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 柔らかな感触と、熱い吐息。なんどか重ねられた唇は頬へすべり、耳の下や首、鎖骨のあたりに吸い付いた。腹部に硬くなったモノを押し当てられる。

「……相変わらず元気ですね」

「しょうがないだろ、四ヶ月もご無沙汰だったんだ。おまえの事を考えながら、自分で慰めたりもしたが……やっぱり本物には敵わないな。少し触ってもいいか?」

「あっ……!」

 骨ばった手がドレスの胸元を引っ張り、白い乳房がふるんと露出する。ルルシェは慌てて周囲を見渡した。誰か来ると言えたらいいのに、驚くほど人がいない。まさか人払いでもしてあるんだろうか。

「ひんっ……! あ、だめ、強くしないで……!」

 壁に背を押し付けられたまま、むき出しになった乳房に熱い舌が這う。先端を痛いほど吸われて体を仰け反らせた。イグニスは男の唾液で濡れた紅色の尖りを見下ろしながら、円を描くように大きな乳房を揉んでいる。

「いやらしいな。まるで苺みたいに赤くなって……俺を誘ってるみたいだ」

「誘ってない……! 赤くなったのは、あなたが触るから……!」

「そうだな。おまえの体がいやらしくなったのは、俺のせいだった」

 責めているのに、何故かやたらと嬉しそうだ。片方の手で乳房を弄び、もう片方の手をドレスの下に潜り込ませてくる。
 下着の上から蜜芯を爪でカリカリと擦られ、全身がびくんと大きく跳ねた。悲鳴を上げずにすんだのは奇跡に近い。

「っひぅ、ん……! そこ、だめっ……! 声が出ちゃう……!」

 イグニスの腕を大人しくさせようと手で押してみても、びくともしない。ルルシェの抵抗を物ともせず、下着の横から指先が蜜口につぷんと沈んだ。

「ああ、もうトロトロだ。すごく熱くなってる」

 低い囁きと一緒に男の情欲を孕んだ熱っぽい吐息が耳孔に忍び込み、ルルシェは無意識にイグニスの背に腕を回した。腰が砕けてしまいそうだった。

 指が二本に増えて、ちゅぷちゅぷと音を立てながら膣を出入りしている。もっと強い刺激が欲しい。このままじゃ達けない。

 体はイグニスから与えられる快楽をまだ覚えていて、じりじりとルルシェを追い詰めていく。もどかしさに身を震わせ、自分を嬲る男を見上げた。

「も、もっと……」

「もっと?」

 暗紅色の瞳が劣情と嗜虐心でゆらゆらと燃えている。こんなことを言えば、イグニスは嬉々として行為をエスカレートさせるだろう。それが分かっていても、体の衝動を止められない。

「もっと、奥まで……入れて……」

「指だと奥まで届かない。どうする? 俺のこれを挿れてもいいか?」

 イグニスはルルシェの手を取り、下穿きを盛り上げている雄根を握らせた。手で触れた瞬間、生き物のようにびくんと跳ねる。
 これがいい。これじゃないと、奥まで届かない。

「いい、の……。お腹の奥が切なくて、苦しいから……きて…………」

 潤んだ目で見つめると、イグニスはぐっと口を引き結んで何かに耐えるような顔をした。ルルシェの腕を掴んで後ろを向かせ、壁に手をつく姿勢を取らせる。

「ったく、無意識に俺を煽りやがって……。まさか他の男とも、こんな事してるんじゃないだろうな」

 小声でぶつくさ呟き、ルルシェの腰をぐいと引く。自然とイグニスに向かって尻を突き出す格好になり、ルルシェは目を閉じて羞恥に耐えた。

 ドレスが捲くられて肌にひやりと外気が触れるが、寒いのは腰だけで、脚の間はぐずぐずと煮え立つように熱い。早く何とかしてほしい。

 武骨な手が下着の紐を片方だけ解き、柔らかな尻朶を掴んで左右に割り開いた。露になった蜜口に膨らんだ雁首がぴたりと押し当てられる。待ち望んだものに、ルルシェはぶるりと腰を震わせた。

「大きな声を出すなよ」

「っひ――……!!」

 男の体重を乗せた怒張が、最奥まで一気に埋め込まれる。ほとんど痛みはなかった。下腹部からじぃんと痺れるような快感が全身へ広がっていく。

「あ、あう……は、くぅ……」

「はぁッ、熱い……溶けてしまいそうだ」

 イグニスがゆっくりと腰を引き、ずにゅうーっと怒張を取り出す。蜜孔を擦られる快感にルルシェが身震いすると、また一気に根元まで埋め込まれた。女陰と男の腰がぶつかり、ばちゅっ、ばちゅっと淫らな音が響いている。

(あ……外で、こんな音……恥ずかしい……)

 とんでもなく恥ずかしいのに、頭の芯が溶けたようにぼうっとする。快感だけが全身を支配し、他のことは考えられない。
 ルルシェは片手を口元に当て、懸命に嬌声を抑えた。

「んっ、あふぅっ……! んン、はァンっ、んうぅっ……!」

 埋め込まれた雄根がさらに大きく膨らみ、下りてきた子宮を先端でがつがつと押し潰す。耳元でイグニスが低く呻き、体内から熱いものがずるりと出て行った。

「っ、んあぁ……!」

 汗に濡れた双丘に欲望を叩きつけられる。青臭い香りが鼻先をかすめ、尻から太ももにとろりと白濁が垂れた。

「ちょっと待て、拭いてやるから……」

 服を整えたイグニスがルルシェの体を拭き、足腰から力が抜けた彼女を抱き上げて西棟へ運ぶ。誰かに見られるのではと冷や冷やしたが、もう夜も遅いためかひと気はなかった。

「ここがおまえの部屋か。予想通り、質素だな」

 呟いて、検分するように部屋の中をジロジロ観察している。ルルシェが疲れて寝台に横になっていると、床に膝をついてじぃっと見つめてきた。何か言いたげに。

「……何ですか?」

「念のために訊いておくが……。今夜したような事を、他の男とやったりしてないよな?」

「すっ、するわけないでしょ!」

 思わずカッとなって叫ぶと、イグニスは安堵したように微笑んだ。なにを考えているんだろう。誰にでも体を許す女だと思われるのは心外だ。

(心外、だけど……。どうしてそんな風に思うのか、自分でもよく分からない)

 私はこの人が好きなんだろうか。
 悶々と考えていたらキスをされて、イグニスはおやすみと呟いて部屋から出て行った。

 国王が西棟にいるなんて前代未聞で、誰にも見つかりませんようにと祈ってしまった。ただ、下働きの者たちは普段国王を見たりしないので、出会っても誰だか分からないかもしれない。見慣れない美青年がいる、という認識なのではないだろうか。

 疲れた体に鞭打って何とか湯浴みを終えると、鏡に映った首や鎖骨に赤い跡がついていた。あの国王め、本気で吸いつくのはやめてよね……ルルシェはぶつくさ言いながら、長い一日を終えたのだった。
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