dawn

月那

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「圭」
 力の込められた手に握られた達也が、痛い、と言った。
「ごめん」
 謝る。

 けれど、放せない。
 放したくない。
 一緒にいたいのだ。
 願わくば、これから先の一生を達也と二人で歩んで行きたい。

「ごめん、達也」
 俺は夢中で達也を抱きしめていた。
 この雪と一緒に達也までもが融けていってしまいそうで。

「どうしたの?」
 そんな俺を、達也は不思議そうに見つめる。

 きっと、俺の心の中の醜い独占欲になんて気付いていないのだろう。
 いずれ時が来て、俺の元を去りたいと願った時。
 達也はきっと俺がすんなりとそれを許すだろうと信じているのだ。

 いや、勿論今この時点でそんなことを考えているわけなどないことはわかる。
 けれど、実際その時が来ることはわかっていることだ。
 達也の将来と俺の将来が交わることなど決してないのだから。

 けれど、俺は願ってしまう。
 総ての障害を取り去り、何もかもを乗り越えて達也と共に歩ける未来があって欲しいと。
 いつまでも、いつまでも。
 この夢のように温かい時間がずっとずっと流れることを、願ってしまうのだ。

「圭。寒い? オレが毛布取っちゃってるし」
「……いや、大丈夫だよ」

 悲痛な表情をしていたのだろう。
 俺を心配そうに見上げて達也が言ってくれる。
 俺はそんな達也をもう一度抱きしめた。
 すると、嬉しそうに笑ってくれる。

「なんか、いいね、こういうの。ぎゅうってされてると、なんかあったかいし、幸せだ」
 少し、眠いのだろう。
 言葉がぽやんとしている。
 そんな達也に、俺は口唇を重ねた。

 好きだ。
 大好きだ。
 そう、思う。何もかも、達也総てが好きだと思う。
 誰にも止められない。
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