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42 学園祭2
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私は魔法の杖(ティナの)を振り、ふわりと風を起こした――いや、分かっている。風を起こしているのは殿下だ。しかし杖を動かすたびに風に乗って紙吹雪が舞うので、非常に気分が良かった。ああ私、今だけは魔法使いになってるわ!
紙吹雪に乗って舞台袖から黒子が現れ、大きな布でアシェンタを隠した。布を持った黒子は通りすぎるように一瞬で舞台袖に引っ込んでしまったが、アシェンタの衣装はちゃんとドレスに変わっている。息を飲むような早業に、観客席から拍手が起こった。頑張って練習した甲斐があったなぁ……。
「おばあさん、ありがとう」
「必ず12時までに帰るんだよ。魔法が解けてしまうからね」
お姫様に変身したアシェンタを見送り、私は舞台袖に戻った。これで出番は終わりである。魔法使いのマントを脱いで観客席に戻ると、端のほうに殿下が座っていた。彼の隣はひとつ空いていて、私に焼け付くような熱い視線を送ってくる。
わ、分かりましたよ。そこに座りますよ。
「ありがとうございました。お陰でうまく行きました」
「うん。お役に立てて良かったよ」
ふたり並んで座っていたら、なんだか故郷の父と母を思い出してしまった。お父さまとお母さまも、いつも当然のように並んで座ってたっけ。私はどうしたいんだろう。殿下とも、父と母のようになりたいんだろうか……。
舞台では王子さまの衣装を着たカイラーと、お姫さまになったティナが仲良く踊っている。お似合いの二人だ。まるでマンガに出てくるような、正統派ヒーローとヒロインという感じ。
もう何度も読んで飽きた話のはずなのに、劇を見てたら感動して、終わりには泣きながら拍手を送ってしまった。講堂内は割れるような拍手で包まれ、劇は大成功のうちに終わった。
外部のお客さんが帰ったあとは後夜祭だ。私たちは劇の関係者たちも呼んでカキ氷パーティーを開いた。人数が多いから果肉は小さくなってしまったけど、みんな喜んで食べてくれる。
「これも日本という国の食べ物なのかい?」
「ええ。夏になるとお店で売られてるんです。日本では抹茶味とか、メロン味なんてのもありましたけど」
「俺、レモンが好きだな。さっぱりしててうまい!」
「わたしは苺と練乳が好き~」
外に置かれたベンチで喋りながら食べていると、本当に高校生の頃に戻ったみたいだった。ふと周囲を見渡すと、なぜか男女のペアが多い。この世界でも、学校行事って告白のチャンスなんだな。
調理部のメンバーたちも、数人の男子と楽しそうにお喋りしている。みんなちゃんと婚約者のことを考えているのだ。そうよね、在学中に婚約者を見つけないといけないんだもんね。
「あ、イルミネーションだ」
「えっ?」
ティナの言葉に顔をあげると、確かに街路樹にイルミネーションが光っている。そんなアホな、電気がない世界なのに。
「サイモンが王宮魔法院と開発したみたいだよ。魔法院では、魔石という魔力を貯めておける石を研究中らしい。サイモンは魔力を流すと光る石をつなげて、木に飾ったのだと言ってたよ」
「へえ~。綺麗ですねぇ」
「おまえらが暮らす日本って国も、ああいうピカピカ光る石があるんだろ? そのうちこの国も、日本みたいに豊かになるのかもな」
「そうかもね……」
そうか、魔力は電気やガスの代わりになるのだ。まだ国中に供給できるレベルではないけど、カイラーが言うようにいつか日本のように豊かになる日が来るのかもしれない。
馬車が走る世界に、キラキラと光るイルミネーション。ちょっと変な感じもするけど、ロウソクに頼らずに暗闇を照らせるのはとてもいい。サイモンは変だけどやっぱり天才なのだ。クラリッサと幸せになるように祈ってあげよう。
