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涙のバケツ
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熱が下がれば日常はすぐにやってくる。高校生になってから初めて、私は半袖シャツに腕を通した。
「乃亜ちゃん、昨日どうして休んだの?」
登校早々心配してくれたのは、最近仲良くなったクラスメイトの双葉だった。
「ちょっと風邪引いちゃってて。でも昨日ずっと家にいたら、すっかりよくなったよ」
「そうだったんだ。実はね、私、乃亜ちゃんとふたりで遊んでみたくて、昨日の放課後に誘おうと思ってたの。今日も空いてるんだけど、乃亜ちゃん病み上がりだし、無理だよね?」
その気持ちを嬉しく思い、笑顔になった。
「私も双葉と色々な話してみたいっ。遊ぼうよ!」
「ほんとに?やったあっ」
にっこり笑った彼女はチャイムと同時に自身の席へ戻って行く。ハーフのような顔立ちにゆるふわヘアー。同級生の男子数名は、彼女に告白したって噂だ。
放課後。私達は校舎最寄りのファミリーレストランへと腰を据える。
「乃亜ちゃんって、どうしてこの高校にしたの?」
パンケーキを頬張りながら、双葉が聞く。私は相も変わらずホットのブラック。
「大きな理由はないの。家の周りは偏差値高い学校が多かったから、消去法で」
「そうなんだ。でもこの学校いいよね。校則ゆるいし、いい先生も多いし」
「私もそれ思った……って、あれ?」
華奢な彼女の背中越し、同じ制服に身を包んだ男子がひとり、入店するのが目に入る。彼はゆっくりこちらへやって来た。
「双葉、あれってうちの学年じゃない?」
「どれ?」
そう言って振り返った彼女の前で、彼は立ち止まる。
「す、須和双葉ちゃんっ?」
「そうですけど……」
彼の視線は双葉へ直線。蚊帳の外の私は、ふたりのやり取りを眺め入る。
「俺、隣のクラスの尾崎慎吾っていうんだけど。よ、よかったら連絡先交換しない?」
「あー……はい、いいですけど」
「まじ?やったっ」
小さくガッツポーズを作る彼は、遊び目当てには見えなかった。ただ純粋に好きな子と繋がりを持ちたいのだと、そう思えた。
目的を成し遂げた彼は、ようやく私に目を向けた。
「ごめんね、急に。ふたりがこの店に入るの見えたからさ、つい」
「気にしてないよー」
「君は、ええっと……」
「双葉と同じクラスの乃亜です」
「そっか。双葉ちゃん、乃亜ちゃん、また学校で」
軽い会釈をし、スマートに店外へ出た彼は好印象。私は双葉に視線を移す。
「尾崎君いいじゃん、礼儀正しくて」
浮かれる私に対し、彼女は溜め息を漏らしていた。
「私、好きな人いるんだよなあ」
「そうなの?この学校?」
「ううん、違う学校。小学校と中学校は一緒だったけど」
その途端に親近感が湧いた私は、身を乗り出して聞く。
「双葉は、その人に告白したことはあるの?」
「あるよお、何回も。全っ部撃沈」
こんなに可憐な彼女でも、叶わない恋があるのだと知り驚いた。
物憂げに頬杖をついた彼女は、窓の外を眺めて言った。
「彼じゃなくてもいいやって思うのに、どうしても彼じゃなきゃダメだって、そう思っちゃう自分が嫌になる時がある。彼は恋人もいないのに私をフるんだから、もう、頑張っても無理なのに」
彼女の言葉はまるで、私の想いを代弁してくれているかのようだった。
陸以外の人でいいと何度も思うけれど、やっぱり陸がいいと何度でも思ってしまう。失った今だからわかる。私には陸しかいなかった。
しんみりとした雰囲気の彼女に、心ばかりの助言をした。
「私もね、幼馴染に好きな人がいるの。だけどもう、彼は私の親友と付き合っちゃったから、今の私はふたりを応援しなきゃいけないの。努力しちゃダメな立場なの」
双葉の丸い瞳が狭まった。
「今の双葉はまだ、努力が許されるんだよね」
「努力……」
