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「も信じらんないでしょお。えなってば意地悪なんだから!」
学食でいつメンで昼食中、隣で爆笑している恵那を軽く睨みながら涼が言うから。
響と土岐は苦笑するしかなくて。
「ひどくない? 僕、ゲーセン自体初めてなんだよ? 普通そんなの置き去りにする?」
むー、と不機嫌な表情をしているけれど、誰がどう見たってそれすら可愛いわけで。
先日のデートについて、恵那が二人に話していたら涼が思い出して激おこ状態になったのだ。
美術館はともかく、ゲーセンやカラオケに今度四人で行こうと提案していただけに、恵那としては涼の感想に笑うしかない。
「いやいや、去ってはないよ。ただ単に俺のオキニの筐体があったから、それに突っ走ってっただけで」
「キングか? おまえ、あれ好きだよなー」
土岐が呆れながら言う。
「最近見かけない店あるしさ。とりあえず発見したら直行するよね」
「で、涼っちは置き去りにされたっちゅーわけか。なんか、固まってる涼っちが浮かぶで、俺も」
「固まるよー、固まるに決まってんじゃん。爆音の中で何していいかわかんないし。怖い人と目があったらヤバいって思ったらどこ向いていいかもわかんないし」
「そりゃ恵那が悪いわな。こんな可愛いのん放置しとったら、確実に餌食になるやん?」
「ん。気付いたら老若男女の視線集めてたよ、涼。で、店員が心配して近付いてきたからうるうるな目で涼が縋るだろ? で、その店員のお兄ちゃんがまた赤面して固まるとゆー。メデューサ状態が超絶笑けた」
「見てたなら助けてよ」
「助けたじゃん。ちゃんと。これは俺のでーすって」
散々いろんな人たちの視線を浴びながら、なんとか奥まった場所にあったプリクラに逃げ込んだわけだけれど。
ちょっとボーイッシュな女の子にしか見えない涼に声を掛けようとしていた男も、連れ去ったのが恵那という綺麗ドコロだっただけに何も言えずに茫然としていた。
「でも楽しかっただろ? 音ゲーなんか結構ハマってたじゃん、涼」
言わずと知れた太鼓ゲームには、最終的に二人で夢中になっていたわけで。
「うん、思ってたより怖いトコじゃなかった。ただ、めちゃくちゃうるさいから、店出た後耳がおかしくなったけど」
「耳も繊細だもんなー、涼は」
「演奏家にとっては大事でしょ、耳!」
二人が楽しそうに話しているのを見て、土岐が
「いいな。じゃあ今度は俺、たちも一緒に行こう」とぽつりと言って。
「行こう! 意地悪なえなだけだと僕また置いてけぼりにされるし。土岐や響、一緒がいい」
「えー。二人でらぶらぶでえと、しよおぜー」
いつものようにふざけた恵那が涼の頭を抱こうとするから、
「やめろっつの。えな、そーやってすぐ僕のことオモチャにする」ぷ、と膨れる。
「いいじゃん。それにバスケ部忙しいだろ? 休みなんか殆どねーじゃん」
「それなー。思っとった以上に休みなんかあらへんし、俺らもークタクタやで。吹部は結構休みあるん?」
「そうでもない。やっぱ、中学ん時より本格的に練習やるし、ちゃんとした講師が楽器ごとについてくれてるから下手に休むと勿体ないしさ」
大した金額じゃない部費を払うだけで、プロの演奏家がパート毎にレッスンしてくれるから。それはそれで貴重な時間。
さすが私立高校だけあって、力の入っている部活に対しては学校側も指導が手厚い。
運動部も同様らしく、強化対象とされている実績のある部活は基本的に休みなんて殆どない。
「次はあれだな、試験休み」
恵那が腕を組みながら予定を考える。
「テスト期間は遊んでる場合じゃねーけど、最終日は自由だったろ、確か」
「そっか。部活も先生がテストの採点で忙しいからって休みだったよね。じゃあ、その日四人で遊びに行こ」
