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王都ゴルディア10

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「それに、私は15年前の聖女連れ去り事件の真相も追っています。オーリィ、どうか私を信じて各地のスカウティングと問題解決を全うしてきてもらいたい。必ず君のご両親の真相をこの手に掴みます。」
ニエ団長はオーリィの前へ歩み寄り、右手を差し出した。オーリィもその手を取り、しっかりと握手を交わしたのだった。
「俺は王都暮らしなんて性にあわないし、いろんな世界を見れるならそれもいいか!」
あっけらかんとしたオーリィの性格が羨ましくなる。俺も見習わないとな。しかし、さっき何か余計な言葉を聞いたような・・・。
「あの~、ニエ団長。さっき"スカウティングと問題解決"って言いましたけど、スカウト活動だけじゃないんですか?」
「ああ、それですがね・・・どうせならば手の届かないところのトラブルを解消してもらおうと思いましてね。」
なんと余計なことをするのだ。仕事が倍になるだけじゃねーか!しかしニエ団長には逆らえない。
先の見えない旅を前に、今は王都でゆっくりと支度をするように指示された。

俺とオーリィは団長室を出て、とりあえずあてがわれた宿屋に泊まることになった。グレードはさほど高くない一般的な宿屋だが、2人部屋だった。ケチめ。
とにかくいろんなことがあって疲れたので、すぐにそれぞれギシギシとうるさいベッドに横になった。
これからのことを考えるとなかなか寝付けない。瞼の裏にニエ団長の微笑が浮かんだ。
「グラン・・・起きてる?」
オーリィが話しかけてきた。
「・・・寝れないのか?」
「うん・・・変なこと聞いてもいい?」
目を開けずに「ああ」とだけ返事をした。なんとなく質問の中身は予想してはいた。
「俺の父様は、悪いことしたの?」
「してないよ。」
即答した。バーロックに対する会議での反応は、オーリィにとってはショックだったに違いない。だが否定の証明はなかなか難しかった。
「お前の父様は、立派な人だった。でもなぜお前の母様を連れて王国を出たのかはわからない。でも、でもさ・・・」
言葉に詰まった。俺はバーロックともアリア様とも話したことはない。そんな俺が、なんて言えばいいんだ。
「きっと・・・色んな人に会えば、わかるよな。俺、父様のこと信じてる。」
・・・なんて前向きなんだ。こんな少年が・・・泣けてきた。
「ぞ、ぞうだな・・・も"うね"るわ・・・」
俺は泣いているのをオーリィに気づかれないように、寝たフリをした。よっしゃ!なんだってやってやる!
「なぁ、何泣いてんだ?なぁ、なぁ。」
・・・気付かないふりしろよ、ガキめ。
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