「双葉がこうやって他の人と番号交換をしている間にも、彼は誰かに告白されているかもしれない。彼がそこで付き合ってみようと思えばもう遅い。略奪するのはその誰かを傷付ける。だから、繋がれるうちに繋がって。諦められないなら、頑張って欲しい」
彼女を説得するふりをして、私は己の言葉に耳を傾けていた。もう自分は手遅れなのだよ、と。
「乃亜ちゃん」
切なげに、双葉が言う。
「辛かったね」
辛かったね。そう過去形で言ってくれたから、じんわりと身に沁みた。もうこの恋は過去のもの、陸は前に歩んでいった。今後、陸が私を追いかけることはないし、私が彼を求めることもない。
大丈夫。陸がくれたあの箱に、私達の思い出は綺麗なまま残っている。初めてされた告白も、お揃いの御守りも、夜の校庭でしたキスも。
だから、いつまでもこんな態度で陸と接していてはダメなんだ。ずっと一緒にいたいから幼馴染でいる道を選んだのに、これで彼との関係が途絶えるのならば、恋愛をして別れがくるのと同じじゃないか。
「陸ー。歴史日本漫ガタリ、貸してー」
双葉と別れた夕方。玄関扉を開けた陸は、鳩が豆鉄砲を喰らったような顔をしていた。
「……は?な、何、突然」
「漫画貸してってば。あがっていい?」
「いや、いいけど……」
「お邪魔しまーす」と、ずかずか無遠慮に、陸の部屋へと上がり込む。
「ってか、この前一緒に読んだじゃん」
「そうだけど読み返したくなったのっ。どこにあるの?」
「どこだっけな。ちょっと待て、探す探す」
本棚を漁る陸の後ろ、彼のベッドに腰を下ろし、週刊誌をぱらぱら捲って時間を潰す。
横顔だけで、彼は聞いた。
「そういや風邪治ったのかよ。ってかなんで森といたの?」
「治った。森君はお見舞いに来てくれた」
「……そっ」
発見した漫画本をベッドに置いて、陸はどかっと隣に座る。そして私の髪に触れた。
「どんどん色抜けて明るくなってくな、乃亜の髪。もうすぐ金髪じゃん」
髪の毛一本一本、陸がいる左半身に、全神経が集中する。
「似合ってるよ」
そんな言葉に、もう一喜一憂などしない。
ベッドから勢いよく立ち上がった私は、本を手にしてお礼を告げる。
「ありがとうね。すぐ返すから」
「おう。いつでもいいよ」
陸は玄関までついてくる。
「俺もこれからバイトだし、ついでに送ってくよ」
「何時から?」
「五時」
「まだちょっと早くない?」
「うっせ。送らせろ」
そう言って、陸は制服姿のまま靴を履く。異なる制服を着て彼と並ぶのは、これが初めてだ。
川沿いは行かない。彼女持ちの陸と長く過ごす必要はない。
「お前スカート短くね?金髪にミニスカート、危ねえよ」
「そんなことないよ。うちの学校、みんなこのくらいだもん」
「変な男寄ってくんぞ」
足元の小石をひとつ蹴って、陸はそう言った。
「大丈夫。今日も友達の双葉って子だけが番号聞かれてて、私なんか相手にされなかった」
「へぇ、可愛いのその子?そりゃ、盾になっていいな」
普通に話せている自分に、少し驚く。
「楓は元気?」
「元気。あいつ最近、彼氏できたらしいぞ」
「うそ!私の楓がお嫁にいっちゃったあ~」
「結婚してねぇよ」
こうしていつも通り会話ができるのは、私の努力では決してなくて、どんな機嫌の私を前にしても、常にブレずにいてくれる陸のお陰だ。
家のマンションが見えてきて、さようならまであと少し。咳を払って喉を整える。
「陸、ごめんね」
「何が」
「昨日の電話。心配してくれてたのに、態度悪くしちゃって」
「あーべつに、気にしてねーけど」
ぶっきらぼうな優しさに、また涙が出そうになってしまう。
「凛花のこと大事にしてね。あの子の初めての恋だから、私、めちゃんこ応援してる」
「……ん」
「私と陸はさ、これからもずーっと幼馴染ね。時々こうやって、近況報告でもしようよ」
「おう……そうだな」
陸は、私の心を読むなど簡単だろうから、私が涙を堪えたことくらい、わかったと思う。だけどもう、泣きそうな私を抱きしめはしない。彼が確実に、前へと進んでいる証拠だ。
エントランスで陸に背を向けた途端、下瞼すぐそこまできていた涙はあっという間に地に落ちた。だけどこれは、悲しみの涙なんかじゃなくて。
