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対面4

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「黙りなさい。あなたに情けを掛けられなくなりますよ。」
今度は俺にもハッキリとわかった。ローブの男が、ゾクゾクするような殺気を放っている。
「うるさい!貴様のその鼻につく話し方も、人を下に見ている態度も、大嫌いなんだよ!帝国の犬が!」
ソビトがお構い無しに悪態を放つ。だがそれに対してローブの男は驚愕の言葉を返す。
「黙りなさい、下郎が。よくもまあ人のことをそこまで言えますねぇ。不老不死の実験薬・・・あなたは誰にそれを使ったんですか?」
「・・・あ・・・ああ・・・」
ソビトが頭を抱え、ガクガクと震え出した。
「あなたの愛する人に使ったのでしょう?最愛の伴侶に。その結果、どうなったのでしたっけ?不完全な薬を投与されたあなたの愛しい愛しい妻を・・・この方たちにも見せてあげましょうよ。」
次の瞬間、ソビトは涙を流し、床に転がり込み、奇声とも取れる叫び声を上げた。
なんだ?不完全な不老不死の薬だと?それを投与したらどうなるんだ?
ソビトも気になるが、今はローブの男から目を離せない。ロウソクの灯りが影を揺らす中、ソビト狂った叫びが響く。
すると、どこからともなく"別の叫び声"が響いてきた。ソビトのそれとは比べ物にならない、禍々しい、獣の叫びだ。
「これ、やっぱりこの地下からだったんだ!絶対犬じゃないよ!」
オーリィが部屋の角を見た。そこには重厚な鉄の扉があった。この叫び声はそこから発せられているようだ。
「どれ、では皆さんにご対面してもらいましょう。」
そう言うとローブの男は目を見開いた。
そしてその瞳が紫に光ったかと思うと、フッと姿を消した。
えっ?えっ??消えた!?今、まさに目の前からパッと姿が無くなった。
俺とシルバは棚の陰から身を乗り出し、辺りを見渡したが男は影も形もない。
「これは・・・"センス"だわ。どんな"センス"かわからないけど・・・。」
確かに色は違うけど、オーリィと同じ光が目から出ていた。
「透明になる"センス"か?それとも転移の"センス"?」
俺とシルバは少し混乱状態に陥った。もし透明になる"センス"だとしたら、いつどこから襲ってくるかわからないからだ。
「・・・ナショア!」
突然、ソビトは叫び転がるのをやめ、その名を呼んだ。
「近づいてくる・・・!」
オーリィが身体を起こし、鉄の扉に向かって身構える。近づいてくるって、何が?
ドンッ!!
鉄の扉が揺れた。何が扉を叩いた・・・いや、扉にぶつかってきた。シルバもビクッと身体を震わせた。
「ちょ、ちょっと!何なのよ!?ソビト!奥に何がいるの!?」
「・・・ナショアだ。ギザがナショアを解き放ったのだ。」
「ナショアってのはさっきの男が言ってたあんたの奥さんのことだよな!?じゃあギザってのがさっきの男か!なんでギザはそんなことしたんだ!?」
「決まってる・・・殺戮レベルの嫌がらせだ。」
俺の問いに、ソビトはうなだれてそう答えた。



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