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44 福音
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「も、もうちょっと待って!」
「ティナ? なぁ、部屋の中から変な気配がするけど大丈夫か? すごい魔力を感じるぞ!」
なに言ってんだよ、カイラーの奴!
まさか私のせいだとでも言うつもりか!?
「なぁ、開けてくれ! ティナ、無事なのか! ティナ!!」
「っっうぅるさぁぁい!! ちょっと待てって、言ってるでしょうがぁ!!」
怒りまかせにテーブルを拳でたたくと、バガァン!と激しい音がして板が割れてしまった。
「えっ、うそ!」
「なんでぇ!? ちゃんと怪力用の指輪してるのに!」
「今の音はなんだ? ルシー嬢、大丈夫なのか!?」
ああもう、面倒くさくなってきた。私は眉なしのままドアをガチャリと開け、二人の少年を部屋に入れる。もう怖がられてもいいや……。どうにでもなれ。
「うっ、うおっ……!? すげぇ殺気だ! ルシー嬢が――ぐえっ!」
「余計なこと言わない!」
なにか要らんこと言おうとしたカイラーにティナが腹パンをくらわせ、一瞬で黙らせた。部屋の中がシンと静まりかえる。俯いた私の視線の先には殿下の靴が見えるけど、怖くて顔を上げられない。
すごい顔だねって言われたらどうしよう。 殿下は私のこと嫌いになる? じわじわと涙が溢れてきて、床にぽたりと水滴が落ちた。
「大丈夫かい? 怪我はしてない?」
頭の上から優しい声がきこえ、私は顔を上げた。
殿下が心配そうな顔で、私と割れたテーブルを見ている。
「っこ、怖く、ない……ですか? 私の顔……」
「全然怖くないよ。初めて会ったときから、怖いと思ったことなんかない」
「は、初めてって……」
「覚えてない? 初めて会ったとき、きみはオカモチとか何とか言ってたよね。あの時から、可愛い女の子だなと思ってたよ」
「殿下……」
もうだめだ。涙腺が決壊し、涙がとめどなく流れる。殿下は泣きじゃくる私をそっと抱きしめ、嬉しくてさらに涙があふれた。ああ私、やっぱりこの人のことが好きなんだなぁ……。
「ルシー、良かったねっ……!」
「よく分からんけど、良かった……のか?」
不可解そうなカイラーを無視して殿下の背中に手を回した瞬間、頭のなかに高らかな鐘の音が響いた。
――リンゴーン、リンゴーン!
なんだこれは。福音のような鐘にあわせて、「おめでとう!」という声まで聞こえる。不思議に思って視線をめぐらせると、殿下と私のまわりを小さな天使が飛んでいるではないか。
「な、なにこれ? 天使がおめでとうって言いながら飛んでる……」
「ああ! 私もゲームで見たよ。好感度が最高レベルまで上がると、天使が出てきて鐘がなるの。思いが通じ合った証拠だよ」
「……ということは、僕たちはめでたく両思いになったんだな。嬉しいよ!」
「ぐふっ」
ぎゅうっと抱きしめられ、変な声が出た。殿下は見た目によらず意外と怪力らしい……私に言われたくないだろうけど。ティナとカイラーが拍手をし始め、部屋の中にぱちぱちという音が響く。
どうしたらいいんだ。私が殿下を攻略しちゃったという事になったのか? 落とし穴を掘る本人が殿下と結ばれた場合、穴はどうなるの。誰が掘るわけ?
頭の整理をしたいのに、ぱちぱちと音が響き、天使は相変わらずくるくる飛んでいる。私は思考を中断し、殿下の胸にもたれてため息をついたのだった。
「ティナ? なぁ、部屋の中から変な気配がするけど大丈夫か? すごい魔力を感じるぞ!」
なに言ってんだよ、カイラーの奴!
まさか私のせいだとでも言うつもりか!?
「なぁ、開けてくれ! ティナ、無事なのか! ティナ!!」
「っっうぅるさぁぁい!! ちょっと待てって、言ってるでしょうがぁ!!」
怒りまかせにテーブルを拳でたたくと、バガァン!と激しい音がして板が割れてしまった。
「えっ、うそ!」
「なんでぇ!? ちゃんと怪力用の指輪してるのに!」
「今の音はなんだ? ルシー嬢、大丈夫なのか!?」
ああもう、面倒くさくなってきた。私は眉なしのままドアをガチャリと開け、二人の少年を部屋に入れる。もう怖がられてもいいや……。どうにでもなれ。
「うっ、うおっ……!? すげぇ殺気だ! ルシー嬢が――ぐえっ!」
「余計なこと言わない!」
なにか要らんこと言おうとしたカイラーにティナが腹パンをくらわせ、一瞬で黙らせた。部屋の中がシンと静まりかえる。俯いた私の視線の先には殿下の靴が見えるけど、怖くて顔を上げられない。
すごい顔だねって言われたらどうしよう。 殿下は私のこと嫌いになる? じわじわと涙が溢れてきて、床にぽたりと水滴が落ちた。
「大丈夫かい? 怪我はしてない?」
頭の上から優しい声がきこえ、私は顔を上げた。
殿下が心配そうな顔で、私と割れたテーブルを見ている。
「っこ、怖く、ない……ですか? 私の顔……」
「全然怖くないよ。初めて会ったときから、怖いと思ったことなんかない」
「は、初めてって……」
「覚えてない? 初めて会ったとき、きみはオカモチとか何とか言ってたよね。あの時から、可愛い女の子だなと思ってたよ」
「殿下……」
もうだめだ。涙腺が決壊し、涙がとめどなく流れる。殿下は泣きじゃくる私をそっと抱きしめ、嬉しくてさらに涙があふれた。ああ私、やっぱりこの人のことが好きなんだなぁ……。
「ルシー、良かったねっ……!」
「よく分からんけど、良かった……のか?」
不可解そうなカイラーを無視して殿下の背中に手を回した瞬間、頭のなかに高らかな鐘の音が響いた。
――リンゴーン、リンゴーン!
なんだこれは。福音のような鐘にあわせて、「おめでとう!」という声まで聞こえる。不思議に思って視線をめぐらせると、殿下と私のまわりを小さな天使が飛んでいるではないか。
「な、なにこれ? 天使がおめでとうって言いながら飛んでる……」
「ああ! 私もゲームで見たよ。好感度が最高レベルまで上がると、天使が出てきて鐘がなるの。思いが通じ合った証拠だよ」
「……ということは、僕たちはめでたく両思いになったんだな。嬉しいよ!」
「ぐふっ」
ぎゅうっと抱きしめられ、変な声が出た。殿下は見た目によらず意外と怪力らしい……私に言われたくないだろうけど。ティナとカイラーが拍手をし始め、部屋の中にぱちぱちという音が響く。
どうしたらいいんだ。私が殿下を攻略しちゃったという事になったのか? 落とし穴を掘る本人が殿下と結ばれた場合、穴はどうなるの。誰が掘るわけ?
頭の整理をしたいのに、ぱちぱちと音が響き、天使は相変わらずくるくる飛んでいる。私は思考を中断し、殿下の胸にもたれてため息をついたのだった。
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