「陸……っ」
募る愛しさを流す涙だ。
✴︎
「レクリエーション大会?」
「うん、並河高校でやるんだって。乃亜ちゃん一緒に行こうよ」
森君が通う高校との交流会。そういえば以前そんなことを、彼が言っていたかもしれない。双葉と私は揃って参加用紙に記入した。
「レクリエーション大会、俺も参加するよ」
バイトの帰り道、森君に誘われゲームセンターへとやって来た。
「マルバツゲームは毎年難しいって噂だぞ。気をつけろ」
「あははっ。どう気をつければいいの」
彼がプレイしたいと言った戦闘ゲームまで向かう途中、私の足はふと、一台のクレーンゲーム機の前で立ち止まる。ケースの中にはあの魚のぬいぐるみが数匹いた。
森君が言う。
「これ、妖怪魚戦争のキャラクターじゃん」
「よ、妖怪?この魚、妖怪なの?」
「うん。ゲームの妖怪だよ」
これに似ていると言われた私って一体。
「この魚、ぼけっとした顔してるけどけっこう強くてさ、俺まだ一回も倒せてないわ。口から泥みたいな気持ち悪いの出してくるんだよ。それにあたると一発で死ぬ」
陸との淡い思い出が複雑な色へと変わろうとしたその時、背後からは声がした。
「あれ、乃亜と森君じゃーん」
振り向くとそこには凛花がいた。一瞬にして鳥肌が立った原因は、彼女の隣。凛花と仲睦まじく手を繋ぐ陸の姿だ。
「何、お前等なんで手なんか繋いでんの?まさか……え、ええ!」
森君は陸から何も聞かされていなかったのか、仰天していた。そのさまを見た凛花が言う。
「ちょっと陸、私と付き合ったってそろそろ地元の友達に言ってよね。もうすぐ二ヶ月は経つのにっ」
「そーだそーだ」と森君は、陸の首に腕を回す。
「陸、水くさいぞ!内緒にしてたな!」
「離せよ森っ、悪かったって」
「この秘密主義者がー!」
男達が戯れている間に、凛花は私に耳打ちをした。
「乃亜は、森君とデート?」
「そ、そんなんじゃないよ。バイト帰りにゲームでもしようかって、立ち寄っただけっ」
「ふぅ~ん?」
ニヤニヤと信じていない様子の彼女は、きっと陸とのデートで浮かれている。
「ところで乃亜達、何見てたの……ってこれ、妖怪魚戦争のボスじゃん!」
クレーンゲーム機の中を覗いた凛花は、「陸!」とフロアに響くほどの大声を出した。森君に解放された首を右に左に傾けながら、陸は「何」と言う。
「これとってよ!このぬいぐるみ!」
「どれ」
彼女の示すぬいぐるみがあの魚だと認識すると、陸はその魚と同じような瞳で私を見た。まあるくぱっくり開けられて、広がる白目。ずいぶん長いことそんな目を向けてくるものだから、感情を探られている気分になった。
「ごめん凛花。俺、こういうのは苦手で」
「えー、いいからやってみてよー」
「いや、でも……」
再び陸と目が合って、心の中を覗かれる。居た堪れない。
「森君、早く戦闘ゲームしに行こーっ」
大きな体を反転させて、私は森君の背中を押した。
「ああそうだな。じゃあな陸、凛花っ」
凛花は笑顔で手を振っていた。陸の顔は見なかった。
バスケ部の定休日に地元を彷徨くのは危険。胸に深く刻まれた。
それから一時間ほどゲームを楽しんで、表へ出た。
「前の方歩いてるの、陸と凛花だな」
私達の数十メートル前方、外灯に照らされながら並び歩くふたり。凛花の腕にはぬいぐるみが抱えられていた。
「陸の奴、結局取ってやったんだ。なんだかんだで優しいんだよなあ、そういうとこ」
以前は三回挑んで無理だった。ならば今日は何度挑戦してあげたのだろうと思えばもう、悲嘆に暮れた。涙のバケツがものの見事にひっくり返り、そこら中を濡らしていく。
「おい乃亜!」
突として膝から崩れ落ちた私に、森君は狼狽えていた。
「おいおい、どうしたんだよ!」
なんでもないよと言いたいのに、バケツの中身があまりに多く、息をするのも困難だ。
私の名を叫ぶ森君の声に気付き、陸が振り返り見たことは、後日森君から聞かされた。
「少し落ち着いた?」
私をベンチに座らせて、自動販売機で水を購入してくれた彼。
「ありがとう、森君」
鏡は手元にないけれど、今の私はとてつもなく、酷い顔をしているのだろう。
「もうちょっと休んでから、帰ろっか」
彼は何も聞いてこなかった。恋人だった頃には気付けなかった、彼の優しさに触れる。
「森君って、意外と紳士だったんだね」
「今頃気付いたか。遅いなあ」
「泣いた理由、聞かないの?」
「ん~、予想は陸かな」
その発言に驚き固まっていると、彼は続けた。
「俺ね、小学校の頃毎週楽しみにしてたドラマがあったの。一話二話って毎週必ず観てて、最終回のその日もテレビの前でワクワクしながらスタンバイしてた」
突然始まった思い出話に困惑するが、彼は「だけどね」とまだ話す。
「観られなかったんだよ、最終回。その日に限って家の時計が一時間半も遅れてた。辛くて超泣いた。当時は今みたいに見逃し配信とかなかったからさ、どう足掻いても観られなくて」
私は「う、うん」とぎこちない相槌を打つ。
「悔しくて何日も泣けた。だけど乃亜、不思議なんだよ。俺、その最終回を未だに観ていないのに、もう涙が出ないんだ」
不思議だねとも思えずに言葉を選んでいると、彼はにっこり笑って言う。
「つまりは枯れない涙なんかないってことだ。今は辛くて悲しくてどうしようもないかもしれないけど、いつかは自然に治っていくんだよ。例えその願いが叶わなくたって」
未練を残したドラマと失恋。並外れた彼の考え方に、思わず唸ってしまった。
「時が必ず解決してくれるから、今は泣けるだけ泣いて、スッキリしちゃいなよ」
ははっと優しく微笑まれて、じんわり心に広がる何か。
「ありがとう森君。少し楽になった」
この世に癒えぬ傷などない。ゆっくり治していけばいい。そう思えた。
眠りにつく前。卒業式の日に陸と撮った写真を眺めた。
ふたりで想いを確かめ合った日。その想いに鍵をかけた日。凛花のことがあってからは削除しようか迷っていたけれど、今は無理に消さなくていいのかもしれない。
瞳を閉じればまだ、瞼の裏には陸がいる。その姿が消えるまで、彼が私の心からいなくなる時まで。今は静かに、時へ身を委ねよう。
「乃亜ちゃん、昨日どうして休んだの?」
登校早々心配してくれたのは、最近仲良くなったクラスメイトの双葉だった。
「ちょっと風邪引いちゃってて。でも昨日ずっと家にいたら、すっかりよくなったよ」
「そうだったんだ。実はね、私、乃亜ちゃんとふたりで遊んでみたくて、昨日の放課後に誘おうと思ってたの。今日も空いてるんだけど、乃亜ちゃん病み上がりだし、無理だよね?」
その気持ちを嬉しく思い、笑顔になった。
「私も双葉と色々な話してみたいっ。遊ぼうよ!」
「ほんとに?やったあっ」
にっこり笑った彼女はチャイムと同時に自身の席へ戻って行く。ハーフのような顔立ちにゆるふわヘアー。同級生の男子数名は、彼女に告白したって噂だ。
放課後。私達は校舎最寄りのファミリーレストランへと腰を据える。
「乃亜ちゃんって、どうしてこの高校にしたの?」
パンケーキを頬張りながら、双葉が聞く。私は相も変わらずホットのブラック。
「大きな理由はないの。家の周りは偏差値高い学校が多かったから、消去法で」
「そうなんだ。でもこの学校いいよね。校則ゆるいし、いい先生も多いし」
「私もそれ思った……って、あれ?」
華奢な彼女の背中越し、同じ制服に身を包んだ男子がひとり、入店するのが目に入る。彼はゆっくりこちらへやって来た。
「双葉、あれってうちの学年じゃない?」
「どれ?」
そう言って振り返った彼女の前で、彼は立ち止まる。
「す、須和双葉ちゃんっ?」
「そうですけど……」
彼の視線は双葉へ直線。蚊帳の外の私は、ふたりのやり取りを眺め入る。
「俺、隣のクラスの尾崎慎吾っていうんだけど。よ、よかったら連絡先交換しない?」
「あー……はい、いいですけど」
「まじ?やったっ」
小さくガッツポーズを作る彼は、遊び目当てには見えなかった。ただ純粋に好きな子と繋がりを持ちたいのだと、そう思えた。
目的を成し遂げた彼は、ようやく私に目を向けた。
