dawn

月那

文字の大きさ
上 下
1 / 5

-1-

しおりを挟む
「雪」
 達也たつやが一言呟いた。

 暖房をしっかりと効かせた俺の部屋で、達也は毛布から顔を出している。
 胡座あぐらをかいた俺の足の間にちょこんと座る恋人を、背中から抱きしめて。
 だんだんと白んでいく空を眺めている彼の素肌はいつものように少し冷たい。
 体温が俺より低いのだ。
 夜明けのこの時間は、どれだけ暖房を効かせていてもやはり少し寒いのだろう。
 少し震えたように思えたので、俺は達也を抱く腕の力を少し強めた。

 と、どうかしたのか、と丸い目をより大きくして俺を振り返った。
「寒いんじゃないのか?」
「平気。けい、あったかいし」
 もそもそと毛布の中に顔を半分埋め、俺に寄りかかる。
 確かに平熱が三十七度近い俺は達也にしてみれば大きなカイロみたいなものだろう。
 裸で触れているからその熱もしっかりと伝わっているらしく、俺が触れている部分は少しずつ暖かくなっているのがわかった。

 箱入り息子の達也を、年末年始、俺のマンションに無理矢理引きとめたのは、一年前に叶わなかった"年越しえっち"なんぞをやりたかったからで。
 ガッコが冬休みに入ってからずっとこの部屋に入り浸ってくれていた達也だけれど、さすがに押し詰まってきた一昨日辺りから達也の両親から何度も実家へと呼び戻す電話が入っていたのは俺も気付いていた。
 なんだかんだとはぐらかしていたようだが、親に逆らえるヤツじゃないことはよく知っている。
 きっと心苦しいのだろう、時折俺に気付かれないように溜息を吐いていた。
 それでも俺の我侭をきいてくれようとしているのがわかったので、俺も少し辛かった。

「眠らないでも大丈夫か?」
 顎の辺りにある達也の頭頂部。
 その頭が黙ったまま頷いた。

 総て俺の我侭に過ぎない。
 ストレートの達也を根っからのゲイである俺に振り向かせたのも、年を越す間ずっと一緒にいたいと言って郷里に帰らせなかったのも、初日の出を一緒に観たいから夜明けまでずっと起きていようと言ったのも。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ド天然アルファの執着はちょっとおかしい

のは
BL
一嶌はそれまで、オメガに興味が持てなかった。彼らには托卵の習慣があり、いつでも男を探しているからだ。だが澄也と名乗るオメガに出会い一嶌は恋に落ちた。その瞬間から一嶌の暴走が始まる。 【アルファ→なんかエリート。ベータ→一般人。オメガ→男女問わず子供産む(この世界では産卵)くらいのゆるいオメガバースなので優しい気持ちで読んでください】

大学生はバックヤードで

リリーブルー
BL
大学生がクラブのバックヤードにつれこまれ初体験にあえぐ。

カテーテルの使い方

真城詩
BL
短編読みきりです。

君のことなんてもう知らない

ぽぽ
BL
早乙女琥珀は幼馴染の佐伯慶也に毎日のように告白しては振られてしまう。 告白をOKする素振りも見せず、軽く琥珀をあしらう慶也に憤りを覚えていた。 だがある日、琥珀は記憶喪失になってしまい、慶也の記憶を失ってしまう。 今まで自分のことをあしらってきた慶也のことを忘れて、他の人と恋を始めようとするが… 「お前なんて知らないから」

冴えないおじさんが雌になっちゃうお話。

丸井まー(旧:まー)
BL
馴染みの居酒屋で冴えないおじさんが雌オチしちゃうお話。 イケメン青年×オッサン。 リクエストをくださった棗様に捧げます! 【リクエスト】冴えないおじさんリーマンの雌オチ。 楽しいリクエストをありがとうございました! ※ムーンライトノベルズさんでも公開しております。

十七歳の心模様

須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない… ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん 柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、 葵は初めての恋に溺れていた。 付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。 告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、 その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。 ※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

総受けルート確定のBLゲーの主人公に転生してしまったんだけど、ここからソロエンドを迎えるにはどうすればいい?

寺一(テライチ)
BL
──妹よ。にいちゃんは、これから五人の男に抱かれるかもしれません。 ユズイはシスコン気味なことを除けばごくふつうの男子高校生。 ある日、熱をだした妹にかわって彼女が予約したゲームを店まで取りにいくことに。 その帰り道、ユズイは階段から足を踏みはずして命を落としてしまう。 そこに現れた女神さまは「あなたはこんなにはやく死ぬはずではなかった、お詫びに好きな条件で転生させてあげます」と言う。 それに「チート転生がしてみたい」と答えるユズイ。 女神さまは喜んで願いを叶えてくれた……ただしBLゲーの世界で。 BLゲーでのチート。それはとにかく攻略対象の好感度がバグレベルで上がっていくということ。 このままではなにもしなくても総受けルートが確定してしまう! 男にモテても仕方ないとユズイはソロエンドを目指すが、チートを望んだ代償は大きくて……!? 溺愛&執着されまくりの学園ラブコメです。

処理中です...