上 下
9 / 51

王都ゴルディア4

しおりを挟む
「・・・まぁ、とにかく無事見つかってよかった。ニエ団長が待ってるから早く行くぞ。」
俺たちは合流し、ニエ団長の団長室へと向かった。
団長室の扉をノックする。
「グランです。入ります。」
団長室の中はそれほど広くなく、事務作業だけをする作業場といった風だった。団長によって自分好みに部屋を模様替えするそうだが、ニエ団長の団長室は至ってシンプルな部屋だった。
「やあ。遅かったじゃないですか。」
正面に大きな机があり、付随の椅子にニエ団長が腰掛けている。
「申し訳ございません。場内でオーリィが迷ってしまったもので。」
「言い訳は結構です。君が手綱を握らなくてどうするんです。」
「・・・申し訳ございません。」
くそぅ、怒られた。オーリィめ、後で叱りつけてやる。
「ところで君からの報告で幾つか確認事項があります。まず、アリア様とバーロック氏は既に亡くなっていた件ですが・・・」
「母様は俺が小さい頃に死んだ。父様は2年前に死んだ。どっちも病気だ。」
自分の両親のことだからか、間髪入れずにオーリィが答えた。ニエ団長は少し表情を曇らせながら、
「そうですか。それは非常に残念です。」
と小さな声で言った。
「では次にオーリィ氏がアリア様とバーロック氏の嫡男であることについてです。」
「それについては間違いないと思われます。2人の墓、写真、オーリィの記憶、瞳の色等、状況証拠が充分あります。」
「わかりました。最後に、盗賊団を殲滅~と報告がありましたが、これは?」
ここで初めてニエ団長が訝しげな表情を見せた。20人以上の盗賊団を2人(本当はオーリィだけ)で殲滅したというのは、確かに眉唾物だ。
「えー、確かに信じ難い内容ですが事実です。20人ほどの~」
「23人だよ。」
「・・・23人の盗賊を、実際にはオーリィ1人で殲滅したものです。拠点には火を放ち、盗賊団は壊滅しております。」
ニエ団長がオーリィの顔をじっと見つめる。オーリィが目線を逸らさず真っ直ぐ見つめ返していると、ニエ団長はニコッと笑った。
「素晴らしい。さすが、戦神と呼ばれた人の血を引いているだけあります。」
「せんじん?父様のこと?」
オーリィは目をキラキラさせて質問した。
「そうです。君のお父様は世界一強い騎士でした。お父様を誇りに思ってください。」
そう言ったニエ団長の目は遠くを見つめ、優しさと切なさが入り交じったような表情になっていた。
「ニシシシ!俺も父様くらい強くなるんだ!」
夢を見させたい。誇りある父親像に傷をつけたくない。真実かどうかはどうでもいい。バーロックという男がこの国でどう言われているのか、それだけはこの子に隠したかった。
しおりを挟む

処理中です...