dawn

月那

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 完全に事なかれ主義である達也には辛い選択だっただろう。

 しっかり者の姉を持った俺は親からはとうに見離されているので、どこで何をしようとも口出しなどされない。
 こうして都会に出て大学に通っているのも、全く実家に帰らないで一人暮らしをしているのも総て自力だから、当然と言えば当然ではあるが。

「もうすぐ、かな?」
 達也の声。
 愛しいそれは、ぼんやりと考え事をしていた俺を現実へと引き戻した。
「雪のせいでわからないな」
 答えると達也は、そうだね、と返した。

 除夜の鐘を聴きながら俺達は何度も何度も繋がっていた。
 誰にも邪魔されず、ただただ二人の世界に流れるBGMは遠くの寺から聴こえてて来る鐘の音のみで、煩悩を消すためのそれにも関わらず、俺は達也の身体を貪るという限りない欲望を満たしながら、煩悩の塊になってそれを味わっていた。

 男の身体だから柔らかいとは決して言えないが、それでも達也のそれは俺には十分に柔らかい。
 少し冷たい臀部の柔らかな肉を掌で弄るときの何とも言えない満足感は、俺が今まで味わってきたどの男のそれよりも柔らかく、美しいと思う。

 飽くことなくそれを貪る俺に達也は決して逆らわない。
 そうして何度も何度も舐めまわし、漸く繋がってゆっくりと抱きしめた瞬間、カチリと時計の針の動く音がして年が明けた。
 繋がったまま、達也は苦しげだけれども快感に満ち満ちた声で"あけましておめでとう"と言ったのが、今もまだ耳に残っている。

 俺が我侭ついでに「これからもずっとずっと、毎年こうやって年を越したい」と言うと、達也は笑いながら、できるだけ叶えるね、と答えてくれた。
 その幸福な返事は、たとえそれがその場しのぎの嘘だとわかっていても、これから先の自分には何より大きなお守りになると思った。
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