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第7話

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 ぼくはふたたびつかまれた腕の誘導にしたがい、立ち上がった。
 彼のほうが少し背は高いけど、ほとんど同じ目線で向き合う。

 薬師寺くんの左の二の腕の、日焼けの境界線。
 例によって彼は途中でぼくの腕を離したけど、そこまでは自力で行けた。
 境目を、右手の指で触る。
 太ももと同じくスベスベで、気持ちいい。

「はは、恥ずかしいな」

 彼の顔を見ると、やはり顔を赤らめて少し逸らし気味だったけれども、目はぼくの顔を見てくれていた。
 そして視線を彼の体のほうに戻したときに気づいた。
 腕だけではなく、どうやら肩から胸にかけても、うっすら日焼け跡があることに。

「ここにも日焼けの跡がある」
「そこはタンクトップ焼けだな」

 なるほど、と腕を触っていた指を、肩の上まで滑らせていった。

 いつのまにか、ぼくは彼にものすごく接近していた。
 メガネを取られていたから、ピントが合うまで無意識に近づいてしまっていたのだと思う。
 本当に十何センチくらいの距離になっていて、びっくりした。
 自分から彼にこんなに近づいたことは、今までなかったと思う。

 肌が本当にきめ細かい。この距離だとよくわかる。
 もう手を引っ込める気にはならず、肩から胸に向けてタンクトップ焼けの跡を触っていく。
 距離が近すぎるので、指ではなく手のひら全体も使って撫でるようなかたちになった。

 ぼくの親指が、彼の右の乳首に当たった。
 
「はぁっ」

 当たったのは、わざとなのかわざとでないのか。自分でもわからなかった。
 でも彼のそのかすれた声で、ぼくの中で何かが取り除かれて、とどめておかれてたものがドバっと洪水のように流れ出す感じがした。

 両手で、彼の左右の乳首を触った。

「ぁ……はぁ……」

 漏れ続けるかすれ声を聞きながら、触って、そして裸眼でしっかりと見た。
 色が濃くて、引き締まっている乳輪と小さな乳首を。

 彼の両手が、ぼくの頭の上に置かれた。
 撫でるようにだったので、重さは感じない。
 でも上からの不思議な力を感じて。いや、感じたことにしたかっただけかもしれないけれども。

 ぼくは膝をついた。
 目の前のおへそがきれいだった。

 やっていい? とは彼に聞かなかった。
 人差し指をくぼみに入れてみた。指先にコリコリしたものを感じた。意外と深い。

「……っ」

 また少し声の漏れを感じて見上げると、彼は少し歯を食いしばり気味にしていた。
 でも、くすぐったい? とも聞かなかった。

 もう頭がボーっとして、何がしてよくて何がしたら悪いのか、わからなくなっていたのだと思う。

 だからぼくは、彼のハーフパンツにも手をかけてしまった。
 さっき彼が自分でやったように裾のところを下から上に、ではなく……。

 ウエストのところを、上から、下に――。



(続く)
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