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「気にしてないよー」
「君は、ええっと……」
「双葉と同じクラスの乃亜です」
「そっか。双葉ちゃん、乃亜ちゃん、また学校で」
軽い会釈をし、スマートに店外へ出た彼は好印象。私は双葉に視線を移す。
「尾崎君いいじゃん、礼儀正しくて」
浮かれる私に対し、彼女は溜め息を漏らしていた。
「私、好きな人いるんだよなあ」
「そうなの?この学校?」
「ううん、違う学校。小学校と中学校は一緒だったけど」
その途端に親近感が湧いた私は、身を乗り出して聞く。
「双葉は、その人に告白したことはあるの?」
「あるよお、何回も。全っ部撃沈」
こんなに可憐な彼女でも、叶わない恋があるのだと知り驚いた。
物憂げに頬杖をついた彼女は、窓の外を眺めて言った。
「彼じゃなくてもいいやって思うのに、どうしても彼じゃなきゃダメだって、そう思っちゃう自分が嫌になる時がある。彼は恋人もいないのに私をフるんだから、もう、頑張っても無理なのに」
彼女の言葉はまるで、私の想いを代弁してくれているかのようだった。
陸以外の人でいいと何度も思うけれど、やっぱり陸がいいと何度でも思ってしまう。失った今だからわかる。私には陸しかいなかった。
しんみりとした雰囲気の彼女に、心ばかりの助言をした。
「私もね、幼馴染に好きな人がいるの。だけどもう、彼は私の親友と付き合っちゃったから、今の私はふたりを応援しなきゃいけないの。努力しちゃダメな立場なの」
双葉の丸い瞳が狭まった。
「今の双葉はまだ、努力が許されるんだよね」
「努力……」
「双葉がこうやって他の人と番号交換をしている間にも、彼は誰かに告白されているかもしれない。彼がそこで付き合ってみようと思えばもう遅い。略奪するのはその誰かを傷付ける。だから、繋がれるうちに繋がって。諦められないなら、頑張って欲しい」
彼女を説得するふりをして、私は己の言葉に耳を傾けていた。もう自分は手遅れなのだよ、と。
「乃亜ちゃん」
切なげに、双葉が言う。
「辛かったね」
辛かったね。そう過去形で言ってくれたから、じんわりと身に沁みた。もうこの恋は過去のもの、陸は前に歩んでいった。今後、陸が私を追いかけることはないし、私が彼を求めることもない。
大丈夫。陸がくれたあの箱に、私達の思い出は綺麗なまま残っている。初めてされた告白も、お揃いの御守りも、夜の校庭でしたキスも。
だから、いつまでもこんな態度で陸と接していてはダメなんだ。ずっと一緒にいたいから幼馴染でいる道を選んだのに、これで彼との関係が途絶えるのならば、恋愛をして別れがくるのと同じじゃないか。
「陸ー。歴史日本漫ガタリ、貸してー」
双葉と別れた夕方。玄関扉を開けた陸は、鳩が豆鉄砲を喰らったような顔をしていた。
「……は?な、何、突然」
「漫画貸してってば。あがっていい?」
「いや、いいけど……」
「お邪魔しまーす」と、ずかずか無遠慮に、陸の部屋へと上がり込む。
「ってか、この前一緒に読んだじゃん」
「そうだけど読み返したくなったのっ。どこにあるの?」
「どこだっけな。ちょっと待て、探す探す」
本棚を漁る陸の後ろ、彼のベッドに腰を下ろし、週刊誌をぱらぱら捲って時間を潰す。
横顔だけで、彼は聞いた。
「そういや風邪治ったのかよ。ってかなんで森といたの?」
「治った。森君はお見舞いに来てくれた」
「……そっ」
発見した漫画本をベッドに置いて、陸はどかっと隣に座る。そして私の髪に触れた。
「どんどん色抜けて明るくなってくな、乃亜の髪。もうすぐ金髪じゃん」
髪の毛一本一本、陸がいる左半身に、全神経が集中する。
「似合ってるよ」
そんな言葉に、もう一喜一憂などしない。
ベッドから勢いよく立ち上がった私は、本を手にしてお礼を告げる。
「ありがとうね。すぐ返すから」
「おう。いつでもいいよ」
陸は玄関までついてくる。
「俺もこれからバイトだし、ついでに送ってくよ」
「何時から?」
「五時」
「まだちょっと早くない?」
「うっせ。送らせろ」
