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中学一年生、冬の頃7

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「おいナツ、笑いすぎっ」

 いつまでもしつこく笑い続けていれば、ふざけたハルくんが止めにかかってくる。

「おーいっ、笑いの国から戻ってこーいっ」

 ゆさゆさとわたしの肩を揺さぶり、腹を抱えたわたしの顔を上げさせて。

「だってハルくんがぁっ」

 なんて言った時、ふたりの距離が友達の距離ではないことに気付く。たった数センチ先にあるハルくんの顔に、笑いも一瞬にしておさまった。

 離れるでもなく、また、それ以上近付くわけでもなく、ただじっと動かなくなったわたしたちは、互いが互いを見つめていた。

 ハルくんが好き、大好き。もうどうしたらいいの。

 全身に熱が帯びていくのを感じながら、わたしはそんなことを思っていた。

「ナツ」

 少しかすれた声で名を呼ばれ、びくんと体がはね上がる。

「俺さ……」

 真剣な面持ちになったハルくんが、何か大事なことを言おうとしているのがわかった。

 ドキドキドキドキ。
 なんて言われるんだろう。

「俺、ナツのこと──」

 一番肝心な部分。それはバタンと開いた、部屋の扉が邪魔をした。
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