上 下
14 / 51

王都ゴルディア9

しおりを挟む
つまりオーリィは放り出されるわけではなく、安全圏に逃げることができたってことか。しかし、それなら・・・
「ニエ団長。それならオーリィを御前会議に参加させずに森に帰してやっても良かったのではないですか?それなら危険度はまったくのゼロです。」
俺の言葉を聞いて、ニエ団長は深く溜息をついた。
「はぁ・・・君は思いやりの無い人ですねぇ。」
「はあ?」
カチンときた。オーリィの身の安全を考えたのに、なんだその言い草は。じゃあオーリィがサルモアに睨まれることになんかメリットあんのか!・・・と言いたい。
「なぜ帝国は広大な領土を持ちながら執拗に王国を倒そうとするのか。それは極秘中の極秘、『不老不死の秘術』の存在に他なりません。そしてそれは聖女アリアがこの王国に隠して去ったのです。奇しくもこの戦争が始まろうという時期に我々がオーリィに出会えたのはなぜか?私があなたにバーロックとアリア様を捜させたからでしょう。諜報部隊の情報によると、あと1週間遅ければ帝国は大森林を焼き払っていた可能性がありました。それはアリア様を捜すために他ならず、私は帝国に秘術が渡るのを未然に防ぎたかったのです。結果、オーリィを見つけた。オーリィの情報が帝国に渡るのも時間の問題です。アリア様無き今、帝国は秘術の手がかりとしてオーリィを手に入れるために動くことでしょう。」
そんな意図があるなら教えといてくれよ。不老不死の秘術だって?権力者が欲しがりそうな名だ。しかし、確かに帝国の動きがその通りならば大森林にはおいておけない。
「では、そのことを会議で発表したらよかったのでは?王国の勢力を挙げてオーリィを守る方向に・・・」
「君はバカですか?」
・・・違うとは言いきれない。
「なぜ帝国へ情報が漏れるのか。それはスパイがいるからですよ。そして十中八九、サルモアがそうです。しかし証拠はまだ無い。サルモアだけではありません、疑おうと思えば誰もが危険人物なのです。それどころか不老不死の秘術の秘密が目の前にあるなんて、帝国が関わってなくても目の色を変える人物がいるじゃないですか。」
確かに、あの白ブタ王ならオーリィを拷問に掛けかねない。
「しかし、アリア様の秘密をオーリィが引き継いでいるわけでもあるまいし・・・」
「可能性があればなんだってやりますよ。今はまだ不老不死の秘術の存在すら限られた人間しか知りません。先代はともかく、我が王すら知らないでしょう。」
確かに奴がそれを知っていればオーリィを手放すようなことをするはずがない。
サルモアはニエ団長の元にオーリィを置いておきたくなくて、帝国はアリア様を・・・つまりオーリィを追うことになる。そしていずれ王国は帝国の侵攻を受ける。その時にオーリィは王都にいないほうがいいってことなのか。
しおりを挟む

処理中です...