そう言って、陸は制服姿のまま靴を履く。異なる制服を着て彼と並ぶのは、これが初めてだ。
川沿いは行かない。彼女持ちの陸と長く過ごす必要はない。
「お前スカート短くね?金髪にミニスカート、危ねえよ」
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足元の小石をひとつ蹴って、陸はそう言った。
「大丈夫。今日も友達の双葉って子だけが番号聞かれてて、私なんか相手にされなかった」
「へぇ、可愛いのその子?そりゃ、盾になっていいな」
普通に話せている自分に、少し驚く。
「楓は元気?」
「元気。あいつ最近、彼氏できたらしいぞ」
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家のマンションが見えてきて、さようならまであと少し。咳を払って喉を整える。
「陸、ごめんね」
「何が」
「昨日の電話。心配してくれてたのに、態度悪くしちゃって」
「あーべつに、気にしてねーけど」
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「凛花のこと大事にしてね。あの子の初めての恋だから、私、めちゃんこ応援してる」
「……ん」
「私と陸はさ、これからもずーっと幼馴染ね。時々こうやって、近況報告でもしようよ」
「おう……そうだな」
陸は、私の心を読むなど簡単だろうから、私が涙を堪えたことくらい、わかったと思う。だけどもう、泣きそうな私を抱きしめはしない。彼が確実に、前へと進んでいる証拠だ。
エントランスで陸に背を向けた途端、下瞼すぐそこまできていた涙はあっという間に地に落ちた。だけどこれは、悲しみの涙なんかじゃなくて。
「陸……っ」
募る愛しさを流す涙だ。
✴︎
「レクリエーション大会?」
「うん、並河高校でやるんだって。乃亜ちゃん一緒に行こうよ」
森君が通う高校との交流会。そういえば以前そんなことを、彼が言っていたかもしれない。双葉と私は揃って参加用紙に記入した。
「レクリエーション大会、俺も参加するよ」
バイトの帰り道、森君に誘われゲームセンターへとやって来た。
「マルバツゲームは毎年難しいって噂だぞ。気をつけろ」
「あははっ。どう気をつければいいの」
彼がプレイしたいと言った戦闘ゲームまで向かう途中、私の足はふと、一台のクレーンゲーム機の前で立ち止まる。ケースの中にはあの魚のぬいぐるみが数匹いた。
森君が言う。
「これ、妖怪魚戦争のキャラクターじゃん」
「よ、妖怪?この魚、妖怪なの?」
「うん。ゲームの妖怪だよ」
これに似ていると言われた私って一体。
「この魚、ぼけっとした顔してるけどけっこう強くてさ、俺まだ一回も倒せてないわ。口から泥みたいな気持ち悪いの出してくるんだよ。それにあたると一発で死ぬ」
陸との淡い思い出が複雑な色へと変わろうとしたその時、背後からは声がした。
「あれ、乃亜と森君じゃーん」
振り向くとそこには凛花がいた。一瞬にして鳥肌が立った原因は、彼女の隣。凛花と仲睦まじく手を繋ぐ陸の姿だ。
「何、お前等なんで手なんか繋いでんの?まさか……え、ええ!」
森君は陸から何も聞かされていなかったのか、仰天していた。そのさまを見た凛花が言う。
「ちょっと陸、私と付き合ったってそろそろ地元の友達に言ってよね。もうすぐ二ヶ月は経つのにっ」
「そーだそーだ」と森君は、陸の首に腕を回す。
「陸、水くさいぞ!内緒にしてたな!」
「離せよ森っ、悪かったって」
「この秘密主義者がー!」
男達が戯れている間に、凛花は私に耳打ちをした。
「乃亜は、森君とデート?」
「そ、そんなんじゃないよ。バイト帰りにゲームでもしようかって、立ち寄っただけっ」
「ふぅ~ん?」
ニヤニヤと信じていない様子の彼女は、きっと陸とのデートで浮かれている。
「ところで乃亜達、何見てたの……ってこれ、妖怪魚戦争のボスじゃん!」
クレーンゲーム機の中を覗いた凛花は、「陸!」とフロアに響くほどの大声を出した。森君に解放された首を右に左に傾けながら、陸は「何」と言う。
