22 / 51
シルバを連れてこい7
しおりを挟む
両脇の家は2階建てだが窓は板が全て打ち付けてある。泥棒よけのためだそうだ。
突き当たりも家の背面。つまり空でも飛ばないとここから脱出はできない。
「目を離した隙に逃げたんじゃないのか?」
ダンドンが横目で俺を見る。
「いや、よ~く思い出してもあんな派手な頭がここから出ていった記憶はない。」
「さっきまでここにいたみたいだけど?」
「はあ?」
オーリィがくんくんと臭いを嗅ぎながら不思議なことを言う。
「いやいや、俺たちがここを離れたのが2時間前。最後にここを確認した時もういなかったのに、ついさっきまでここにいたってのはどういうことだ?」
「俺、森で獣を追うのに臭いを辿るんだけど、シルバはかなり香水臭いからこの臭い町の中ならすぐわかるよ。どうやって隠れてたかはわからないけど、さっきまでここにいたよ、うん。」
俺とダンドンは驚きで顔を見合わせた。
とんでもない野生児だな。しかし今はその能力が役に立つ!
「じゃ、じゃあ臭いを辿って追いかけることはできるか?」
「今日は風もないし、たぶん大丈夫。こっちだよ。」
オーリィはヒクヒクと鼻を動かしながら、町中を移動し始めた。
路地を曲がり、しばらく歩いてまた曲がり・・・20分ほど歩いて、「ここだよ」と歩みを止めた。
そこは周りより一回り立派な建物だった。小さめな屋敷と言ってもいい。
「ここにシルバがいるのか。突入してもいいもんかな?」
もし全く関係ない家なら問題になる。俺はチラッとダンドンの顔を見た。
「ま、人身売買組織の関係者が身を潜めているかもしれんのだ。作戦中の小事だな。」
ダンドンはニヤリと笑って門を蹴り開けた。
その時だった。屋敷の裏から蹄と馬車の音が聞こえてきた。
「追うよ!」
オーリィが素早く反応して後を追う。
俺とダンドンは屋敷の中へと足を踏み入れた。
正面扉には鍵は掛かっていなかった。馬車に乗って逃げ出したと見るのが当たりか。
剣を構えながら、真っ暗な屋敷の中を忍び足で歩く。
「光が漏れてる部屋があるぞ。」
ダンドンも頷く。ゆっくりと近づく。そして気づく。
「・・・血の匂いだ!」
俺とダンドンは部屋の扉をバンッと開け、剣を構えた。そこには、血を流し倒れたシルバがいた。
「おい!大丈夫か!?」
ダンドンが駆け寄って容態を確認する。腹に短刀が突き刺さり、ドレスを赤く染めていた。
「・・・う・・・追って・・・馬車に・・・ムダックと・・・妹・・・」
「大丈夫だ!今仲間が馬車を追ってる!くそっ!血が止まらん!」
このままでは危ない。それは素人目に見ても明らかだ。
「ムダックってのは?」
「ん?ああ、人身売買組織の頭領で、奴隷オークションの胴元だ。」
ダンドンがシルバの腹を抑えながら教えてくれた。
状況的にシルバを刺したのはムダックか。オーリィが追っているが・・・さすがに馬車に追いつけるか?
そう思っていると、外から馬車の音が聞こえてきた。屋敷の前で停まったようだ。
「おーーい!グラン!捕まえてきたぞー!」
マジかよ!
俺はシルバとダンドンを置いて、外へ駆け出した。
外には馬車が1台停められていた。その前にオーリィと、手枷をつけられた女の子が1人。
突き当たりも家の背面。つまり空でも飛ばないとここから脱出はできない。
「目を離した隙に逃げたんじゃないのか?」
ダンドンが横目で俺を見る。
「いや、よ~く思い出してもあんな派手な頭がここから出ていった記憶はない。」
「さっきまでここにいたみたいだけど?」
「はあ?」
オーリィがくんくんと臭いを嗅ぎながら不思議なことを言う。
「いやいや、俺たちがここを離れたのが2時間前。最後にここを確認した時もういなかったのに、ついさっきまでここにいたってのはどういうことだ?」
「俺、森で獣を追うのに臭いを辿るんだけど、シルバはかなり香水臭いからこの臭い町の中ならすぐわかるよ。どうやって隠れてたかはわからないけど、さっきまでここにいたよ、うん。」
俺とダンドンは驚きで顔を見合わせた。
とんでもない野生児だな。しかし今はその能力が役に立つ!
「じゃ、じゃあ臭いを辿って追いかけることはできるか?」
「今日は風もないし、たぶん大丈夫。こっちだよ。」
オーリィはヒクヒクと鼻を動かしながら、町中を移動し始めた。
路地を曲がり、しばらく歩いてまた曲がり・・・20分ほど歩いて、「ここだよ」と歩みを止めた。
そこは周りより一回り立派な建物だった。小さめな屋敷と言ってもいい。
「ここにシルバがいるのか。突入してもいいもんかな?」
もし全く関係ない家なら問題になる。俺はチラッとダンドンの顔を見た。
「ま、人身売買組織の関係者が身を潜めているかもしれんのだ。作戦中の小事だな。」
ダンドンはニヤリと笑って門を蹴り開けた。
その時だった。屋敷の裏から蹄と馬車の音が聞こえてきた。
「追うよ!」
オーリィが素早く反応して後を追う。
俺とダンドンは屋敷の中へと足を踏み入れた。
正面扉には鍵は掛かっていなかった。馬車に乗って逃げ出したと見るのが当たりか。
剣を構えながら、真っ暗な屋敷の中を忍び足で歩く。
「光が漏れてる部屋があるぞ。」
ダンドンも頷く。ゆっくりと近づく。そして気づく。
「・・・血の匂いだ!」
俺とダンドンは部屋の扉をバンッと開け、剣を構えた。そこには、血を流し倒れたシルバがいた。
「おい!大丈夫か!?」
ダンドンが駆け寄って容態を確認する。腹に短刀が突き刺さり、ドレスを赤く染めていた。
「・・・う・・・追って・・・馬車に・・・ムダックと・・・妹・・・」
「大丈夫だ!今仲間が馬車を追ってる!くそっ!血が止まらん!」
このままでは危ない。それは素人目に見ても明らかだ。
「ムダックってのは?」
「ん?ああ、人身売買組織の頭領で、奴隷オークションの胴元だ。」
ダンドンがシルバの腹を抑えながら教えてくれた。
状況的にシルバを刺したのはムダックか。オーリィが追っているが・・・さすがに馬車に追いつけるか?
そう思っていると、外から馬車の音が聞こえてきた。屋敷の前で停まったようだ。
「おーーい!グラン!捕まえてきたぞー!」
マジかよ!
俺はシルバとダンドンを置いて、外へ駆け出した。
外には馬車が1台停められていた。その前にオーリィと、手枷をつけられた女の子が1人。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
王命を忘れた恋
須木 水夏
恋愛
『君はあの子よりも強いから』
そう言って貴方は私を見ることなく、この関係性を終わらせた。
強くいなければ、貴方のそばにいれなかったのに?貴方のそばにいる為に強くいたのに?
そんな痛む心を隠し。ユリアーナはただ静かに微笑むと、承知を告げた。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です
葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。
王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。
孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。
王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。
働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。
何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。
隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。
そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。
※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。
※小説家になろう様でも掲載予定です。
絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる