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第6話
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自分ではよくわからないが、僕は人よりモノが少し大きいらしい。
だから、いたずらで股間を触られることは、小中学校時代はたまにあった。
それらはただくすぐったいか不快なだけだった。
なのに、相手が森光君だとまったく異質な感覚になった。
たまらず僕が変な声を出してしまうと、彼が大きな手で口をふさいできた。
少し慌てた手付きだったが、決して乱暴ではなかった。
唇に、彼のゴツゴツした手のひらが当たる。
鼻に、彼の手の匂いが入ってくる。
僕の頭はさらにとろけてしまって、もう何がなんだかわからなくなった。
よくわからないまま、彼の降車駅に着いた。
そして僕は彼に手を引っ張られ、一緒に降りた。
今日は両親が帰ってこないから、どんな話でもできる。ちょっとでいいからうちに寄っていって――。
耳元で、そうささやかれた気がする。
彼の家は大きかった。
部屋も大きい。八畳か、もっとあるかもしれない。彼の大きな体に合ったサイズだった。
少し壁のクロスが日焼けしていたが、きれいな部屋だ。
セミダブルサイズのベッドに、隣同士で座った。
「マコちゃん、怒った?」
「全然怒ってない。でもどうして」
彼も僕も、前を向いている。
前方にはこれまた大きな画面のテレビがあるが、何も映っていない。
「ドン引きするかもしれないけど、聞いてくれる?」
「ああ。大丈夫」
「……我慢できなくなってさ。お願いして触らせてもらおうかと思ったんだけど、聞くとかえってダメかなと思って、黙って触っちゃった。もしマコちゃんが怒ったら謝ろうかなって」
――!?
僕はそこで彼のほうを向いた。もちろんびっくりしたからだ。
こちらの実行しようとしたプランとまったく同じではないか。
ああ最初から話したほうがいいね、と言って彼は続けた。
相変わらず、マイペースな喋り方で。
「実はさ。中学生のとき、マコちゃんのことが気になってたんだよね」
――?
「なんか、中一のときにクラスの友達から『一組の真子って、下手なレスラーよりも股間大きいよな』って言われて」
――??
「そのときは特に何も思ってなかったんだけど、中二の壮行会のときに、ユニフォーム姿のマコちゃんの股間のもっこりを見ちゃって。それから意識するようになっちゃってさ」
――???
「で、まず友達になりたくて、休み時間にマコちゃんを探したりもしたんだけど、いざ発見しちゃうとなかなか話しかけられなくて。一回談話スペースですごいチャンスがあったんだけど、それも逃しちゃって、結局そのまま卒業しちゃって」
――????
「でも大学に行き始めたら電車の中にマコちゃんいるし。このチャンス逃すともう次はないかもって思って、頑張って声かけたんだ」
――?????
「でもさ、やっぱり友達になるだけじゃ満足しないみたいで。だんだん触りたくてたまらなくなって、今日我慢できなくなって、触っちゃった」
……。
なるほど。
すべてがつながった。
漫画や小説でよくある、パズルのピースがはまっていく感覚とはこのことか、と思った。
僕らは『合いすぎ』だったのだ。
中学生のときに交われなかったこと。それは合いすぎだったからだ。合いすぎて、躊躇するタイミングもまったく一緒で。だから交われなかったのだ。
そして大学生になって再会して以来、僕のしたいことや言いたいことに対して、彼が異様にかぶせてきていたこと。
これも、合いすぎてタイミングが一致し続けていたからだ。
何てことだ。
「マコちゃん、やっぱり引いた?」
「いや全然!」
僕は首を振った。
「僕もまったく同じだったんだ」
「同じ?」
「うん。僕は友達から『一組の森光って、下手な女子よりもおっぱいあるよな』って言われて。壮行会でおっぱい見ちゃって、休み時間に森光君を探して、談話スペースでチャンスを逃して、そのまま卒業して『あー……』ってなって、大学行き始めたら電車の中にいて、これが最後のチャンスと思って声をかけようとして、友達になってもだんだんそれだけでは満足できなくなって。さっきだって、実は僕のほうから森光君の胸を触ろうとしていたところだったんだ」
僕たちは、しばらく見合ってしまった。
彼はポカンとした顔。僕も似たような顔をしていたのだと思う。
そのあと、何だかおかしくなって、二人で笑い合った。
笑い合って、力が抜けた。
二人同時に、ゴロンとベッドに倒れこんだ。
「めちゃくちゃ両思いだったんだな」
僕が天井を向いてそう言うと、彼も「そうだね」と答えた。
そして今度は彼のほうを向くと、彼も顔をこちらに向けたところだった。
その顔にあどけなさと精悍さが魅力的にミックスされているのは、あの頃と変わらない。
自然に唇が重なった。
足がベッドから出て遊ぶので、これも自然にお互い絡ませ合った。
彼の舌は全然乱暴ではなくて、少し遠慮がちで、とても優しかった。
唇が離れると、お互い一度起き上がって、裸になった。
初めて見る彼の全裸。大きいのにたるみがまったくない。
引き締まった筋肉が鎧のように全身を覆っている。それでいて雰囲気が穏やかのは、色白で体毛が薄いからなのかもしれない。これだけ近くで見ると、肌のきめが細かくてきれいなのもよくわかる。
一番先に胸を見るのがもったいなくて、パワーのありそうな四肢や、見事に割れて盛り上がっている腹筋を先に眺めていく。
彼の股間も、見た。
僕と同じで勃起していた。陰毛が薄めで、これまたとてもきれいに見えた。
僕のモノはそんなに大きいのだろうか? とも思うのだが、彼より少しだけ大きいような気がしないでもない。
最後に、胸を見た。
「中学の壮行会のときよりも胸が大きくなってる気がする」
「そう? ずっと鍛えてるからかな」
彼がさらに顔を赤くする。
本当に大きい。それでいてだらしなく垂れてはおらず、見事な大胸筋だ。
引き締まった小ぶりの乳輪も、胸の大きさをより強調している。
「さっきは森光君に先に触られたから、今度は僕が先でいい? 胸を触りたい」
彼がうなずいたので、ベッドの中央で仰向けになってもらった。
「じゃあ、いくよ――」
半分覆いかぶさるような体勢を取ると、僕は彼の胸にゆっくりと手を伸ばした。
だから、いたずらで股間を触られることは、小中学校時代はたまにあった。
それらはただくすぐったいか不快なだけだった。
なのに、相手が森光君だとまったく異質な感覚になった。
たまらず僕が変な声を出してしまうと、彼が大きな手で口をふさいできた。
少し慌てた手付きだったが、決して乱暴ではなかった。
唇に、彼のゴツゴツした手のひらが当たる。
鼻に、彼の手の匂いが入ってくる。
僕の頭はさらにとろけてしまって、もう何がなんだかわからなくなった。
よくわからないまま、彼の降車駅に着いた。
そして僕は彼に手を引っ張られ、一緒に降りた。
今日は両親が帰ってこないから、どんな話でもできる。ちょっとでいいからうちに寄っていって――。
耳元で、そうささやかれた気がする。
彼の家は大きかった。
部屋も大きい。八畳か、もっとあるかもしれない。彼の大きな体に合ったサイズだった。
少し壁のクロスが日焼けしていたが、きれいな部屋だ。
セミダブルサイズのベッドに、隣同士で座った。
「マコちゃん、怒った?」
「全然怒ってない。でもどうして」
彼も僕も、前を向いている。
前方にはこれまた大きな画面のテレビがあるが、何も映っていない。
「ドン引きするかもしれないけど、聞いてくれる?」
「ああ。大丈夫」
「……我慢できなくなってさ。お願いして触らせてもらおうかと思ったんだけど、聞くとかえってダメかなと思って、黙って触っちゃった。もしマコちゃんが怒ったら謝ろうかなって」
――!?
僕はそこで彼のほうを向いた。もちろんびっくりしたからだ。
こちらの実行しようとしたプランとまったく同じではないか。
ああ最初から話したほうがいいね、と言って彼は続けた。
相変わらず、マイペースな喋り方で。
「実はさ。中学生のとき、マコちゃんのことが気になってたんだよね」
――?
「なんか、中一のときにクラスの友達から『一組の真子って、下手なレスラーよりも股間大きいよな』って言われて」
――??
