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中学一年生、冬の頃4
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「わあ、すっご。まじでハングリートリオ全巻あるじゃんっ」
入室してまずハルくんが向かったのは、壁沿いの本棚前。
「お、これ俺も持ってる。あ、この漫画も。ナツと俺、漫画の趣味めっちゃ一緒じゃんっ」
次から次へと漫画を手にとりはしゃぐ彼は、まるで幼い少年のよう。そんな彼を目に、ゆるりと緊張が解かれていく。
「この前正式に発表あったよね、ハングリートリオが完結するって。時期は曖昧にしか公表されてなかったけど、たぶんわたしたちが中学卒業する前には終わっちゃいそうだよね」
「だいぶ前から噂されてたもんなあ。あーあっ、とうとう本当に終わるのか。切ないなあ」
「でも最終話、どんなオチで締めくくるのかすっごく楽しみ」
「それは言えてる」
漫画だらけの本棚の一番下、そこにわたしが手を伸ばそうとすると、ハルくんが「これ?」と聞いてきた。
「そう、それそれ」
「こんなに分厚い図鑑だなんて思わなかった。見てもいい?」
「もちろん」
その場であぐらをかき本を開いたハルくんの横、わたしもちょこんと腰を下ろす。
「へえー。夏だけじゃなくって、春にも大三角ってあるんだ」
ハルくんがたまたま広げたそのページは、彼の名前と同じ、春のページ。
「今度探してみよっと。ここら辺だと丘の上公園が一番、星見つけやすいよな」
「そうなんだ。わたしあそこ行ったことないんだよなあ。丘へ着くまでの長い坂道に萎縮しちゃう」
「あははっ。たしかに急坂だもんな。俺も前、部活後にその公園までダッシュさせられた時、草むらへ倒れ込んでしばらく動けなかったよ」
「ええ!あの坂ダッシュしたの!?しかも部活のあと!?すっご!」
「うちのコーチ、鬼だから。でもそのあと部員のみんなで寝っ転がって見た星空は最高だった」
「へえー」
急な坂道を上りきった先の絶景。いつかハルくんとふたりで見たいな、と思った。
すると彼は言う。
入室してまずハルくんが向かったのは、壁沿いの本棚前。
「お、これ俺も持ってる。あ、この漫画も。ナツと俺、漫画の趣味めっちゃ一緒じゃんっ」
次から次へと漫画を手にとりはしゃぐ彼は、まるで幼い少年のよう。そんな彼を目に、ゆるりと緊張が解かれていく。
「この前正式に発表あったよね、ハングリートリオが完結するって。時期は曖昧にしか公表されてなかったけど、たぶんわたしたちが中学卒業する前には終わっちゃいそうだよね」
「だいぶ前から噂されてたもんなあ。あーあっ、とうとう本当に終わるのか。切ないなあ」
「でも最終話、どんなオチで締めくくるのかすっごく楽しみ」
「それは言えてる」
漫画だらけの本棚の一番下、そこにわたしが手を伸ばそうとすると、ハルくんが「これ?」と聞いてきた。
「そう、それそれ」
「こんなに分厚い図鑑だなんて思わなかった。見てもいい?」
「もちろん」
その場であぐらをかき本を開いたハルくんの横、わたしもちょこんと腰を下ろす。
「へえー。夏だけじゃなくって、春にも大三角ってあるんだ」
ハルくんがたまたま広げたそのページは、彼の名前と同じ、春のページ。
「今度探してみよっと。ここら辺だと丘の上公園が一番、星見つけやすいよな」
「そうなんだ。わたしあそこ行ったことないんだよなあ。丘へ着くまでの長い坂道に萎縮しちゃう」
「あははっ。たしかに急坂だもんな。俺も前、部活後にその公園までダッシュさせられた時、草むらへ倒れ込んでしばらく動けなかったよ」
「ええ!あの坂ダッシュしたの!?しかも部活のあと!?すっご!」
「うちのコーチ、鬼だから。でもそのあと部員のみんなで寝っ転がって見た星空は最高だった」
「へえー」
急な坂道を上りきった先の絶景。いつかハルくんとふたりで見たいな、と思った。
すると彼は言う。
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