「これとってよ!このぬいぐるみ!」
「どれ」
彼女の示すぬいぐるみがあの魚だと認識すると、陸はその魚と同じような瞳で私を見た。まあるくぱっくり開けられて、広がる白目。ずいぶん長いことそんな目を向けてくるものだから、感情を探られている気分になった。
「ごめん凛花。俺、こういうのは苦手で」
「えー、いいからやってみてよー」
「いや、でも……」
再び陸と目が合って、心の中を覗かれる。居た堪れない。
「森君、早く戦闘ゲームしに行こーっ」
大きな体を反転させて、私は森君の背中を押した。
「ああそうだな。じゃあな陸、凛花っ」
凛花は笑顔で手を振っていた。陸の顔は見なかった。
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それから一時間ほどゲームを楽しんで、表へ出た。
「前の方歩いてるの、陸と凛花だな」
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「陸の奴、結局取ってやったんだ。なんだかんだで優しいんだよなあ、そういうとこ」
以前は三回挑んで無理だった。ならば今日は何度挑戦してあげたのだろうと思えばもう、悲嘆に暮れた。涙のバケツがものの見事にひっくり返り、そこら中を濡らしていく。
「おい乃亜!」
突として膝から崩れ落ちた私に、森君は狼狽えていた。
「おいおい、どうしたんだよ!」
なんでもないよと言いたいのに、バケツの中身があまりに多く、息をするのも困難だ。
私の名を叫ぶ森君の声に気付き、陸が振り返り見たことは、後日森君から聞かされた。
「少し落ち着いた?」
私をベンチに座らせて、自動販売機で水を購入してくれた彼。
「ありがとう、森君」
鏡は手元にないけれど、今の私はとてつもなく、酷い顔をしているのだろう。
「もうちょっと休んでから、帰ろっか」
彼は何も聞いてこなかった。恋人だった頃には気付けなかった、彼の優しさに触れる。
「森君って、意外と紳士だったんだね」
「今頃気付いたか。遅いなあ」
「泣いた理由、聞かないの?」
「ん~、予想は陸かな」
その発言に驚き固まっていると、彼は続けた。
「俺ね、小学校の頃毎週楽しみにしてたドラマがあったの。一話二話って毎週必ず観てて、最終回のその日もテレビの前でワクワクしながらスタンバイしてた」
突然始まった思い出話に困惑するが、彼は「だけどね」とまだ話す。
「観られなかったんだよ、最終回。その日に限って家の時計が一時間半も遅れてた。辛くて超泣いた。当時は今みたいに見逃し配信とかなかったからさ、どう足掻いても観られなくて」
私は「う、うん」とぎこちない相槌を打つ。
「悔しくて何日も泣けた。だけど乃亜、不思議なんだよ。俺、その最終回を未だに観ていないのに、もう涙が出ないんだ」
不思議だねとも思えずに言葉を選んでいると、彼はにっこり笑って言う。
「つまりは枯れない涙なんかないってことだ。今は辛くて悲しくてどうしようもないかもしれないけど、いつかは自然に治っていくんだよ。例えその願いが叶わなくたって」
未練を残したドラマと失恋。並外れた彼の考え方に、思わず唸ってしまった。
「時が必ず解決してくれるから、今は泣けるだけ泣いて、スッキリしちゃいなよ」
ははっと優しく微笑まれて、じんわり心に広がる何か。
「ありがとう森君。少し楽になった」
この世に癒えぬ傷などない。ゆっくり治していけばいい。そう思えた。
眠りにつく前。卒業式の日に陸と撮った写真を眺めた。
ふたりで想いを確かめ合った日。その想いに鍵をかけた日。凛花のことがあってからは削除しようか迷っていたけれど、今は無理に消さなくていいのかもしれない。
瞳を閉じればまだ、瞼の裏には陸がいる。その姿が消えるまで、彼が私の心からいなくなる時まで。今は静かに、時へ身を委ねよう。
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俺には二人の容姿端麗な姉がいる。
自慢そうに聞こえただろうか?
