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「っとにもう。恵那も辰巳も、俺なんかより全然モテる奴だろうがよ。俺なんかの下らねー話、聞きたがってんじゃねえよ」
「なんでー? 俺、うちのサックスん中で南先輩が一番イイ男だと思ってっけど?」
見た目もデカいし、懐だってデカいし、なんたってめちゃくちゃいい音出すし、と恵那がしれっと言う。
「…………本気でゆってる?」南が問うと、スンっとした表情で恵那が頷いた。
「入ったばっかの頃さ、猫の写真見せてくれたじゃん? あれ、見てる時の先輩の死ぬほど優しい顔、あれは世界中の女がオちると思う」
ふざけてるわけではなく、本気で恵那が言っているのがわかったせいで、南がわかりやすくデレた。
「……あおをさ、ちょっと預けないといけないからペットホテル、連れてったんだよ」
両親が旅行で一週間程家を空けることになり、だからと言って部活と勉強で手一杯になっている南が猫の世話をしていられる状況でもなく。
仕方がないからペットホテルに一週間預けることになった。
滅多に預けることはないが、それでも過去数回預けたことのあるそこのペットホテルは評判もいいし、何より同じ場所に預けることであおも安心するようで。
「したらさ。その店でバイトしてる女の子がさ、めちゃくちゃあおのことを可愛がってくれて」
店員だから当たり前だろうが、それでもやっぱり可愛がっている愛猫を「あおちゃん、また逢えて嬉しい」なんて言ってくれたら、それは飼い主としては嬉しいことこの上なく。
「で、なんか話してたら。実は彼女、自宅では犬しか飼ってないらしくて」
犬を飼っているということは基本犬派だろうと思われるのに、そんな彼女があおを大切に扱ってくれて、そして愛情を注いでくれるというのがとても新鮮で。
「なんか……そのホテルって当然グッズとかもいろいろ扱ってるからさ。時々、顔出すようになって。したら……えっと……コクられた」
その瞬間恵那が口笛を吹いた。
既にサックスパート、全員が南の話に耳を傾けていて。……いや、重松はまだ戻っていないのだが。
「ほら、だからゆってんじゃん。先輩ほどのイイ男、そうそういないからね。あおちゃんにデレてる先輩、鬼可愛いし、入れ食いだっつーの」
恵那が言うと、南がまた赤くなる。
「で?」
「で、って?」
「どこまで行ってんスか? ちゅうは? ねーねー、もうちゅーした?」
その問いには食い気味に鉄拳が飛んだ。
「痛い」
「ったりめーだ、ばか。んなの、答えるばかがどこにいる!」
「いいじゃーん。ねーねー、年上? 年下?」
「うざい!」
「可愛い系? キレイ系?」
ウザ恵那が発動した瞬間、背後から迫っていた重松の鉄拳がその頭に炸裂した。
「恵那! 下らないこと言ってないで、練習は!」
先輩がいじめるー、とブスくれた恵那に、辰巳が「おまえのモテない原因はそのウザさだな」とため息を吐きながら一言放って、再び練習に戻った。
さすがに重松がいる中、楽器を放置して無駄話なんてしていられるほど太い神経は皆、持ち合わせていない。
「……でもさ、南先輩。最近の音にツヤがマシマシになってるのって、幸せだからでしょ? 超絶色っぽくてエロエロだし」
恵那を除いて、らしい。でも一応コソコソ声で、南にニヤついて詰め寄ると。
「てめーはまだ言うか」と睨まれた。
「ねーねー、真似していい?」
「え?」
「南先輩の色っぽい音、俺、真似したい」
どこまでが冗談でどこからが本気なのか、恵那はその発言の後少し伏し目にして艶やかな低音を響かせた。
「なんでー? 俺、うちのサックスん中で南先輩が一番イイ男だと思ってっけど?」
見た目もデカいし、懐だってデカいし、なんたってめちゃくちゃいい音出すし、と恵那がしれっと言う。
「…………本気でゆってる?」南が問うと、スンっとした表情で恵那が頷いた。
「入ったばっかの頃さ、猫の写真見せてくれたじゃん? あれ、見てる時の先輩の死ぬほど優しい顔、あれは世界中の女がオちると思う」
ふざけてるわけではなく、本気で恵那が言っているのがわかったせいで、南がわかりやすくデレた。
「……あおをさ、ちょっと預けないといけないからペットホテル、連れてったんだよ」
両親が旅行で一週間程家を空けることになり、だからと言って部活と勉強で手一杯になっている南が猫の世話をしていられる状況でもなく。
仕方がないからペットホテルに一週間預けることになった。
滅多に預けることはないが、それでも過去数回預けたことのあるそこのペットホテルは評判もいいし、何より同じ場所に預けることであおも安心するようで。
「したらさ。その店でバイトしてる女の子がさ、めちゃくちゃあおのことを可愛がってくれて」
店員だから当たり前だろうが、それでもやっぱり可愛がっている愛猫を「あおちゃん、また逢えて嬉しい」なんて言ってくれたら、それは飼い主としては嬉しいことこの上なく。
「で、なんか話してたら。実は彼女、自宅では犬しか飼ってないらしくて」
犬を飼っているということは基本犬派だろうと思われるのに、そんな彼女があおを大切に扱ってくれて、そして愛情を注いでくれるというのがとても新鮮で。
「なんか……そのホテルって当然グッズとかもいろいろ扱ってるからさ。時々、顔出すようになって。したら……えっと……コクられた」
その瞬間恵那が口笛を吹いた。
既にサックスパート、全員が南の話に耳を傾けていて。……いや、重松はまだ戻っていないのだが。
「ほら、だからゆってんじゃん。先輩ほどのイイ男、そうそういないからね。あおちゃんにデレてる先輩、鬼可愛いし、入れ食いだっつーの」
恵那が言うと、南がまた赤くなる。
「で?」
「で、って?」
「どこまで行ってんスか? ちゅうは? ねーねー、もうちゅーした?」
その問いには食い気味に鉄拳が飛んだ。
「痛い」
「ったりめーだ、ばか。んなの、答えるばかがどこにいる!」
「いいじゃーん。ねーねー、年上? 年下?」
「うざい!」
「可愛い系? キレイ系?」
ウザ恵那が発動した瞬間、背後から迫っていた重松の鉄拳がその頭に炸裂した。
「恵那! 下らないこと言ってないで、練習は!」
先輩がいじめるー、とブスくれた恵那に、辰巳が「おまえのモテない原因はそのウザさだな」とため息を吐きながら一言放って、再び練習に戻った。
さすがに重松がいる中、楽器を放置して無駄話なんてしていられるほど太い神経は皆、持ち合わせていない。
「……でもさ、南先輩。最近の音にツヤがマシマシになってるのって、幸せだからでしょ? 超絶色っぽくてエロエロだし」
恵那を除いて、らしい。でも一応コソコソ声で、南にニヤついて詰め寄ると。
「てめーはまだ言うか」と睨まれた。
「ねーねー、真似していい?」
「え?」
「南先輩の色っぽい音、俺、真似したい」
どこまでが冗談でどこからが本気なのか、恵那はその発言の後少し伏し目にして艶やかな低音を響かせた。
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