10 / 101
【1】Rose quartz
10
しおりを挟む
決行の日は以前から翔がきっちり決めていた。
それは翔の弟妹の親子遠足の日。
楠本家は両親共働きで、幼い弟妹は土曜日も保育園がある。
が、チビ達はいなくても父はともかく母は“この日だけは私の休日”と、趣味の料理や溜まった家事の処理などで、殆ど自宅を出ることはなく。
翔も、基本的に隔週で土曜日も通常登校、生徒会その他部活動は毎週土曜日も通常登校になっているし、一人で自宅にいられるなんて日は滅多にない。
そんな状況の中、その日は以前から両親揃って二人にくっついてバス旅行に出かけるという話をしていて。
しかも。なんと翔までも一日休日で。
自分のベッドで思いっきり成親を抱く!
という、予てからの目標をいざ実行する為に、こんなに好都合な日はない、というもの。
だから。
何度も成親には“この日だけは絶対!”と予定を入れさせなかったし、前日から鼻息を荒くしてその日を待ちわびていたのだ。
「しょーさん、怖い」
ラインで“今から行きます”と成親からメッセージが入った瞬間から、玄関で待機していた翔は、扉が閉まると同時にその愛しい体を抱きしめていて。
せめて靴を脱がせて、と翔の腕を振りほどいた成親が、くふくふと笑いながら言った。
「もお、俺帰ろっかな」
「なんで!」
間髪入れず、翔が成親の腕を掴む。
「だってさー、目、血走ってるよ? やる気満々過ぎて、引くわー」
「えー……そんな、か?」
「そんなです」
やっと翔の腕の中から逃れた成親が、勝手知ったるといった足取りでリビングへと向かう。
「そっちじゃなくて、部屋、行こ」
「行かない」
食い気味に断られ、翔が眉を顰めた。
「いいから、しょーさんちょっと、落ち着こ?」
「…………」
「わかってるし。しょーさんがナニしたいのかも、ちゃーんとわかってるってば」
成親も当然、そのつもりでいるのは確かだけど。
リビングのソファに座る。
ここに遊びに来た時は、いつもこの大きなソファにゴロンと横になり、小さい陸や羽美を抱っこして遊んでやる。
自分には姉しかいないから、小さい子供が可愛くて仕方ないのだ。
勿論双子のおチビ達も、成親が大好きで。
いつだって成親がここに来た時は、二人がよってたかってじゃれてくる。
でも、今日は一人。
手持ち無沙汰にスマホを取り出した。
「ちょっと待て。なる、ここで何すんの?」
「ゲーム」
「こら。それは違くないか?」
「勉強は昨日いっぱいした。こないだの実力テストも満点だったし、俺ん中で土曜日はゲームしていい日って決めてる」
「普段の土曜ならいいけど、今日は違うだろ」
翔に携帯を奪われて、成親が不貞腐れる。
「今日は俺とイチャイチャする日なの! スマホは没収!」
「だって今日のしょーさん、怖いもん」
唇を突き出して睨んできた成親の言葉に、
「怖い?」と訊き返した。
「怖いよ。そりゃ……だって。したいの、わかるけど。でも……俺、初めてだし」
成親の、伏せた目。の、周りが赤くなる。
翔と出逢ったばかりの頃は毎日野球で走り回っていたから真っ黒だったのに、部活を辞めてから勉強ばかりで陽に当たることもあまりなかったせいで、成親は本来の白い肌を取り戻していて。
黒こげ野球少年、というどこからどう見ても子供でしかなかった成親に惚れた翔である。
まあ、その数年前の野球部強制丸坊主時代であれば、ひょっとすると“ひとめぼれ”はなかったかもしれないが、とにかく、その頃から較べるとどんどん可愛くなっている成親が、翔には堪らなく魅力的なのだ。
伏し目ではにかんでいる姿なんて見せられて、まともでいられなくなるのは当然だろう。
翔は成親をソファに押し倒した。
「俺だって初めてだ」
上からのしかかりながら、言う。
「ちゅうも、なるが初めてだし、アレ、触んのだって俺、自分の以外誰も触ったこと、ねーし」
「……りっくんのは?」
「……それはノーカンにしてくれ」
弟のおむつ替えからトイレトレーニングの手伝い、に突っ込まれ、翔が思わず笑った。
「やっと、笑った」
「え?」
「しょーさん、今日、いっこも笑ってないもん」
言われて、ふと、気付く。
確かに今日、成親を抱くことばかりが先走っていて、多分一切の余裕もなくしていた自分に、気付かされる。
「俺、昨夜寝らんなかった。だからベンキョ、してたんだけど。でも、今日、絶対しょーさん、スるつもりって、前からわかってたし……イヤじゃないけど、すごい、緊張して……俺、寝らんなかった」
成親が拗ねたように言って、下唇をきゅっと噛んだ。
「なる……」
「こえーよ、だって……しょーさん俺ん中挿れる気満々だし……」
言っていて恥ずかしくなった成親が、左手で自分の目を隠した。
その仕草が、可愛くて。
翔は大きく息を吐くと、その手を掴んで起き上がらせた。
それは翔の弟妹の親子遠足の日。
楠本家は両親共働きで、幼い弟妹は土曜日も保育園がある。
が、チビ達はいなくても父はともかく母は“この日だけは私の休日”と、趣味の料理や溜まった家事の処理などで、殆ど自宅を出ることはなく。
翔も、基本的に隔週で土曜日も通常登校、生徒会その他部活動は毎週土曜日も通常登校になっているし、一人で自宅にいられるなんて日は滅多にない。
そんな状況の中、その日は以前から両親揃って二人にくっついてバス旅行に出かけるという話をしていて。
しかも。なんと翔までも一日休日で。
自分のベッドで思いっきり成親を抱く!
