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王都ゴルディア2

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「父様にもたまに切ってもらってたんだ。」
椅子に座らされてチョキチョキと髪を切られるオーリィは、風呂屋とは打って変わって大人しくなっていた。
風呂で体を綺麗にし、髪型もサッパリと整えたオーリィは、あとは服さえ新調すれば貴族の坊ちゃんかと思うほど整った顔になった。そういえば聖女アリアは絶世の美女だったらしいが、なるほどこいつは美少年だ。
「あっ!あれ、なんだ!?」
オーリィが屋台を指差し駆け出していく。
「こ、こら!勝手に離れるな!」
肉串屋台の前でヨダレを垂らしながら商品を見つめるオーリィに、仕方なく1本買ってやることにした。
「ありがと!うーわっ!すげえうめえ!」
大声で、うまいうまい!と騒ぐオーリィを見て、人が集まってきた。売上に貢献してくれたから、と店主からもう1本サービスされ、オーリィはご機嫌になった。
「あのなぁ、迷子になったら探せんぞ。頼むから勝手にどこかに行かないでくれよ。」
「へいへい。」
ゴルディア城に続くメインストリートを歩きながら、オーリィに釘を刺した。本当にわかってるのだろうか。
しばらく歩くと城門へと辿り着いた。ここでも厳重なIDチェックが必要なはずだったが、ニエ団長の計らいで俺らは顔パスだった。
見上げるほど巨大な門を潜ると、壮大で美しいエントランスが待ち構えている。
「いいか、オーリィ。ニエ団長の部屋は場内にある。くれぐれも俺から離れるなよ。城内はとても広いし、一筋縄じゃいかない人たちが・・・って、あれ!?」
俺がクドクドと言い聞かせているうちに、隣りにいたはずのオーリィはいつの間にかいなくなっていた。こ、これだから田舎もんは!いや、野生児は!!
「おーい!オーリィ!どこだーっ!どこへ行ったーーっ!?」
ニ、ニエ団長に殺される!!

~ゴルディア城内1階北廊下~
「おい!貴様!何をしている!」
「へ?」
オーリィが声を掛けられ振り向くと、黒髪オールバックの中年男性が眉間に皺を寄せていた。
「これだ!この串は貴様が捨てた物だな!」
男性の手には肉串の串が握られていた。オーリィが食べ終わり、口に咥えていたものを吐き捨てたのだ。
「あー、ごめんごめん。じゃあ悪いけど、捨てといてくれる?ゴミ箱の場所、知らないんだよね。」
「き、貴様・・・!」
オーリィの言葉に、男性は全身をプルプルと震わせた。
「まず!城内にゴミを捨てるな!どのような事情があろうともだ!次に!どこの騎士団に所属しているかわからんが、礼儀がなっとらん!我輩が誰だかわからんのか!」
「知らないよ、うるさいなぁ。」
もはや男性は熟したトマトの如く、怒りで顔を真っ赤にしていた。
「ふ、ふふ・・・いいだろう。まぁ、自分から名乗るのが礼儀ということもある。」
男性はコツコツとオーリィに歩み寄り、通り越したところで歩みを止めた。
「我輩は王国第3騎士団団長のガルム=イルゴゴスである。見たところ新兵のようだが、問答無用!貴様に教育的指導を与える!さあ、名を名乗れい!」
そう言って振り向くと、すでにそこにはオーリィの姿かたちはいなくなっていた。
取り残されたガルムは青筋を浮かべて歯ぎしりをするのであった。
「あの小僧・・・次見かけた時こそ入念に教育的指導してやる・・・ふふ、ふふふ、ふははははは!!」
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