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十二月に入ると、いよいよクリスマスコンサートに向けての練習が本格化する吹奏楽部である。
企画に恵那が絡んでいるせいか、今回のコンサートにはM女のコーラス部が参加したり、いよいよ関係が密になってしまった本校男子ダンス部がゲスト出演してみたり。
このダンス部、元々男子新体操部として細々と活動していたのだが、ここ数年のダンスブームと相俟って新体操だけでなく本格的にダンス部として活動を始め、あちこちのダンス大会に顔を出してはちょっとした賞を貰って帰って来ていて。
学校側もいよいよ強化対象にしようかと検討に入っているから、吹部がいち早く目を付けてコラボすることになったのである。
要するに散々恵那がダンスでお世話になっているから、その恩返しという話なわけで。
吹部の生演奏をバックにステージで本格的なヒップホップや、ブレイクダンスなんてのを披露して貰うことになっているのだが、舞台をどうセッティングするかなんて課題があり、恵那を始めとする企画担当が日々頭を悩ませている。
「涼っち、昼休憩ん時また一人で庭で寝とったで?」
忙しいのはバスケ部も同じで、最近は昼も練習時間になっているからここの所四人で御飯を食べることなんてできていない。
おまけに恵那がクリコンの打合せで走り回っているから、涼が一人でいる姿は誰もが見かけていた。
「またあのバカ、自分の世界に入って涼を放置してんのかよ」
響の報告に土岐が大きくため息を吐いた。
昼練習は大会にエントリーされているメンバーのみで自主練のように行われているものだから、参加は強制ではない。けれど、土岐も響も主要メンバーとなっているから抜けられるわけがなくて。
土岐としても一人でいる涼を放置しているのは気になって仕方がないのだが。
「恵那も忙しそうやしなあ。どないしたったらええやら」
選択授業の関係で授業の合間の移動が多いから、時々すれ違う涼はいつでも恵那の隣にいて。選択は同じだと言っていたから、恐らく一人になっているのは昼休憩だけ。
恵那曰く「ガッコ内でそんなカホゴなことやってられるか」だそうで、ちょっと昼休憩に一人で昼寝しているからって、その度に目くじら立てるなんてきっとまた口論になるだけだ。そう思うと恵那に忠告することもできない。
「あのお姫さん、自覚はないさかいなあ」
「それな。まあ、本人こそが僕は可愛くないって主張している以上、こっちが何言っても仕方ないんだけどさ。もうちょっと自分を客観視して欲しい」
校内で“アイドル”状態な自分のことを全く理解していない涼だから、無防備に寝顔を晒すのも全然平気で。そんなの校内いたるところにいるだろうファンクラブ会員や、そうでなくても涼を可愛いと思っている輩なんていつ手を出してもおかしくない。
「土岐はすぐ恵那と喧嘩になるしなあ。しゃあない、俺からちょっとあいつに言うたるわ」
響が言って、スリーポイントシュートを決めた。
「土岐に響! おまえら、井戸端会議しながら練習してんじゃねーよ!」
話をしながらサシでドリブルキープ練習していた二人は。
二人の様子を見ていた同じ二年の坂本利樹に怒られた。
十二月に入ると、いよいよクリスマスコンサートに向けての練習が本格化する吹奏楽部である。
企画に恵那が絡んでいるせいか、今回のコンサートにはM女のコーラス部が参加したり、いよいよ関係が密になってしまった本校男子ダンス部がゲスト出演してみたり。
このダンス部、元々男子新体操部として細々と活動していたのだが、ここ数年のダンスブームと相俟って新体操だけでなく本格的にダンス部として活動を始め、あちこちのダンス大会に顔を出してはちょっとした賞を貰って帰って来ていて。
学校側もいよいよ強化対象にしようかと検討に入っているから、吹部がいち早く目を付けてコラボすることになったのである。
要するに散々恵那がダンスでお世話になっているから、その恩返しという話なわけで。
吹部の生演奏をバックにステージで本格的なヒップホップや、ブレイクダンスなんてのを披露して貰うことになっているのだが、舞台をどうセッティングするかなんて課題があり、恵那を始めとする企画担当が日々頭を悩ませている。
「涼っち、昼休憩ん時また一人で庭で寝とったで?」
忙しいのはバスケ部も同じで、最近は昼も練習時間になっているからここの所四人で御飯を食べることなんてできていない。
おまけに恵那がクリコンの打合せで走り回っているから、涼が一人でいる姿は誰もが見かけていた。
「またあのバカ、自分の世界に入って涼を放置してんのかよ」
響の報告に土岐が大きくため息を吐いた。
昼練習は大会にエントリーされているメンバーのみで自主練のように行われているものだから、参加は強制ではない。けれど、土岐も響も主要メンバーとなっているから抜けられるわけがなくて。
土岐としても一人でいる涼を放置しているのは気になって仕方がないのだが。
「恵那も忙しそうやしなあ。どないしたったらええやら」
選択授業の関係で授業の合間の移動が多いから、時々すれ違う涼はいつでも恵那の隣にいて。選択は同じだと言っていたから、恐らく一人になっているのは昼休憩だけ。
恵那曰く「ガッコ内でそんなカホゴなことやってられるか」だそうで、ちょっと昼休憩に一人で昼寝しているからって、その度に目くじら立てるなんてきっとまた口論になるだけだ。そう思うと恵那に忠告することもできない。
「あのお姫さん、自覚はないさかいなあ」
「それな。まあ、本人こそが僕は可愛くないって主張している以上、こっちが何言っても仕方ないんだけどさ。もうちょっと自分を客観視して欲しい」
校内で“アイドル”状態な自分のことを全く理解していない涼だから、無防備に寝顔を晒すのも全然平気で。そんなの校内いたるところにいるだろうファンクラブ会員や、そうでなくても涼を可愛いと思っている輩なんていつ手を出してもおかしくない。
「土岐はすぐ恵那と喧嘩になるしなあ。しゃあない、俺からちょっとあいつに言うたるわ」
響が言って、スリーポイントシュートを決めた。
「土岐に響! おまえら、井戸端会議しながら練習してんじゃねーよ!」
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二人の様子を見ていた同じ二年の坂本利樹に怒られた。
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