海神アオハル

すれ違うふたり

すれ違うふたり12

「俺はどこでも行くよ、神の緊急事態なら」

　またもや矛盾した発言に、海へのアレルギー反応が強くなった。

「だから、良い人ぶってんじゃねえよ！」

　気付けば海の腹を殴っていた。よろけた彼の後ろで机が倒れ、クラスが悲鳴で包まれる。
　近くに見えた椅子を蹴り飛ばし、俺は声を荒げて言った。

「今ここで俺等の本当のこと言っていいのかよ！？ああ！？言えねえんだろ、言って欲しくねえんだろ！？結局てめえは体裁ていさいしか気にしてねえ野郎じゃん！俺を見捨てた奴が、なに今さら良い顔しよーとしてんだよ！助けに来る気なんてなかったくせに、なにが俺を呼べよだよ！狂ってんのかこのクソ野郎！」

　はあはあと息を切らせ捲し立てた俺を、海は思案顔で見つめてくるだけ。

「なんも、言わねえの……？」

　やっぱり俺が。

「俺の方が、狂ってんの……？」

　不穏な空気が暫し漂って、俺の前に誰かが立った。