上 下
47 / 51

15年前の手記

しおりを挟む
建国記念日を翌日に控えた日の夜、私は恐ろしい計画を耳にしてしまった。
ふと、記念祭の式典の段取りが気になり、なかなか寝つけなくなってしまった。夜の城内でも見回ろうと、そこかしこを歩いて廻った。
特に何か考えていたわけではない。フラフラと歩いていたら、右大臣室の前まで来てしまった。中から灯りが漏れていることに気づく。こんな時間に?
右大臣のサルモアは5年前に右大臣に昇格した女である。王の寵愛を受けているのでは?と噂が絶えないが、その敏腕なる政治力には舌を巻く。
どうやら誰かを部屋に招いて話しているようだ。私はそっと扉に耳をつけた。
「では聖女アリアが王に渡す花束に短剣を仕込み、国王殺しの罪を着せるということで・・・」
サルモアの声だった。
なんという恐ろしいことを・・・私はさらに続きを聞いた。
「これで不老不死の秘密、"聖女の瞳"が手に入るな。目をえぐる前に、聖女の破瓜を頂くとしよう。キズモノになる前に犯したい。」
なんということだ・・・私の背筋に冷たいものが流れた。サルモアと話している相手の声は・・・王の声だった!
急いで聖女に伝えなければ・・・!私はその場から駆け出した。
しかし、その時に焦ってトーチを落としてしまった!ガシャン!という音が辺りに響いた!
一刻を争う状況に、私はトーチを捨ておき聖女の部屋へと急いだ。
途中、曲がり角で誰かとぶつかった。サルモアの追手かと思い肝を冷やしたが、バーロック騎士団長だった。ひとり鍛錬を行って部屋に戻るところだという。
私はすがる思いでバーロックに全てを打ち明けた。サルモアのことだ、糾弾しようとしても裏で手を回しているに違いない。
とりあえず2人て聖女の部屋へと向かった。
聖女の部屋をノックして名を名乗ると、アリア様は鍵をあけて我々と対面してくださった。
私は状況を告げ、アリア様とバーロック殿に進言をした。この国を出なさい、と。
私は城外へと通じる秘密の地下道へと2人を押し込んだ。
私は今、自分の部屋でこの手記を書いている。そしてサルモアの手が迫る前に、鳥便で君に真相を託す。
もしもアリア様とバーロック殿が捕まることがあれば、どうか勇気を出して声を挙げて欲しい。そうならないことを願う。
最後に、私の家族のことを頼みたい。私と妻は死罪になるだろうが、この国の法律で息子だけは命を取られることはないだろう。まだ幼い息子の引き取り先が君であれば、私も安心して逝くことができる。
どうか元気で。親愛なるワッツ=フングルス殿。

ゴルディア王国左大臣
モッツ=カルヒネスト
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

ロリっ子がおじさんに種付けされる話

オニオン太郎
大衆娯楽
なろうにも投稿した奴です

男子中学生から女子校生になった僕

大衆娯楽
僕はある日突然、母と姉に強制的に女の子として育てられる事になった。 普通に男の子として過ごしていた主人公がJKで過ごした高校3年間のお話し。 強制女装、女性と性行為、男性と性行為、羞恥、屈辱などが好きな方は是非読んでみてください!

天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜 

八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。 第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。 大和型三隻は沈没した……、と思われた。 だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。 大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。 祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。

妻がエロくて死にそうです

菅野鵜野
大衆娯楽
うだつの上がらないサラリーマンの士郎。だが、一つだけ自慢がある。 美しい妻、美佐子だ。同じ会社の上司にして、できる女で、日本人離れしたプロポーションを持つ。 こんな素敵な人が自分のようなフツーの男を選んだのには訳がある。 それは…… 限度を知らない性欲モンスターを妻に持つ男の日常

【全話挿絵】発情✕転生 〜何あれ……誘ってるのかしら?〜【毎日更新】

墨笑
ファンタジー
『エロ×ギャグ×バトル+雑学』をテーマにした異世界ファンタジー小説です。 主人公はごく普通(?)の『むっつりすけべ』な女の子。 異世界転生に伴って召喚士としての才能を強化されたまでは良かったのですが、なぜか発情体質まで付与されていて……? 召喚士として様々な依頼をこなしながら、無駄にドキドキムラムラハァハァしてしまう日々を描きます。 明るく、楽しく読んでいただけることを目指して書きました。

月が導く異世界道中extra

あずみ 圭
ファンタジー
 月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。  真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。  彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。  これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。  こちらは月が導く異世界道中番外編になります。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

処理中です...