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シルバを連れてこい2

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「おい、グランじゃないか?」
話しかけてきたのは巨漢、髭面、モジャモジャ頭の男だった。俺はこの男を知っていた。
「ダンドン!お前、こんなとこで何やってんだ!?」
ダンドンは俺より3つ年上だが、騎士団の同期だった男だ。仲が良かったが、2年前に保安部に異動になったきり疎遠になっていた。
「こんなとこって・・・俺、ここの副所長だもん。」
保安部は各地域毎に本部・支部があり、ここは西地区の本部だ。本部の副所長とは・・・出世したじゃねえか。
「そんで、グランは今何してんだ?」
騎士団→諜報探索部隊→14歳の従者なんて言えない。
「俺はニエ団長の下でこき使われてるよ。それはそうと、人を捜してるんだ。」
「人?誰だ?」
「シルバって奴だ。」
その名前を聞いた瞬間、ダンドンはあからさまに嫌な顔をした。
「・・・シルバに何の用だ?」
こんなに威圧感があるダンドンは初めて見る。シルバってのはどんな奴なんだ?
「い、いや、ニエ団長が連れてこいって・・・」
ダンドンは少し考え、俺にこっそり耳打ちした。
「・・・ここじゃまずい。俺の部屋へ行くぞ。」

西地区保安本部の薄暗い副所長室でダンドンと俺は椅子に座り対面した。そしてダンドンは眉をしかめながらシルバのことを教えてくれた。
「シルバは2年前に記録管理官としてここに配属されてきたんだが、まぁとにかく癖のある奴でな。最初は猫被ってたんだが段々と本性を現し始め、金は借りても返さない、同僚の弱味を握ってユスる、終いにゃ一般市民からカツアゲみたいなことをやり始めた。」
なんつー奴を旅のお供につけようとするんだ団長!前評判で断固反対だが、とりあえずはニエ団長の元へ連れていかねば。
「・・・で?どこにいるんだ?」
ダンドンはふぅ!と息を吐いて背もたれに体重をかけた。
「そんなことする奴をここに置いとけるわけないだろ。1ヶ月前に辞めさせたよ。」
まぁそうだろうな。死罪にならなかっただけ儲けもんだ。死んでてくれりゃお使いは終わったんだが・・・さてどうしようか。
俺が腕組みして悩んでいると、ダンドンが声を潜めて言う。
「ここだけの話だがな・・・シルバの居場所はわかってんだ。実は奴は今、人身売買に関与してる。」
「お、おいおい、そりゃ・・・」
背中を冷たい汗が伝った。王国では人身売買は重罪だ。売るのも買うのも死罪確定。とんでもないことになってきた。
「元々は騎士団の諜報部隊が掴んできた情報だ。人身売買組織が西地区をアジトにしていて・・・関係者リストを見たらビックリだ。」
「シルバの名前があったってことか。」
「ああ。だが奴はクズだが人身売買なんてするようなタマじゃない。現にどういう関わりがあるかは資料に載ってなかった。」
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