キュートなSF、悪魔な親友

月那

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キュートなSF、悪魔な親友

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 朝、田村が起きだして、
「俺、打合せあるから行くけど、かぐゆっくり寝てていいよ」
とだけ言ってキスをした。
という記憶だけは朧げにあるが、鹿倉が目を覚ましたのは昼前だった。
昨夜の宣言通り鹿倉を「抱き潰した」田村が、すっきりと朝から元気に出勤して行ったが、潰された鹿倉はシーツの中でぐったりと惰眠を貪ることしかできなくて。
それまでの連勤に次ぐ連勤の、トドメを刺すような昨夜の田村との行為のせいで、体がただただ怠い。鹿倉は裸のままゆっくりと体を起こすと、バスルームへと向かった。
シャワーで昨夜の名残を流す。
ふと鏡を見ると、あちこちに赤いキスマークが点在していて。
「……ばっかじゃねーの」
 首筋という一番他人の目に触れそうな場所こそ避けていたようだが、何の遠慮もなく吸い付いた田村の跡が艶めかしくて。
 鹿倉は苦笑するとシャワーを止めた。
 田村の下着、田村のスウェットを着込むと台所へ向かう。
 廊下に昨夜脱ぎ捨てたはずの鹿倉のスーツはきちんと寝室に掛かっていたし、どうやらカッターシャツなどは洗濯機で回っている様子。
「マメだねえ」
 おまけに、キッチンには鹿倉の為のブランチが用意されていて。
「ほんと、デキた嫁だな」
 くふくふと笑うとスマホを片手に用意されていたサンドイッチを食べる。鹿倉の好きなたまごサンド。コーヒーは水筒に保温されていて。
「愛されてんなー、俺」
 とりあえず、ラインでごちそうさま、というスタンプだけ田村に送っておいた。
 お皿と水筒をシンクに置くと、足元に擦り寄って来たソラを抱き上げた。
「ソラちゃん? 俺のこと忘れてないよね?」
 誰にでも愛想を振りまくソラだから、大人しく抱かれているのが鹿倉だからなのか誰でもいいのかわからない。
 自分と、似てるんだろな。なんてほんの少し思いながら。
 顎をぐりぐりと撫で、そのまま寝室の向かい側にある部屋に入る。
 ここは、田村の趣味の部屋。
 壁に大きな本棚があり、田村お気に入りのマンガが並べられている。そしてヨガマットやヨガ棒、大きなバランスボールが床に置いてあって、片隅の棚にはちょっとしたダンベルや縄跳びなどが収納されていて。
 ジムだけじゃなく、こうやって自宅で筋トレするのも好きだから、田村の腹筋は常にバキバキに割れているし体脂肪率も恐らく一桁なんだろう。
 当然ながら筋トレには全く興味のない鹿倉は本棚を探る。
 と。
 一番下の段に隠すように置いてあるグラビア誌を手に取った。
「おお。凄い、おっぱいデカいねえ」
 ソラをそっと下ろして、ぺらぺらと捲る。
 女性の裸を、美しいものだとは思うけれども性的な目で見れない鹿倉だから。巨乳な女の子が大股を広げて煽っている姿や、誘うような目でぷるぷるの唇に指を宛てているグラビアも、ただの“雑誌”でしかない。
 ただ、田村の好みの女の子は、なんとなくわかる。
 細くて、おっぱいよりはお尻が綺麗な女の子。目は大きくて童顔で、田村の腕の中でちっちゃく収まってくれるようなコ。
 鹿倉の持つ過去データから、グラビアを捲っていくとコレという女の子を発見。
「このページ、破って捨てたら泣くだろーなー」
 ちょっと悪い顔でくふっと笑って。
 そのまま閉じて、鹿倉の好きなマンガを数冊取り出すとそこに突っ込んだ。
 マンガを持ってリビングへと戻る。
 クリーニングから返ってきたラグの上にころんと横になると、マンガを読み始めた。
 
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