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シルバを連れてこい11

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「保安部隊が突入してきて、ムダックの側近が異常を報告するために通風口から鳥便を放ったの。すぐに私の鳥便も放って、追跡させたわ。そしてムダックの元へ向かおうと外に出て・・・」
「そこに俺がいたってことか。」
「ええ。そして屋敷でムダックを見つけたけど、妹を盾にされて返り討ちってわけ。」
やっと話が繋がった。つまりシルバも被害者だったということか。
しかし、それで話は終わるわけがない。
「えー、私の調査によると、シルバ氏は以下の罪に問われます。人身売買未遂、王国背徳罪、横領罪、詐欺罪など。少なく見積っても死罪が妥当かと。」
おさげ男が報告を挙げる。こいつは誰だ?
「報告ありがとう・・・ああ、彼は我が諜報探索部隊隊長のジークだ。」
「ジーク=マーホットです。以後よろしく。」
ジークは自己紹介の後、ニッと笑った。たった今ひとりの女性に死刑判決をしたとは思えない笑顔だ。
確かにシルバはいろいろ罪を犯したかもしれない。でも人身売買だって妹のためだし、金は返すべきところには返すべきだけど・・・なんとかならないものか。
「シルバ・・・あなたは2つの道を選べます。」
ニエ団長が神妙な面持ちで続ける。
「1つは罪人として罰を受けること。おそらくは死罪になるでしょう。もう1つは、そこにいるオーリィと共に世界を廻り任務を果たすこと。」
えっ!?さすがにそれはもみ消せるのか!?てかそれは答えは1つだろ。
しかしシルバは俯いて考え出した。そしてニエ団長に問いた。
「それは私としてはどちらも同じ選択です。私が世界中を旅することになったら、せっかく解放された妹は生きていけないから・・・任務に出るのも、死罪を受け入れるのも、すこしでも長く妹といれるほうを選びます。」
そうか、妹のミルが・・・これは想定してなかったであろうニエ団長が口を開く。
「任務に協力していただければ、ミルは私の養子として迎え入れましょう。毎日ベッドで寝かせ、風呂に入れ、滋養のある食事を取らせ、学校にも通わせますよ。」
「オーリィと行きます!」
瞬だ!シルバはキッパリと、清々しい良い顔で答えた。
結局、シルバは人身売買組織への潜入捜査官として記録され、ムダック捕縛の功績として『オーリィの記録管理官』という光栄なる職へ昇進したのであった。
いろんな人から騙し取った金は、ミルを買うために貯めた金の中から返金された。巨悪を叩いた英雄のちょっとしたオチャッピィとして処理されたのだった。
てか、なんでシルバは記録管理官ってかっこいい名前の職が用意されてて、俺は"従者"なんだ?
俺の小さなモヤモヤなど知る由もなく、運命は3人を押し流していくのだった。
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