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朝チュンおじさん

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チュン、チュン。
小鳥の囀りと朝日が眩しく、僕の覚醒を促す。
季節は春。新社会人として生活がスタートして間もない。そんな土曜日の朝、僕は目を覚ました。
ホテルの一室で、僕の知らない全裸のおじさんが横でイビキをかいて寝ている。

そんな僕も全裸。
全裸で寝た事など一度もない。
それなのに不思議な事が起きていた。
そして、この状況を理解できずにいた。

「誰なんだ…このおじさんは」

頭をかきながら、寝起きの頭で考える。
まずは観察。辺りを見渡して、ここがホテルである事を理解する。床には僕の服、それと知らない服が散乱している。
そして、隣にはおじさんが寝ている。いびきをかいて寝ている。相当疲れているのか、起きる様子はない。

おじさんの事を観察する。
頭は禿げていて、お腹も出ている、小太りの中年男性。娘から嫌われてそうな雰囲気が漂ってくる。
下半身に目を向けると、おじさんは寝ているのに下半身は起きていた。

僕は彼の息子に頭を下げて挨拶した。
なぜか向こうも一瞬頭を下げて、また上げた。
挨拶が返ってくるとは礼儀正しい息子さんだと感心した。

僕は頭の中で昨日の記憶を呼び戻す事にした。
それは夜の9時まで遡る。



「いらっしゃい!!」
店内に入るや否や、大きく元気な声で出迎えられる。
店内も賑やかでテーブル席は僕のようなスーツ姿の男やカップル、女性たちの集団によって賑わいをみせていた。

華の金曜日と言われるだけあって、沢山のお客さん。
そんな中、僕は1人カウンター席へと歩みを進めた。
すぐさま
「何になさいますか?」
と店員が現れたので、焼き鳥と酒を注文する。
何度も通っているので、いつも通りの物を注文した。
急かされたわけではないはずだ。
時間は夜7時。会社終わりだった。

僕はいつも通り賑わう声を背中で聴きながら、お酒をちびちび飲んでいた。

だけど、その日だけは違うかった。
隣に来た男の人に話しかけられたのだ。

「おにいさん、1人かい?」
隣に腰掛けた男は中年の小太りでスーツ姿。
頭は少し禿げかけており、頭皮が見えそうなくらい髪が薄かった。
手には焼酎が入ったコップを持ち、目の前には焼酎の瓶が置かれている。それをみて常連さんなのかもしれないと、何故か思った。

「そうです。あなたも?」
「そうなんだよ。寂しく1人酒だ」

おじさんはそう言うと、僕に愚痴を言い始めた。
そして、愚痴を言い終わると僕にも話を振ってくる。
そのせいか、知らずと僕はおじさんに愚痴を言っていた。モテないだの、色々な事をおじさんと話をした。

それは1時間、2時間と時間が自然と過ぎていき、気がつくと僕は寝てしまった…


それからの記憶は無かった。
多分そう言う事だ。
僕はおじさんとホテルに行き、おじさんと寝てしまった…と言う事だろう。
そんなことあるんだなぁ。
僕はお酒を飲むのを止める決意をした……
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