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子犬の秘密2

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「ここかぁ。」
ソビトのペットショップの前まで来て驚いた。なんとも立派なペットショップじゃないか。
2階建てで、広さも充分。かなりの数の犬を飼育してそうだ。
町に着いた頃、俺は富裕層の旦那にこのペットショップについて聞き込みをしてみたが全くと言っていいほど変な話はなかった。
「・・・なぁ、グラン。この町の犬、なんか変だ。」
オーリィが眉間に皺を寄せている。
「そうか?」
俺はなんの疑問も持っていなかったが、よく周りを見渡してみた。
ご婦人方が犬に手綱をつけて散歩している。ひい、ふう・・・周辺だけで5匹もいる。耳の垂れた子犬、毛の長い子犬、元気に吠えている子犬・・・あれ?
「子犬ばっかりだねえ。かわいい!」
シルバ言う通り"子犬ばかり"だ。ここまでくる間、町ですれ違った犬もみんな子犬だった気がする。
ペットショップで子犬を売るのは当たり前だ。しかし、犬を飼うのが流行りだしたのは"1年前"だ。成犬の姿を見ないのは明らかにおかしい。
とりあえず俺たちは疑問を抱えながらペットショップに入ることにした。
扉を開けるとそこには何十匹という子犬が檻に入れられていた。いくつも檻が並んでおり、1つの檻には3~4匹の子犬が入れられている。他に客が2名。富裕層の夫婦のようだ。
「か、かわいすぎる・・・天国なの?」
王都にはペットショップがないのでシルバにはかなり刺激が強いようだ。
シルバがキャッキャ言いながらはしゃいでいると、奥の扉から1人の男性が姿を現した。
「いらっしゃいませ。お客様はご新規ですか?」
口ひげを蓄え、ガリガリにやせ細った小柄なオールバックの男。作り笑顔が丸わかりの青みがかった白い顔がなんだか怖い。
「ええ。ゴルディア王国から来ましてね。犬を飼うならここの犬を買った方がいいと仲間から聞いてきました。」
俺はさも商人風な口調で返した。
「左様でございますか。当店は規約に同意いただいた会員様のみに販売致しております。よろしければ奥で規約をお読みになられますか?」
俺はオーリィとシルバに目配せした・・・つもりだったが、2人は犬に夢中になっていた・・・ほっとこう。
「ええ。家族は犬に夢中なようなので、私が拝見します。よろしいかな?」
「どうぞどうぞ。ささ、こちらへ。」
男に続いて店の奥へと足を踏み入れる。そこは狭めの部屋で、ソファーとテーブルしか置いてなかった。もう1つ奥へ通じる扉がある。「少々お待ちを」と言って男はもう1つの扉へと入っていった。
ソファーに座り5分ほど待つと、男は2枚の紙切れを手に戻ってきた。
「お待たせ致しました。ご挨拶が遅れました・・・私はソビト=ランセットと申します。この店の店長でございます。」
ビンゴ!こいつがソビトだ。
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