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消えない想い
消えない想い -4-
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確かに。そんな先入観は持っていた。
高校時代、華の成瀬、艶の篠田、無邪気の入江という、男子の中でも高嶺の花だった三人である。
「でもさ。違うんだよ。成瀬は結構一途なタイプで、ルカのこと入学してからずっと好きだったらしくて。ほら、入江……えっと、妹の方のリコだっけ? あいつが女バスだったろ? で、結構そっから情報仕入れて頑張ってルカに近付こうとしてたらしい」
入江、そう言えば双子だっけ。深月と一緒のグループにいたのは入江那湖で、姉の方だった。確か、双子の割にあまり似てない妹の莉湖は女子バスケの副キャプテンをやっていたハズで。男子バスケの副キャプだった坂本はリコとよく話をしていた覚えがある。
「あの三人はさ、華やかな見た目と中身のギャップが激しいらしくて、結構それでつるんでることが多いみたいだよ」
「そっか。女子のそういう話には全然興味がなかったから気付かなかった」
そして。自分は気付かなかったけれど、坂本はちゃんとそれを理解してやったのだろう。
人懐こい性格の坂本は、ひとの気持ちにすぐに寄り添ってやれる奴だから。
篠田がちゃんと“人を見る目”をもって坂本を選んだということが、素直に嬉しいと思う。
「だからさ。成瀬がまたルカに会えて、それからどんどんまた好きになって行ったって気持ちは、わかるんだよ、俺は」
「…………」
「で。頑張って告って、成瀬はまたフられたわけだよ」
「またって」
「成瀬的には高校の時のもフられてるとしか思ってないから」
「…………」
「だから、泣いてたんだよ。泣くしかなかったんだよ」
泣きながら、深月が篠田に伝えたのだろう。そして、そのまま坂本にも。
「でも俺、まだ忘れられないから」
「だから! それだよ。もう、成瀬とヨリを戻せとは言わないけどさ、いい加減それも忘れろっての」
「そんなに簡単に言うなよ」
「言うさ。だって、相手にされるわけないだろ? あんな美女。しかもどえらい年上なんて」
きっぱりはっきり言われて、ルカはまた心が痛む。
「俺もさ。ずっと、好きな人、いたよ? 話したろ?」
「うん」
「でもさ。もう結婚して、完全に相手にされないってわかって、それでも想い続けるなんて、無理なんだよ」
「…………」
「いや、無理とかじゃないな。相手にとって迷惑だよ」
迷惑!
坂本に言われて、かなりの衝撃が走った。
「そうだろ? しかもお前の場合、ちゃんとお前から告ってはっきりフられてんだろ? したらさ、そのままずっと追いかけるのって、半分ストーカーだぜ?」
「そんな! 俺は迷惑かけるようなこと、何もしてない!」
会ってない! 会いたいって言ってもない!
「してなくても。いや、今はまだしてないかもしれないけど、このままずっとグダグダやってて、お前どーするつもりなのさ?」
「……どーも、しないし」
「永久片想い、続けんのかよ?」
「……うん」
想う、だけ。
ただ、好きな、だけ。
それでも、ダメなのかな?
「マジでゆってる?」
「……うん」
頷いたルカに、坂本は大きくため息を吐いて。もう、手には負えない、とでも言うようにコーラを飲み干した。
「しょーが、ないんだよ」
「何が?」
「だって。彼女が言ったんだ。俺の傍にいるって。成長を見守らせてって」
何故なら、母だから。
ゆかりにとっての自分は“息子”だから。
「…………」
「だから。いいんだ。俺は彼女の息子だから。もう、それ以外の何物でもないから」
呟くような、ぼやくような。
ルカのその力のこもらない言葉に、坂本は黙って頷いた。
「わかったよ」
「え?」
「もう、どーしよーもないからなー。お前、実はすっげー頑固なの、知ってるし」
「え? 俺って頑固かな?」
「頑固だよ。こう、と決めたら絶対譲らねーし。タクマ先輩の最後の試合だってさ、自分で絶対スリーポイント決めるっつって、絶対譲らなくて」
「あれはだって。俺しか決めれる奴いなかったし」
「ほら! そこだよ! あの時お前まだ二年だったじゃん。三年に回せってみんな言ってるのに、ぜーったい譲らないから」
「…………でも、決めたし」
「はいはい、あん時はお前がちゃんと決めたよ。お前の頑固にみんなが負けたけど、最終的にお前の頑固のお蔭で勝てたんだから」
懐かしい試合の話。
でも、そんな話に坂本が持って行ってくれたから。
もう、ゆかりのことはルカが好きなだけ“好き”でいればいい、と言ってくれているようで。
「しょーがない、お前が燃え尽きて灰になるまで見守っててやるよ。俺しかいねーもんな」
にやり、と笑った坂本が、嬉しくて。
もう、先のことは何も見えないけれど、この気持ちがちゃんと昇華されるまで、ただただ、黙って想い続けようと、ルカは心に決めた。
高校時代、華の成瀬、艶の篠田、無邪気の入江という、男子の中でも高嶺の花だった三人である。
「でもさ。違うんだよ。成瀬は結構一途なタイプで、ルカのこと入学してからずっと好きだったらしくて。ほら、入江……えっと、妹の方のリコだっけ? あいつが女バスだったろ? で、結構そっから情報仕入れて頑張ってルカに近付こうとしてたらしい」
入江、そう言えば双子だっけ。深月と一緒のグループにいたのは入江那湖で、姉の方だった。確か、双子の割にあまり似てない妹の莉湖は女子バスケの副キャプテンをやっていたハズで。男子バスケの副キャプだった坂本はリコとよく話をしていた覚えがある。
「あの三人はさ、華やかな見た目と中身のギャップが激しいらしくて、結構それでつるんでることが多いみたいだよ」
「そっか。女子のそういう話には全然興味がなかったから気付かなかった」
そして。自分は気付かなかったけれど、坂本はちゃんとそれを理解してやったのだろう。
人懐こい性格の坂本は、ひとの気持ちにすぐに寄り添ってやれる奴だから。
篠田がちゃんと“人を見る目”をもって坂本を選んだということが、素直に嬉しいと思う。
「だからさ。成瀬がまたルカに会えて、それからどんどんまた好きになって行ったって気持ちは、わかるんだよ、俺は」
「…………」
「で。頑張って告って、成瀬はまたフられたわけだよ」
「またって」
「成瀬的には高校の時のもフられてるとしか思ってないから」
「…………」
「だから、泣いてたんだよ。泣くしかなかったんだよ」
泣きながら、深月が篠田に伝えたのだろう。そして、そのまま坂本にも。
「でも俺、まだ忘れられないから」
「だから! それだよ。もう、成瀬とヨリを戻せとは言わないけどさ、いい加減それも忘れろっての」
「そんなに簡単に言うなよ」
「言うさ。だって、相手にされるわけないだろ? あんな美女。しかもどえらい年上なんて」
きっぱりはっきり言われて、ルカはまた心が痛む。
「俺もさ。ずっと、好きな人、いたよ? 話したろ?」
「うん」
「でもさ。もう結婚して、完全に相手にされないってわかって、それでも想い続けるなんて、無理なんだよ」
「…………」
「いや、無理とかじゃないな。相手にとって迷惑だよ」
迷惑!
坂本に言われて、かなりの衝撃が走った。
「そうだろ? しかもお前の場合、ちゃんとお前から告ってはっきりフられてんだろ? したらさ、そのままずっと追いかけるのって、半分ストーカーだぜ?」
「そんな! 俺は迷惑かけるようなこと、何もしてない!」
会ってない! 会いたいって言ってもない!
「してなくても。いや、今はまだしてないかもしれないけど、このままずっとグダグダやってて、お前どーするつもりなのさ?」
「……どーも、しないし」
「永久片想い、続けんのかよ?」
「……うん」
想う、だけ。
ただ、好きな、だけ。
それでも、ダメなのかな?
「マジでゆってる?」
「……うん」
頷いたルカに、坂本は大きくため息を吐いて。もう、手には負えない、とでも言うようにコーラを飲み干した。
「しょーが、ないんだよ」
「何が?」
「だって。彼女が言ったんだ。俺の傍にいるって。成長を見守らせてって」
何故なら、母だから。
ゆかりにとっての自分は“息子”だから。
「…………」
「だから。いいんだ。俺は彼女の息子だから。もう、それ以外の何物でもないから」
呟くような、ぼやくような。
ルカのその力のこもらない言葉に、坂本は黙って頷いた。
「わかったよ」
「え?」
「もう、どーしよーもないからなー。お前、実はすっげー頑固なの、知ってるし」
「え? 俺って頑固かな?」
「頑固だよ。こう、と決めたら絶対譲らねーし。タクマ先輩の最後の試合だってさ、自分で絶対スリーポイント決めるっつって、絶対譲らなくて」
「あれはだって。俺しか決めれる奴いなかったし」
「ほら! そこだよ! あの時お前まだ二年だったじゃん。三年に回せってみんな言ってるのに、ぜーったい譲らないから」
「…………でも、決めたし」
「はいはい、あん時はお前がちゃんと決めたよ。お前の頑固にみんなが負けたけど、最終的にお前の頑固のお蔭で勝てたんだから」
懐かしい試合の話。
でも、そんな話に坂本が持って行ってくれたから。
もう、ゆかりのことはルカが好きなだけ“好き”でいればいい、と言ってくれているようで。
「しょーがない、お前が燃え尽きて灰になるまで見守っててやるよ。俺しかいねーもんな」
にやり、と笑った坂本が、嬉しくて。
もう、先のことは何も見えないけれど、この気持ちがちゃんと昇華されるまで、ただただ、黙って想い続けようと、ルカは心に決めた。
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