いていくスニーカーがなくなっていたから、午後五時半くらいまでは家でひとりになれると、息をつく。

 本当はもう、パートを辞めようかどうかと悩んでいたお母さん。わたしになにかがあった時のために、家でスタンバイしておきたいと。
 けれどそれができなかったのは、アメリカで手術を受ける場合にたくさんお金がかかるからだ。

 廊下を進み、リビングのソファーに腰を下ろす。ふと目に入った壁掛けカレンダーに、げんなりした。

「明日は病院の日か……」

 赤の油性マジックで目立つように囲われた数字は、明日の日付け。
 毎月一回はある受診日は行きたくないと思っていても、勝手に予定に組み込まれる。

 毎月毎月、わざわざあんな遠い病院に行ったって、どうせなにも変わらないのに。

 わたしの病気を治そうと、お父さんとお母さんが十年以上も前に見つけてきたその病院は、電車を乗り継ぎバスに乗り、往復四時間は要する辺鄙な場所に、建物を構えている。

 毎回結構な時間と交通費をかけて、治療を繰り返してきたけれど、結局お手上げされたのだから、もう行かなくていいんじゃないのかな。

 だって日本の医者じゃ治せないんでしょ?だったら診察する意味ないじゃん。

 なんて思い、今度は自分の性格の悪さにげんなりした。
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