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黒騎士2

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次なるA級指令は『太陽の町を探れ』だが、その途中にB級指令があるから拾って行こう、というところだ。
ギシギシと軋む安馬車の中には俺とシルバとオーリィ、そして旅人が3人。馬車の中は退屈なので旅人は新聞を廻して読む習慣がある。次は俺たちの番なのでシルバがソワソワしている。
オーリィはボケーッと外ばかり見ていた。何か代わり映えのある風景というわけでもないが、子供にとっては馬車の移動というのは苦痛で仕方ないらしい。
「ねえねえ!ゴルディアのことも載ってるよ!」
いつの間にかシルバは新聞を手にしていた。そして周りの迷惑も考えずに読み上げていく。
「なになに、"ゴルディアで麻薬取締法改正"、ほうほう、"パルプールで今年3度目の謎の惨殺事件"、ふむふむ、"ウルグイヤで第3皇子が失踪"なるほどなるほど。」
シルバの読み上げた記事の題目を聞いて、俺はペンを持つ手を止めた。
「ちょ、ちょっと今のニュースもう1回読んでくれ。」
「えっ?"マグーニャ公国の議会が長引きすぎて公爵の臀部が腫れ上がる"?」
「それじゃない!」
俺はシルバから新聞をひったくり、記事を探した。
"パルプールで今年3度目の謎の惨殺事件。いずれも若い女性がターゲットとされ、衣類や髪の毛の特徴でしか被害者の身元特定が困難なほど凄惨な遺体。若い女性は夜道にご用心。"
まさしくこれから消化しようとしていた『B級指令書』の内容そのものだ。"イグニア国パルプールにて連続殺人が発生。殺害が続くようであれば友好国としても見過ごせぬ問題であるからして、調査すべし"
完全にシリアルキラーじゃないか。まぁその辺の殺人鬼くらいじゃうちのオーリィくんの敵じゃないだろうけど。
平野を渡り、森を抜け、山を越えればそこはもうパルプール。あと2日もあれば着くだろう。それまでに報告書を仕上げなければ・・・。馬車に揺られながら俺は唸りながら品行方正な文を考え続けた。

2度の夜を越え山を越え、ようやく眼下にパルプールの街が見えてきた。
パルプールは鉱山の麓にあり、採掘を産業とする街だ。鉄や銅、宝石や希少鉱石など様々な鉱物が採れるらしい。
「あー、やっとお風呂入れるー。馬車はもうイヤダー。」
移動が続いたせいでシルバは愚痴が酷いし、オーリィも元気がない。
「もうすぐだからさ。一番でかい宿に泊まろうぜ。」
街の入口で馬車から降り、衛兵にセキュリティチェックを受ける。ゴルディアの友好国だけあって身分証明はすぐにパスした。
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