従者が記す世界大戦記

遺された種5

「あ・・・あ・・・たす、けてくれ・・・」
1人生き残った盗賊は地面に這いつくばりながら、泣きながら命乞いをしていた。オーリィはその横に屈み、なんの抑揚もない声で言った。
「首領はどこだ？教えれば殺しはしない。」
「あ・・・あ・・・」
盗賊は声にならない声を垂れ流しながら、頭の割られた死体を指さした。
「そうか・・・約束だ。お前は殺さない。」
そう言ってオーリィは立ち上がり、こっちへ歩いてきた。
「あ・・・あ・・・あーっ！アーーッ！」
やがて動けない盗賊は炎の渦に巻かれ、姿を消した。
俺は息苦しくなっていた。これは、なんだ？少年が20人以上の盗賊を1人で殲滅してしまった。そういえば熊も一矢で仕留めていたが・・・この戦力、一体どうやって・・・？
「オッサン。お待たせ。じゃあ行こっか。」
煌々と燃える背景がオーリィの表情を隠した。声はまるで何も無かったかのようだが、果たしてその顔は少年の笑顔なのか、はたまた悪魔の微笑だったのか。
「あ、あのな・・・」
「ん？」
何を言うつもりなのか。今さら「王都には連れて行けない」などと言えるものか。騎士団長にも匹敵する力を持つ少年・・・手綱を強く握らねば。
「お、俺はオッサンじゃない！まだ28歳だ！名前で、グランと呼べ！」
「・・・ニシシシ！よろしくな、グラン！」
ああ、末恐ろしや。