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いま69

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「あ、あぶな」

 ふうっと冷や汗をかくハルくんに、わたしもほっと胸をなで下ろした。

「早くナツに言いたいけど、やっぱ言いたくないなあ……」

 ばいばい、の代わりになってしまうその二文字。くしゃっとサイドの髪の毛を掴み、嘆いたハルくんは、ふるふると首を振ってから「よし」と覚悟を決めていた。

「ナツ、今までありがとう」

 ハルくんの覚悟や緊張がわたしにも伝染し、背が無意識に正される。
 地上のきらめき、夜空のまたたき。わたしたちはその中にいる。

「ナツが俺に言ってくれたように、俺の中学校生活もナツのおかげで彩られたよ。ナツがいてくれたから色付いた、カラフルになった、最高だった。本当にありがとう」

 意を決したハルくんの前、わたしも腹をくくらなきゃいけないとそう思った。
 わたしたちは互いに愛し、愛されていた。それはもう痛いほど身に染みたから、あとはこの恋にピリオドをうつだけ。

 さようなら、ハルくん。もう心の準備はできたから、いつでも言っていいからね。
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