上 下
51 / 51

黒騎士4

しおりを挟む
「あの~、ちょいとよろしいですか?」
「なんだ!まだいたのか!」
俺が恐る恐る声をかけると、アスは再びこちらに噛みついてきた。だがそれを俺が手を挙げて制す。
「まあまあ!そこのブラウンくんは被害者の彼氏か旦那さん?それならちょっとくらい融通をきかせてあげても・・・」
「違う!こいつはリリーアに片想いしてただけの鉱夫だ!それを毎回毎回泣きながら花を供えに・・・!」
OK、OK。いくつか情報が出てきたぞ。被害者のリリーアに片想いしてたブラウンが毎回花を供えに来ている、と。
・・・怪しい。犯人は現場に戻るというが・・・あれ?"毎回"?毎日じゃなくて?
「こいつを疑ってんなら無駄だぞ!確かにこいつはこの街で起きた連続殺人の被害者全員に片想いしておった!だがこいつは犯人じゃあない!なぜか!?その理由はホトケの殺され方にある!」
なんか盛り上がってペラペラ喋りだしたぞ。いいぞーっ、もっと喋れーっ。
「遺体はみんな刃物で斬られとったわけだが、その全てに共通する特徴は"殺されてからこねくり回されてる"ってことだ。殺してから遺体を解剖するかのようにグチャグチャとなぁ。それで、必ず遺体には正中線をバッサリ綺麗に斬られた跡があるんだ。3件ともだぞ!?ありゃ、剣の達人じゃなきゃできねえ!そこにいる鉱夫のくせに腕っぷしがからっきしな男にゃ無理な芸当ってわけよ!・・・何言わせてんだ!誘導尋問はやめろ!」
いや、あんたが勝手にしゃべったんだろ!
俺たち(ブラウン含め)はアスに怒鳴られ、犯行現場を追い出された。裏路地を抜け通りに出ると、ブラウンが伏し目がちに俺たちに話しかけてきた。
「あ、あの・・・あなた方はあそこで何を?」
「あたしらはゴルディアの騎士団よ。友好国で起きた事件を調べてたってワケ。」
赤髪ロングをかきあげるシルバの顔をブラウンがじっと見つめて、何か考えているようだった。そしてハッ!と何か思いついたかのような表情をして俺たちに提案してきた。
「・・・あ、あの!よかったらうちにいらっしゃいませんか。その・・・相談したいこともありまして・・・事件のことで・・・。」

ブラウンの家は住宅地の中で上等な地区に構えられた一軒家だった。二階建てで立派な門が家を守っている。鉱夫だって言ってたけど、親は商人か?とても鉱夫が住める家じゃない。
中に入ると余計にその思いは増した。洒落た照明に、飾られた絵画、ブラウンがお茶を出そうと用意しているのはアンティークの茶器だ。
「どうぞ、粗茶ですが。」
茶は高級品だ。庶民の手には渡らない。俺たちはテーブルに着き、家の中をジロジロと見回した。なかなか失礼な客人に映ったようで、ブラウンもこっちを値踏みするかのように見つめている。


しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

王命を忘れた恋

須木 水夏
恋愛
『君はあの子よりも強いから』  そう言って貴方は私を見ることなく、この関係性を終わらせた。  強くいなければ、貴方のそばにいれなかったのに?貴方のそばにいる為に強くいたのに?  そんな痛む心を隠し。ユリアーナはただ静かに微笑むと、承知を告げた。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です

葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。 王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。 孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。 王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。 働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。 何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。 隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。 そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。 ※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。 ※小説家になろう様でも掲載予定です。

ちょっとエッチな執事の体調管理

mm
ファンタジー
私は小川優。大学生になり上京して来て1ヶ月。今はバイトをしながら一人暮らしをしている。 住んでいるのはそこらへんのマンション。 変わりばえない生活に飽き飽きしている今日この頃である。 「はぁ…疲れた」 連勤のバイトを終え、独り言を呟きながらいつものようにマンションへ向かった。 (エレベーターのあるマンションに引っ越したい) そう思いながらやっとの思いで階段を上りきり、自分の部屋の方へ目を向けると、そこには見知らぬ男がいた。 「優様、おかえりなさいませ。本日付けで雇われた、優様の執事でございます。」 「はい?どちら様で…?」 「私、優様の執事の佐川と申します。この度はお嬢様体験プランご当選おめでとうございます」 (あぁ…!) 今の今まで忘れていたが、2ヶ月ほど前に「お嬢様体験プラン」というのに応募していた。それは無料で自分だけの執事がつき、身の回りの世話をしてくれるという画期的なプランだった。執事を雇用する会社はまだ新米の執事に実際にお嬢様をつけ、3ヶ月無料でご奉仕しながら執事業を学ばせるのが目的のようだった。 「え、私当たったの?この私が?」 「さようでございます。本日から3ヶ月間よろしくお願い致します。」 尿・便表現あり アダルトな表現あり

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

処理中です...