「そのときは特に何も思ってなかったんだけど、中二の壮行会のときに、ユニフォーム姿のマコちゃんの股間のもっこりを見ちゃって。それから意識するようになっちゃってさ」
――???
「で、まず友達になりたくて、休み時間にマコちゃんを探したりもしたんだけど、いざ発見しちゃうとなかなか話しかけられなくて。一回談話スペースですごいチャンスがあったんだけど、それも逃しちゃって、結局そのまま卒業しちゃって」
――????
「でも大学に行き始めたら電車の中にマコちゃんいるし。このチャンス逃すともう次はないかもって思って、頑張って声かけたんだ」
――?????
「でもさ、やっぱり友達になるだけじゃ満足しないみたいで。だんだん触りたくてたまらなくなって、今日我慢できなくなって、触っちゃった」
……。
なるほど。
すべてがつながった。
漫画や小説でよくある、パズルのピースがはまっていく感覚とはこのことか、と思った。
僕らは『合いすぎ』だったのだ。
中学生のときに交われなかったこと。それは合いすぎだったからだ。合いすぎて、躊躇するタイミングもまったく一緒で。だから交われなかったのだ。
そして大学生になって再会して以来、僕のしたいことや言いたいことに対して、彼が異様にかぶせてきていたこと。
これも、合いすぎてタイミングが一致し続けていたからだ。
何てことだ。
「マコちゃん、やっぱり引いた?」
「いや全然!」
僕は首を振った。
「僕もまったく同じだったんだ」
「同じ?」
「うん。僕は友達から『一組の森光って、下手な女子よりもおっぱいあるよな』って言われて。壮行会でおっぱい見ちゃって、休み時間に森光君を探して、談話スペースでチャンスを逃して、そのまま卒業して『あー……』ってなって、大学行き始めたら電車の中にいて、これが最後のチャンスと思って声をかけようとして、友達になってもだんだんそれだけでは満足できなくなって。さっきだって、実は僕のほうから森光君の胸を触ろうとしていたところだったんだ」
僕たちは、しばらく見合ってしまった。
彼はポカンとした顔。僕も似たような顔をしていたのだと思う。
そのあと、何だかおかしくなって、二人で笑い合った。
笑い合って、力が抜けた。
二人同時に、ゴロンとベッドに倒れこんだ。
「めちゃくちゃ両思いだったんだな」
僕が天井を向いてそう言うと、彼も「そうだね」と答えた。
そして今度は彼のほうを向くと、彼も顔をこちらに向けたところだった。
その顔にあどけなさと精悍さが魅力的にミックスされているのは、あの頃と変わらない。
自然に唇が重なった。
足がベッドから出て遊ぶので、これも自然にお互い絡ませ合った。
彼の舌は全然乱暴ではなくて、少し遠慮がちで、とても優しかった。
唇が離れると、お互い一度起き上がって、裸になった。
初めて見る彼の全裸。大きいのにたるみがまったくない。
引き締まった筋肉が鎧のように全身を覆っている。それでいて雰囲気が穏やかのは、色白で体毛が薄いからなのかもしれない。これだけ近くで見ると、肌のきめが細かくてきれいなのもよくわかる。
一番先に胸を見るのがもったいなくて、パワーのありそうな四肢や、見事に割れて盛り上がっている腹筋を先に眺めていく。
彼の股間も、見た。
僕と同じで勃起していた。陰毛が薄めで、これまたとてもきれいに見えた。
僕のモノはそんなに大きいのだろうか? とも思うのだが、彼より少しだけ大きいような気がしないでもない。
最後に、胸を見た。
「中学の壮行会のときよりも胸が大きくなってる気がする」
「そう? ずっと鍛えてるからかな」
彼がさらに顔を赤くする。
本当に大きい。それでいてだらしなく垂れてはおらず、見事な大胸筋だ。
引き締まった小ぶりの乳輪も、胸の大きさをより強調している。
「さっきは森光君に先に触られたから、今度は僕が先でいい? 胸を触りたい」
彼がうなずいたので、ベッドの中央で仰向けになってもらった。
「じゃあ、いくよ――」
半分覆いかぶさるような体勢を取ると、僕は彼の胸にゆっくりと手を伸ばした。
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