という、予てからの目標をいざ実行する為に、こんなに好都合な日はない、というもの。
だから。
何度も成親には“この日だけは絶対!”と予定を入れさせなかったし、前日から鼻息を荒くしてその日を待ちわびていたのだ。
「しょーさん、怖い」
ラインで“今から行きます”と成親からメッセージが入った瞬間から、玄関で待機していた翔は、扉が閉まると同時にその愛しい体を抱きしめていて。
せめて靴を脱がせて、と翔の腕を振りほどいた成親が、くふくふと笑いながら言った。
「もお、俺帰ろっかな」
「なんで!」
間髪入れず、翔が成親の腕を掴む。
「だってさー、目、血走ってるよ? やる気満々過ぎて、引くわー」
「えー……そんな、か?」
「そんなです」
やっと翔の腕の中から逃れた成親が、勝手知ったるといった足取りでリビングへと向かう。
「そっちじゃなくて、部屋、行こ」
「行かない」
食い気味に断られ、翔が眉を顰めた。
「いいから、しょーさんちょっと、落ち着こ?」
「…………」
「わかってるし。しょーさんがナニしたいのかも、ちゃーんとわかってるってば」
成親も当然、そのつもりでいるのは確かだけど。
リビングのソファに座る。
ここに遊びに来た時は、いつもこの大きなソファにゴロンと横になり、小さい陸や羽美を抱っこして遊んでやる。
自分には姉しかいないから、小さい子供が可愛くて仕方ないのだ。
勿論双子のおチビ達も、成親が大好きで。
いつだって成親がここに来た時は、二人がよってたかってじゃれてくる。
でも、今日は一人。
手持ち無沙汰にスマホを取り出した。
「ちょっと待て。なる、ここで何すんの?」
「ゲーム」
「こら。それは違くないか?」
「勉強は昨日いっぱいした。こないだの実力テストも満点だったし、俺ん中で土曜日はゲームしていい日って決めてる」
「普段の土曜ならいいけど、今日は違うだろ」
翔に携帯を奪われて、成親が不貞腐れる。
「今日は俺とイチャイチャする日なの! スマホは没収!」
「だって今日のしょーさん、怖いもん」
唇を突き出して睨んできた成親の言葉に、
「怖い?」と訊き返した。
「怖いよ。そりゃ……だって。したいの、わかるけど。でも……俺、初めてだし」
成親の、伏せた目。の、周りが赤くなる。
翔と出逢ったばかりの頃は毎日野球で走り回っていたから真っ黒だったのに、部活を辞めてから勉強ばかりで陽に当たることもあまりなかったせいで、成親は本来の白い肌を取り戻していて。
黒こげ野球少年、というどこからどう見ても子供でしかなかった成親に惚れた翔である。
まあ、その数年前の野球部強制丸坊主時代であれば、ひょっとすると“ひとめぼれ”はなかったかもしれないが、とにかく、その頃から較べるとどんどん可愛くなっている成親が、翔には堪らなく魅力的なのだ。
伏し目ではにかんでいる姿なんて見せられて、まともでいられなくなるのは当然だろう。
翔は成親をソファに押し倒した。
「俺だって初めてだ」
上からのしかかりながら、言う。
「ちゅうも、なるが初めてだし、アレ、触んのだって俺、自分の以外誰も触ったこと、ねーし」
「……りっくんのは?」
「……それはノーカンにしてくれ」
弟のおむつ替えからトイレトレーニングの手伝い、に突っ込まれ、翔が思わず笑った。
「やっと、笑った」
「え?」
「しょーさん、今日、いっこも笑ってないもん」
言われて、ふと、気付く。
確かに今日、成親を抱くことばかりが先走っていて、多分一切の余裕もなくしていた自分に、気付かされる。
「俺、昨夜寝らんなかった。だからベンキョ、してたんだけど。でも、今日、絶対しょーさん、スるつもりって、前からわかってたし……イヤじゃないけど、すごい、緊張して……俺、寝らんなかった」
