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子犬の秘密8

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だが俺たちがどこまで知ってるか手の内はまだ明かせない。むしろ有益な情報を引き出さなくては。
「なるほどなるほど・・・他には?」
「うーん、そうですねえ・・・あっ!周辺国から様々な諜報員が来てますが、どうやら"北"からは来てないみたいですね。」
"北"とはウルグイヤ帝国のことだ。
それは確かにおかしな話だった。なぜなら帝国が喉から手が出るほど欲しがっているのが不老不死の秘密のはずなのだ。
先の大戦も元々はゴルディア王国の友好国に帝国が侵攻したことが原因だった。そしてその友好国には不老不死の妙薬の作り方が代々伝えられているという噂が蔓延していたのだ。
休戦したといえ、不老不死には執着があるはず・・・それがなぜ?
「あとは・・・国営だけあって店員も最初は何人もいたらしいのですが、なぜか段々と減っていって、今では新人が1人入っては辞めの繰り返しなんです。」
ふむ・・・よほどの激務で続かないのか、他に何か理由があるのか。それほど有益な情報じゃないだろうが、とりあえず報告書に載せるか。
「これで私の持つ情報は全てです。もしまだ私が知らない情報があったら、ご教授のほどを何卒、何卒・・・。」
カトーリオが揉み手でヘラヘラと笑いかけてくる。しかしこっちもたいした情報は無いし・・・。
「ペットショップには地下があって、そこでは犬じゃない"何か"を飼ってると思うよ。」
突然オーリィが口を出してきた。バカ!数少ない情報を喋っちまいやがって!
カトーリオも知らない情報だったらしく、思いのほか食いついてきた。
「ほほう。あの建物の見取り図は入手出来ませんでしたし、犬じゃ無い他の何かというのはなぜそう言えるのですか?」
「俺、目と耳と鼻は自慢なんだ。絶対地下に犬じゃない獣がいるよ。」
オーリィは少し得意げに目と耳と鼻を順に指差しながら答えた。
カトーリオは「それはすごい」と言いながらも疑っているような目をしている。
「ところで・・・」
シルバが口を挟んだ。
「次はあたしから聞きたいことがある。」
「ええ、ええ。なんなりと。」
カトーリオはニッコリと笑って構える。
「あんた、マムール国の諜報員らしいけど・・・生まれ育ちは違うみたいね。」
カトーリオの眉がピクっと動いた。
「・・・ええ。確かに私はマムールの生まれではありませんが、なぜ?」
「いえね、あんたの話す言葉のイントネーション。それはマムールの訛りが全く感じられないのよ。マムール訛りってのはなかなか消せるもんじゃない。以前、金を密輸してたマムール出身の悪商人がボヤいてたから覚えてる。」
カトーリオはそれを聞いて顔が固まり、一拍置いてから一層ニッコリと口角を上げた。
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