それは少しばかり誤解だ。
この二人の姉、どちらも重大な欠陥があるのだ……
次女の青山花穂は高校二年で生徒会長。
外見上はすべて完璧に見える花穂姉ちゃん……
「花穂姉ちゃん! 下着でウロウロするのやめろよなっ!」
「んじゃ、裸ならいいってことねっ!」
▼物語概要
【恋愛感情欠落、解離性健忘というトラウマを抱えながら、姉やヒロインに囲まれて成長していく話です】
47万字以上の大長編になります。(2020年11月現在)
【※不健全ラブコメの注意事項】
この作品は通常のラブコメより下品下劣この上なく、ドン引き、ドシモ、変態、マニアック、陰謀と陰毛渦巻くご都合主義のオンパレードです。
それをウリにして、ギャグなどをミックスした作品です。一話(1部分)1800~3000字と短く、四コマ漫画感覚で手軽に読めます。
全編47万字前後となります。読みごたえも初期より増し、ガッツリ読みたい方にもお勧めです。
また、執筆・原作・草案者が男性と女性両方なので、主人公が男にもかかわらず、男性目線からややずれている部分があります。
【元々、小説家になろうで連載していたものを大幅改訂して連載します】
【なろう版から一部、ストーリー展開と主要キャラの名前が変更になりました】
【2017年4月、本幕が完結しました】
序幕・本幕であらかたの謎が解け、メインヒロインが確定します。
【2018年1月、真幕を開始しました】
ここから読み始めると盛大なネタバレになります(汗)
青空の色
小鳥遊 雛人
青春
高校の屋上、どこまでも広がる空。雨上がりの夏空は青く、太陽がキラキラと光る。
僕は青空を見るのが好きだ。傷ついた時も、1人の寂しい時も、青空はいつもそこにあった。そんな青は自分の悩みなんて、ちっぽけだと思わせてくれる。
どこまでも広がる澄んだ青空。もくもくと膨らむ白い雲。屋上に敷かれた緑の人工芝。そのどれもが僕の目には鮮やかで美しく見えた。
そんな青空の下、突然可愛らしい声が降ってくる
「ねぇ、君!」
彼女がかけている茶色のサングラスに陽光が反射する。
「今日の空は何色に見える?」
僕は、この日から──
【R15】【第一作目完結】最強の妹・樹里の愛が僕に凄すぎる件
木村 サイダー
青春
中学時代のいじめをきっかけに非モテ・ボッチを決め込むようになった高校2年生・御堂雅樹。素人ながら地域や雑誌などを賑わすほどの美しさとスタイルを持ち、成績も優秀で運動神経も発達し、中でもケンカは負け知らずでめっぽう強く学内で男女問わずのモテモテの高校1年生の妹、御堂樹里。親元から離れ二人で学園の近くで同居・・・・というか樹里が雅樹をナチュラル召使的に扱っていたのだが、雅樹に好きな人が現れてから、樹里の心境に変化が起きて行く。雅樹の恋模様は?樹里とは本当に兄妹なのか?美しく解き放たれて、自由になれるというのは本当に良いことだけなのだろうか?
■場所 関西のとある地方都市
■登場人物
●御堂雅樹
本作の主人公。身長約百七十六センチと高めの細マッチョ。ボサボサ頭の目隠れ男子。趣味は釣りとエロゲー。スポーツは特にしないが妹と筋トレには励んでいる。
●御堂樹里
本作のヒロイン。身長百七十センチにIカップのバストを持ち、腹筋はエイトパックに分かれる絶世の美少女。芸能界からのスカウト多数。天性の格闘センスと身体能力でケンカ最強。強烈な人間不信&兄妹コンプレックス。素直ではなく、兄の前で自分はモテまくりアピールをしまくったり、わざと夜に出かけてヤキモチを焼かせている。今回新たな癖に目覚める。
●田中真理
雅樹の同級生で同じ特進科のクラス。肌質や髪の毛の性質のせいで不細工扱い。『オッペケペーズ』と呼ばれてスクールカースト最下層の女子三人組の一人。持っている素質は美人であると雅樹が見抜く。あまり思慮深くなく、先の先を読まないで行動してしまうところがある。
水曜日は図書室で
白妙スイ@書籍&電子書籍発刊!
青春
綾織 美久(あやおり みく)、高校二年生。
見た目も地味で引っ込み思案な性格の美久は目立つことが苦手でクラスでも静かに過ごしていた。好きなのは図書室で本を見たり読んだりすること、それともうひとつ。
あるとき美久は図書室で一人の男子・久保田 快(くぼた かい)に出会う。彼はカッコよかったがどこか不思議を秘めていた。偶然から美久は彼と仲良くなっていき『水曜日は図書室で会おう』と約束をすることに……。
第12回ドリーム小説大賞にて奨励賞をいただきました!
本当にありがとうございます!
おてんば3人組
デスマスク
青春
4月某日(春)天真爛漫で元気が良い主人公早瀬圭とポーカーフェイスでクールな幼馴染の東條花梨、才色兼備で何か秘密を抱えている大楽寺夏希。この3人組がこれから入学する紅高校に蔓延る悩み、不安を独自で解決しようと立ち上がる。
みなさんは高校生活をどう過ごしていましたか?またどんな気持ちで高校に通っていたか。現役の高校生や社会人など、幅広い世代の人にぜひ読んでほしいです。
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