ロマンチックな余韻を残したまま後夜祭が終わった。忙しかったけどかなりの売り上げになったし、学園祭はとても楽しかった。
紙吹雪に乗って舞台袖から黒子が現れ、大きな布でアシェンタを隠した。布を持った黒子は通りすぎるように一瞬で舞台袖に引っ込んでしまったが、アシェンタの衣装はちゃんとドレスに変わっている。息を飲むような早業に、観客席から拍手が起こった。頑張って練習した甲斐があったなぁ……。
「おばあさん、ありがとう」
「必ず12時までに帰るんだよ。魔法が解けてしまうからね」
お姫様に変身したアシェンタを見送り、私は舞台袖に戻った。これで出番は終わりである。魔法使いのマントを脱いで観客席に戻ると、端のほうに殿下が座っていた。彼の隣はひとつ空いていて、私に焼け付くような熱い視線を送ってくる。
わ、分かりましたよ。そこに座りますよ。
「ありがとうございました。お陰でうまく行きました」
「うん。お役に立てて良かったよ」
ふたり並んで座っていたら、なんだか故郷の父と母を思い出してしまった。お父さまとお母さまも、いつも当然のように並んで座ってたっけ。私はどうしたいんだろう。殿下とも、父と母のようになりたいんだろうか……。
舞台では王子さまの衣装を着たカイラーと、お姫さまになったティナが仲良く踊っている。お似合いの二人だ。まるでマンガに出てくるような、正統派ヒーローとヒロインという感じ。
もう何度も読んで飽きた話のはずなのに、劇を見てたら感動して、終わりには泣きながら拍手を送ってしまった。講堂内は割れるような拍手で包まれ、劇は大成功のうちに終わった。
外部のお客さんが帰ったあとは後夜祭だ。私たちは劇の関係者たちも呼んでカキ氷パーティーを開いた。人数が多いから果肉は小さくなってしまったけど、みんな喜んで食べてくれる。
「これも日本という国の食べ物なのかい?」
「ええ。夏になるとお店で売られてるんです。日本では抹茶味とか、メロン味なんてのもありましたけど」
「俺、レモンが好きだな。さっぱりしててうまい!」
「わたしは苺と練乳が好き~」
外に置かれたベンチで喋りながら食べていると、本当に高校生の頃に戻ったみたいだった。ふと周囲を見渡すと、なぜか男女のペアが多い。この世界でも、学校行事って告白のチャンスなんだな。
調理部のメンバーたちも、数人の男子と楽しそうにお喋りしている。みんなちゃんと婚約者のことを考えているのだ。そうよね、在学中に婚約者を見つけないといけないんだもんね。
「あ、イルミネーションだ」
「えっ?」
ティナの言葉に顔をあげると、確かに街路樹にイルミネーションが光っている。そんなアホな、電気がない世界なのに。
「サイモンが王宮魔法院と開発したみたいだよ。魔法院では、魔石という魔力を貯めておける石を研究中らしい。サイモンは魔力を流すと光る石をつなげて、木に飾ったのだと言ってたよ」
「へえ~。綺麗ですねぇ」
「おまえらが暮らす日本って国も、ああいうピカピカ光る石があるんだろ? そのうちこの国も、日本みたいに豊かになるのかもな」
「そうかもね……」
そうか、魔力は電気やガスの代わりになるのだ。まだ国中に供給できるレベルではないけど、カイラーが言うようにいつか日本のように豊かになる日が来るのかもしれない。
馬車が走る世界に、キラキラと光るイルミネーション。ちょっと変な感じもするけど、ロウソクに頼らずに暗闇を照らせるのはとてもいい。サイモンは変だけどやっぱり天才なのだ。クラリッサと幸せになるように祈ってあげよう。
ロマンチックな余韻を残したまま後夜祭が終わった。忙しかったけどかなりの売り上げになったし、学園祭はとても楽しかった。
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