涼の嬉しそうな提案に、三人して首肯した。
「も信じらんないでしょお。えなってば意地悪なんだから!」
学食でいつメンで昼食中、隣で爆笑している恵那を軽く睨みながら涼が言うから。
響と土岐は苦笑するしかなくて。
「ひどくない? 僕、ゲーセン自体初めてなんだよ? 普通そんなの置き去りにする?」
むー、と不機嫌な表情をしているけれど、誰がどう見たってそれすら可愛いわけで。
先日のデートについて、恵那が二人に話していたら涼が思い出して激おこ状態になったのだ。
美術館はともかく、ゲーセンやカラオケに今度四人で行こうと提案していただけに、恵那としては涼の感想に笑うしかない。
「いやいや、去ってはないよ。ただ単に俺のオキニの筐体があったから、それに突っ走ってっただけで」
「キングか? おまえ、あれ好きだよなー」
土岐が呆れながら言う。
「最近見かけない店あるしさ。とりあえず発見したら直行するよね」
「で、涼っちは置き去りにされたっちゅーわけか。なんか、固まってる涼っちが浮かぶで、俺も」
「固まるよー、固まるに決まってんじゃん。爆音の中で何していいかわかんないし。怖い人と目があったらヤバいって思ったらどこ向いていいかもわかんないし」
「そりゃ恵那が悪いわな。こんな可愛いのん放置しとったら、確実に餌食になるやん?」
「ん。気付いたら老若男女の視線集めてたよ、涼。で、店員が心配して近付いてきたからうるうるな目で涼が縋るだろ? で、その店員のお兄ちゃんがまた赤面して固まるとゆー。メデューサ状態が超絶笑けた」
「見てたなら助けてよ」
「助けたじゃん。ちゃんと。これは俺のでーすって」
散々いろんな人たちの視線を浴びながら、なんとか奥まった場所にあったプリクラに逃げ込んだわけだけれど。
ちょっとボーイッシュな女の子にしか見えない涼に声を掛けようとしていた男も、連れ去ったのが恵那という綺麗ドコロだっただけに何も言えずに茫然としていた。
「でも楽しかっただろ? 音ゲーなんか結構ハマってたじゃん、涼」
言わずと知れた太鼓ゲームには、最終的に二人で夢中になっていたわけで。
「うん、思ってたより怖いトコじゃなかった。ただ、めちゃくちゃうるさいから、店出た後耳がおかしくなったけど」
「耳も繊細だもんなー、涼は」
「演奏家にとっては大事でしょ、耳!」
二人が楽しそうに話しているのを見て、土岐が
「いいな。じゃあ今度は俺、たちも一緒に行こう」とぽつりと言って。
「行こう! 意地悪なえなだけだと僕また置いてけぼりにされるし。土岐や響、一緒がいい」
「えー。二人でらぶらぶでえと、しよおぜー」
いつものようにふざけた恵那が涼の頭を抱こうとするから、
「やめろっつの。えな、そーやってすぐ僕のことオモチャにする」ぷ、と膨れる。
「いいじゃん。それにバスケ部忙しいだろ? 休みなんか殆どねーじゃん」
「それなー。思っとった以上に休みなんかあらへんし、俺らもークタクタやで。吹部は結構休みあるん?」
「そうでもない。やっぱ、中学ん時より本格的に練習やるし、ちゃんとした講師が楽器ごとについてくれてるから下手に休むと勿体ないしさ」
大した金額じゃない部費を払うだけで、プロの演奏家がパート毎にレッスンしてくれるから。それはそれで貴重な時間。
さすが私立高校だけあって、力の入っている部活に対しては学校側も指導が手厚い。
運動部も同様らしく、強化対象とされている実績のある部活は基本的に休みなんて殆どない。
「次はあれだな、試験休み」
恵那が腕を組みながら予定を考える。
「テスト期間は遊んでる場合じゃねーけど、最終日は自由だったろ、確か」
「そっか。部活も先生がテストの採点で忙しいからって休みだったよね。じゃあ、その日四人で遊びに行こ」
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