成親が拗ねたように言って、下唇をきゅっと噛んだ。
「なる……」
「こえーよ、だって……しょーさん俺ん中挿れる気満々だし……」
言っていて恥ずかしくなった成親が、左手で自分の目を隠した。
その仕草が、可愛くて。
翔は大きく息を吐くと、その手を掴んで起き上がらせた。
0
お気に入りに追加
38
あなたにおすすめの小説
男の子たちの変態的な日常
M
BL
主人公の男の子が変態的な目に遭ったり、凌辱されたり、攻められたりするお話です。とにかくHな話が読みたい方向け。
※この作品はムーンライトノベルズにも掲載しています。
淫らに壊れる颯太の日常~オフィス調教の性的刺激は蜜の味~
あいだ啓壱(渡辺河童)
BL
~癖になる刺激~の一部として掲載しておりましたが、癖になる刺激の純(痴漢)を今後連載していこうと思うので、別枠として掲載しました。
※R-18作品です。
モブ攻め/快楽堕ち/乳首責め/陰嚢責め/陰茎責め/アナル責め/言葉責め/鈴口責め/3P、等の表現がございます。ご注意ください。
少年ペット契約
眠りん
BL
※少年売買契約のスピンオフ作品です。
↑上記作品を知らなくても読めます。
小山内文和は貧乏な家庭に育ち、教育上よろしくない環境にいながらも、幸せな生活を送っていた。
趣味は布団でゴロゴロする事。
ある日学校から帰ってくると、部屋はもぬけの殻、両親はいなくなっており、借金取りにやってきたヤクザの組員に人身売買で売られる事になってしまった。
文和を購入したのは堂島雪夜。四十二歳の優しい雰囲気のおじさんだ。
文和は雪夜の養子となり、学校に通ったり、本当の子供のように愛された。
文和同様人身売買で買われて、堂島の元で育ったアラサー家政婦の金井栞も、サバサバした性格だが、文和に親切だ。
三年程を堂島の家で、呑気に雪夜や栞とゴロゴロした生活を送っていたのだが、ある日雪夜が人身売買の罪で逮捕されてしまった。
文和はゴロゴロ生活を守る為、雪夜が出所するまでの間、ペットにしてくれる人を探す事にした。
※前作と違い、エロは最初の頃少しだけで、あとはほぼないです。
※前作がシリアスで暗かったので、今回は明るめでやってます。
幼馴染は俺がくっついてるから誰とも付き合えないらしい
中屋沙鳥
BL
井之原朱鷺は幼馴染の北村航平のことを好きだという伊東汐里から「いつも井之原がくっついてたら北村だって誰とも付き合えないじゃん。親友なら考えてあげなよ」と言われて考え込んでしまう。俺は航平の邪魔をしているのか?実は片思いをしているけど航平のためを考えた方が良いのかもしれない。それをきっかけに2人の関係が変化していく…/高校生が順調(?)に愛を深めます
弟の性奴隷だった俺がαに飼い馴らされるまで
あさじなぎ@小説&漫画配信
BL
α×β。
俺は雷を操る力を持っているため、子供の頃から家電製品を壊してきた。
その為親に疎まれて育った俺、緋彩は、高校進学時から家を出て、父方の祖父母が住んでいた空き家にひとり暮らししている。
そんな俺を溺愛する、双子の弟、蒼也との歪んだ関係に苦しみながら、俺は大学生になった。
力を防ぐ為にいつもしている黒い革手袋。その事に興味を持って話しかけてきた浅木奏の存在により、俺の生活は変わりだす。
彼は恋人役をやろうかと言い出してた。
弟を遠ざけるため俺はその申し出をうけ、トラウマと戦いながら奏さんと付き合っていく。
※最初から近親相姦あり
※攻めはふたりいる
地雷多めだと思う
ムーンライトノベルズにも載せてます
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる