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天使のシアロン編

天使のシアロン編 ep.4

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天使のシアロン ep.4










イア「地下室…ですか?」

ヒュー「はい。まず、商会入口に入りましたら、受付の奥にいくつか部屋があり、各部屋の間に、石像が設置してありました」

ヒュー「置いてあったのは人や動物です。勿論、石像が有ることは誰も疑問に思いません」

ヒュー「私が気になったのは。石像の向きです」

イア「向き?」

ヒュー「ええ、石像は全て綺麗に右側と左側を向いていました。」

イア「右側と左側…、つまり、通路側を向いていないと言う事ですか?」

ヒュー「はい。通常であれば、顔が通路側に向いているのが基本です。稀に、後ろ姿を展示してる方もいらっしゃいますが、それでも1つや2つ。全てと言う事はあり得ないのです」

ヒュー「しかも、石像をよく見ると、我が国の神話に登場するアンゲルスとシムラクルムの物語に出てくる人物や動物でした。」

イア「なるほど。なぞらえて作られたのなら、それぞれが対峙してるように設置するはず、と言う事ですね。」

ヒュー「その通りです。」

イア「と、なるとその石像たちを、とある向きに変えれば、何かが起きると言う事ですね。ですが、どうして地下室と断言できたのですか?」

ヒュー「その通路を歩いていた時に、靴音が明らかに違う場所がありました。あと、下から風が吹いていたのです。」

イア「まぁ、そんな事まで分かるのですか?」

ヒュー「極めつけは、石像の事を質問した際に、あからさまに答えを濁されましたから」

イア「あら、おまぬけさんだったのですね。」

ヒュー「ええ、少々拍子抜けしてしまいました」

イア「フフッ。その事に気が付ける人間もそう居ないですよ?」

ヒュー「フッ。そうかもしれません」

イア「ですが、実際に動かしてみない事には、証拠になりません。どうなさるおつもりですか?」

ヒュー「そちらも考えてあります。今頃、主が動いているはずです」











セレスティア商会 客室
受付に案内される
受付ノックをする
SE:ノックオン
SE:扉を開ける音





アルガン「これはこれは、ローズマリー様。ようこそお越しくださいました。ああ、ルネ様もご足労いただきありがとうございます」

マリー「うむ」

ルネ「お久しぶりでございます」

アルガン「どうぞ、お入りください」





白髪でオールバックの男性カジュアルなスーツを着ているアルガンに案内される室内中央にある机に向かう。





マリー「久しぶりだな、リドル副会長。前回お会いしたのはもう半年前か」

アルガン「そんなに立っておりましたか。ハハハ、歳はあまりとりたくないものだ」

マリー「御冗談を。まだそんなお歳では無いでしょう」


向かい合う形でマリーとアルガンが長椅子に座る。その後ろにルネが立つ。



アルガン「いやいや。50にもなってくると若い時みたいな活気はなくてですな。今はほとんど隠居しておりますよ」

アルガン「それで、私に話と言うのは?こちらに書かれていた事でしょうか?」



1枚の封筒を懐から取り出す



マリー「ああ、ここ最近、商会から購入や搬入された物の中に、不良品や欠陥品が多く出ていると、相次いで報告があってな」

マリー「大元を取り締まっているモースト様が確認した時は、そんなものは無かったそうだ。それがどういう事なのかを知りたくてな」

アルガン「お手を煩わせて申し訳ありません。基本的に下の者に商品は任せてありますが、…私の監督不行きです」

マリー「ほう?では、貴方は現場に出向いていないと」

アルガン「左様でございます」

マリー「なるほど、ご体調が優れないとの話がありましたが、それで?」

アルガン「はい…。」

アルガン「ああ……。ハァ…。そうですな。それともう一つ、最近、商会に来る若い商人が、少々…。こう、元気な方が多くてですな…」

ルネ「なるほど、教育がなっていないと言う事ですね」

アルガン「ありがたい話でありますが、我々の商会も勢力を拡大しつつあります。このままいくと不味いのは目に見えているのですが…。管理が追いついていないのも事実です。」

マリー「ふむ、そちらに関しては人材を手配しよう」

アルガン「ありがとうございます」

マリー「次に、これだな」

アルガン「…。これは」


渡された手紙の次の項目


マリー「我が国のルディア宰相が消息不明になったのはご存じか?」

アルガン「はい、何でも奇妙な様子で見つかったとか」

マリー「ああ。それについて何だが、リドル副会長。ルディア宰相が行方不明になる前に、こちらに寄ったという報告が上がっていてな。その時のルディア宰相の様子を聞きたい」

アルガン「一番最近でお会いした時は、私と、この部屋で商会の今後についてお話しました」

マリー「なるほど。確か、この地域一帯の管轄は、宰相でしたね」

アルガン「はい。」

マリー「その時に変わった様子は?」

アルガン「特にありませんでしたが…あ、一つ気になる事を」

マリー「気になる事?」

アルガン「はい、どこかの国に長寿をもたらすものは無いかと私に質問をされました」

マリー「長寿?」

アルガン「理由までは分かりませんが」

マリー「そうか。それで?なんと答えたんだ?」

アルガン「どこか遠い国でそのような噂はありますとは、お答えしましたが、私も噂程度しか知りませんから…」

マリー「ふむ、そうか。では、最後だ」




マリー、一枚の写真を見せる




アルガン「!!!」

マリー「これは一体どういうことなのかな?」

アルガン「そ、それは」

マリー「先程、うちの執事から連絡がありましてなぁ。こちらのバッジを着けた者たちに襲われたと…、しかも、このバッジ、貴殿が今付けているのと全く同じものだ」

マリー「しかもその近辺で?貴殿が普段利用している、馬車車(ばしゃぐるま)の跡が見つかってもいる」

マリー「馬車車の跡だけなら、貴殿以外にも候補はありましたが…、どうしてうちの執事が調べている現場に、貴殿と全く同じバッジを着けた者が居たのですか?」

マリー「他にも有るんですよ。我々はモースト様に確認を取った所、リドル副会長、貴殿が直々に取りに来たと言う話を聞きました。ほとんど隠居している貴殿が?わざわざ取りに来ていた。」

アルガン「……。」

マリー「貴殿は現場に出向いてないと話しましたが?話が違いますね。更にもう一つ、貴殿の指輪に描いてある、そのウロボロス」



アルガン慌てて手元を隠す



マリー「それが、貴殿が運営しているサロンのバッジの絵柄が、全く同じであるのと同時に、ルディア宰相もその絵柄が描かれたコインを所有していた」

マリー「偶然とはとても思えなくてですな、調べさせてもらいました。解析したところ一致していましたよ。」

マリー「それと、もう一つ。私は「消息不明」といったのだがな?何故、奇妙な様子で見つかったと言う事を知っているんだ?」

アルガン「そ、それは巷で噂がありまして…」

マリー「噂?なるほど。でもそれはおかしいんですよ。確かに、奇妙な遺体が見つかった噂が流れているのは事実だが、それがルディア宰相であることは、私を含めた王族と貴族しか知らないんですよ。そんなトップシークレットな情報を、何故貴殿が知っている?」

アルガン「…」





マリー「さて、どういうことか説明をお願いします」

アルガン「…………」

アルガン「そうですな……。では」





アルガン、指を鳴らす
その瞬間に黒い服を纏った人物たちが10名ほどマリーたちの背後に現れ、2人を拘束する





ルネ「うわ?!」

マリー「ッ…!」

マリー「…リドル副会長…?一体何の真似ですか…!」


アルガン「何の真似とは今更ですなぁ。まさか、モースト殿に正体がバレていたとは…。変装は完璧のはずだったのだがな」

アルガン「ローズマリー様、貴女も白々しい方だ。私がルディア宰相を殺した犯人だと分かってここに来たのでしょう?」

マリー「!!」

アルガン「いいでしょう。お見せしてあげますよ。私がどうやって彼を殺したのかを。つれてけ」

ルネ「ち、ちょっと!!離しなさいよ!!」

マリー「……。」




マリー、ルネ、目隠しと口を塞がれて連れていかれる

地下におりていく
止まったところでギギギと扉が開く音がする
目隠しを強引にとられる


マリー「クッ…!」

ルネ「ウッ…!」

ルネ「!!こ、これは!!!」


アルガン「美しいでしょう?」

マリー「随分と良い趣味をしているな…。」



扉に入ってすぐ研究資料が置いてある机がある
壁には手足を拘束された裸の少年少女が壁に貼り付けられていたり、天井から吊るされたりしていた
その子供達の体には切り傷がいくつもあり、そこから植物が生えている



アルガン「何を言っているんですか?これは私の長年の研究を得て作った、人間と植物の融合ですよ」

ルネ「……か、体のいたるところにシーベランが…!!」

マリー「なるほど、人間を媒介にシーベランを生成し、それを研究材料としていたわけか」

ルネ「…!!まさか、その目的が「不老不死」の薬?!」

アルガン「ご名答にしてご明察。シーベランの植物には、体の毒素を抜いて、健康にする成分が含まれておりましてなぁ。別の国では「天使からの贈り物」とも呼ばれている植物です」

アルガン「実際に、この植物を薬草として飲んでいる国の人間は、平均寿命が長い事が分かりました。」

アルガン「そこで私は考えたのです。この成分をさらに活性化させるにはどうしたらいいか。あらゆる土に埋めてみましたが、効果は今一つでした。だが!ある日、虫の死骸にシーベランが生えているのを見つけましてな。そのシーベランには、若返りに効果がある成分が土よりも多く含まれていた。それで、あらゆる動物で試した結果、人間を媒介にするのが良い事が分かったのです。これは世紀の大発見でした!!!」

アルガン「私はこれを「天使のシアロン」と呼びます」

マリー「非人道的行為をしておいて大発見とは、とんだ愚か者だな。「子羊」はその為に仕入れたのか」

アルガン「やはり、そこまでお見通しでしたか。その通りですよ。人間の骨髄からとれる成分が、一番シーベランの成分を増幅させるのです。他にも脂肪や、血液、さらに、女性と男性からとれる成分の差も、大きいのです。」

ルネ「な、なんて恐ろしい事を…!!」

マリー「「子羊」の行方が分からなかったのもそのためか。全て貴様が…いや、貴様らが仕組んでいたのだな」

アルガン「本当に、腹立たしいですな。何もかもお見通しとは…。」

ルネ「「貴様ら」って、マ、マリー様、それって」

マリー「ああ、ルディア宰相も、この件に関わっていたと言う事だ」







数時間前、イアとマリーの会話
マリーの屋敷客までの話







イア「マリー様、ルディア宰相の事で気になる事が」

マリー「気になる事?」

イア「はい。ここ最近セレスティア商会にやけに足を運んでいたことが分かりました。しかも「ここ最近」の話です」

イア「さらに、喫煙や賭博まで行うようになった、と」

マリー「ふむ、ルディア宰相は健康主義、と言う事で有名だったのだが、何かあったのか?」

イア「そこまでは何とも、しかし、セレスティア商会に行くようになってからと言う事でした」

マリー「(少し考えて)イア、セレスティア商会は他の商会みたいに、サロンを開いていたりするか?」

イア「サロンでしたら、リドル副会長が運営されている、コネッホと言うサロンがあります」

マリー「コネッホか…」

イア「コネッホ、兎と言う意味ですね」

マリー「イア、今すぐそのサロンを調べてくれ。それと、サロンが購入したものも」

イア「何かあるのですか?」

マリー「確信は持てんが、妙な噂を一度耳にした事があってな」

マリー「死者の蘇生を研究しているとか」

イア「死者の蘇生?!」

マリー「以前から気になる事ではあった為、今度調査しようとしていた所だった。だが、ルディア宰相がそのサロンに出入りしていて、その事実がある以上、調べる必要がある」

イア「かしこまりました。直ぐに調べてまいります」







現時刻に戻る






マリー「イアに調べさせたら予想は当たっていた。ルディア宰相は調査や訪問を偽って、此処に足を運び、この実験を行っていたわけだ」

ルネ「ルディア宰相様が…そんな事を…。」

マリー「目的はなんだ?不老不死だけではあるまい」

アルガン「ハッハッハッハッ!!ああ、本当に貴女様は存在が忌々しいですな!!そこまで知っておきながら、あえて泳がせるとは恐れ入った!」

マリー「…。」

アルガン「あの方の御息女なだけある。」

アルガン「まぁ、だとしたらこの後の事も分かるわけですな。」

マリー「…私達も材料にするのだろう?」

アルガン「その通り。これでここの事を知る人物はいなくなる」

マリー「いなくなる?先程、貴様が私の執事に派遣した者どもは、全て片付けたが?」

アルガン「あの者どもは、所詮貧民からの出だ。だが、ローズマリー様、貴女様の後ろにいる人物たちは違う。只の執事が、この精鋭部隊を一人で倒せるわけがない」

ルネ「私達が居なくなれば!この国の王族たちが黙っていませんよ!!」

アルガン「フン。そんな物、後でどうとでもなる。その者たちは既に、シーベランの製薬を摂取しているからな!いやぁ、身体能力の強化まで可能とは!これは金になる!私はこれで世界に行くのだ!この狭い商会なんぞより、私は高みに行くのだ!!」

ルネ「人をなんだと思っているんですか!!」

アルガン「私以外、只の材料だよ」

ルネ「外道が…!!」

アルガン「ルディアも、最初は私の考えに賛同していたよ。一緒に仕組みも考えた…。だが、奴は…。私のこの!研究を否定したんだ!!」










事件当日、ルディアとアルガンの会話
客室にて






ルディア「本気で言ってるのか!!」

アルガン「何を言ってる?人間を使う事でよりシーベランの若返る成分が、通常の100倍にもなるのだ。使わない手はないだろう」

ルディア「その為に、何人が犠牲になるのだ!私は動物に行く前にやめろと言った筈だ!!」

アルガン「おいおい、ルディア。何もこの国の人間ではないぞ。私の所には「子羊」が来るでは無いか」

ルディア「は?」

アルガン「もうすでに、30人で行ってみた。今のところ順調に育っているよ」

ルディア「まさか…。最近の行方が分からなくなっていたのは…!!」

アルガン「ああ、私が買って、使っているのさ」

ルディア「…!!!貴様…!!!」




胸ぐらを掴んで




ルディア「どこに隠している!!!今すぐに止めるんだ!!!」

アルガン「おいおいおい、本気で言っているのか?もうすぐ不老不死が目の前にあると言うのに」

ルディア「大勢を犠牲にして作るものに、価値など無い!!!もういい!止めないのなら私が直接上に伝えて、警備隊を呼んでくる!」

アルガン「…!おいおい!待て!考え直せ!!」

ルディア「黙れ人殺し!!」




ルディア、部屋から出て行こうとする
目の前に黒服が現れる




ルディア「なっ!!」

アルガン「やれ」



黒服、ルディアに針を刺して気絶させる





アルガン「全く、少しずつ懐柔できたと思ったが、とんだ愚か者だったようだ」






研究室で肢体を拘束され、裸の状態で目が覚める
アルガン白衣を着ている



ルディア「うっ…。」

ルディア「なっ…!ここは!」

アルガン「目が覚めたか?」

ルディア「アルガン!貴様!何をするつもりだ!」

アルガン「そんなに人間を使うのが嫌なら、いっそ、自分がそうなればよいではないか」

ルディア「!!」

アルガン「良かったな。これで、貴様は永遠になれるぞ!」

ルディア「この…!悪魔め…!!」

アルガン「貴様から材料を拝借しよう」

ルディア「何をするつもりだ!!」

アルガン「何って」



言いながらルディアの首に太い針を刺す



ルディア「ギャッ」

アルガン「貴様の血液から体液まで全て頂くよ。有意義に使わせてもらう。」

アルガン「グッバイ、ルディア」

ルディア「ク、ク…ラウ…ン…お、許し…」






現時刻






アルガン「愚かな奴よ。私の指示に従っておればよかったものを…」

マリー「殺した挙句、その後も実験に使ったな貴様」

アルガン「ほう?何故そう言い切れる?」

マリー「私の知り合いに解剖医が居てな。全て解明してくれたよ」

マリー「体内からグロックヤートが検出されたことがな」

ルネ「グロックヤート…!う、噓でしょ!」

マリー「体内に注入した瞬間に、体のあらゆる穴から、血液や体液が吹き出してしまう薬物だ。成分はシーベランから抽出されるもので、天使のシアロンはルシラン・ジャヴ。ルディア宰相に使われたのはグロックヤートだ。最近急速に出回っている原因がまさかここだったとはな」

ルネ「まさか、その成分のせいであんな姿になったの?!」

マリー「ミイラの方はそうでしょう、しかし、骨の方は……」

アルガン「ああ、そこに生えているシーベランの試作品は奴だぞ」

ルネ「……ッ!!ルディア……!!!」

マリー「なるほど半分はシーベランのさらなる改良のために、もう半分をグロックヤートの実験で使ったのか。ここまで人間を捨てた有害物質には、初めてお目にかかったよ。」

アルガン「ハァ…。いい加減もう黙れ!小娘!お前たち2人もその薬にしてやる。恨むなら、ここまで知ってしまった自分を恨むんだな」



アルガン、マリーの胸ぐらを掴む



マリー「フ、フフフフフ」

アルガン「あ?」

マリー「アハッ!ハッハッハッ!」

アルガン「何を笑っている」

マリー「フフフフ。貴様、私の「優秀な執事」をなめ過ぎだぞ?」

アルガン「何を言ってや(がる)」

ヒュー「(がる辺りで被せて)お褒めに預かり光栄でございます。マスター」

アルガン「何?!」




アルガンの後ろからナイフが飛んできて、マリーたちを抑えている黒服に命中する
SE:ナイフを投げる音2回



黒服「ウガッ!」

黒服「ギャッ!!」




ヒュー「遅くなってしまい申し訳ありません。少々手こずってしまいました」

マリー「いいや、ナイスタイミングだ。ヒュー。流石だな」

アルガン「き、貴様!」

イア「動かないでください」

アルガン「!!」

マリー「イア、君も来たのか」

イア「はい。外道の顔を一度拝見したくて」

マリー「2人とも怪我は無いか…は愚問だな。流石だ。ルネ嬢、大丈夫ですか?」

ルネ「は、はい…」

アルガン「サ、サファイア・ルス・ヴィーズ…!だと…!」

アルガン「ば、馬鹿な!どうやってここに入ってきた…!そ、外の、外の黒服はどうした!!!」

ヒュー「入口はもう少し丁寧に隠すべきでは?やけに人が多いので「ここにありますよー」と教えているようなものでした」

イア「それに、我々を見くびりすぎですよ?外道さん。あの程度、私達にとっては準備運動にもなりません。非常に退屈でした。」

ヒュー「仕方ありません。ご自身の状況を何一つ把握できない愚か者ですから。」

イア「それもそうでした。フフッ。こんな汚れが我が国にあったとは、どう処分いたしましょうか?」

マリー「おいおい。2人とも落ち着け。証拠はここに山ほどある。あの子達はドクターに任せよう。イア、そいつを拘束しろ」

イア「かしこまりました。」

アルガン「ウガッ!!なッ!!い、いつの間に!う、動けん…!」

イア「さて、お話は裁判の間(さいばんのま)でお聞きしましょう。まぁ、聞かなくても極刑から逃れる事は不可能ですがね」

アルガン「き、貴様ら!!」

マリー「リドル・アルガン」

アルガン「!!」

マリー「我が国の役人を殺害、及び違法薬物の所持、非道な人体実験…、貴様の死では償え切れない」

マリー「しっかりと、「クラウン」に見定めて貰え。」

アルガン「私の…!私の研究が!!き、貴様!!貴様ーーー!!!」

マリー「ああ、それともう一つ」



床に這いつくばるアルガンに近づいて





マリー「君は、私に目を付けられた時点で、もう終わっていたのさ」










事件解決から1週間後
庭でくつろぐマリーとヒュー




ヒュー「それで、「子羊」達はどうなったのですか?」

マリー「ドクターに任せたよ。目を輝かせながら手術室に入っていったから、大丈夫だろう。3ヶ月ほどで回復する見込みだと」

ヒュー「それは良かったです。」

マリー「今回の騒動がきっかけで、シーベランは国際的に使用禁止となった。既に使われている国については使用は継続できるが、しばらくは貿易には出されない。モーストが嘆いていたがな」

ヒュー「フフッ、そうですか。しかし、不老不死とは…。大それたことを考えるものですね」

マリー「ああ。老いに対しての恐怖、自分より若くて才能の有る人間に負けたくないと言う、「若さ」だけにとり憑かれた愚かな末路だったな」

ヒュー「…。ルディア宰相が不遇でなりません」

マリー「ああ、虚偽の報告に関してだが、国の利益になる事を考えての行動だったそうだ。しかし、方法が確立されていなかった為、正式な報告はできなかったとの事だ。この国を守る大切な人物が一人、減ってしまったな。」

ヒュー「やはり、自然の摂理に反することは余り良くない結果を招いてしまう事が多いようですね」

マリー「ああ。だからこそ、今を見つめて一日を大切にする必要がある。いくら年を重ねてもそれを大切にしていきたいな」

マリー「ああ、それと、ヒューが言っていた地下室。大当たりだ。あそこから総額3億ほどの天使のシアロンが発見された。グロックヤートもな。あの場所は会長を含め全員が知らなかったそうだ。」

ヒュー「リドル・アルガンの単独であったと」

マリー「ああ。それにしても…。シアロンか、随分な冒涜か?それとも天使だったらなんでも欲しいのかもな」

ヒュー「神の体から出るもの。だから全て飲みたい」

マリー「ん?」

ヒュー「いえ、ただ、少し思い出してしまっただけです」

マリー「…。そうか。」

マリー「さ、辛気臭い話はここまでにしよう。もうそろそろ、イアが来る」

イア「はい。ご招待ありがとうございます」

マリー「フッ、早いな。流石だ」

イア「マリー様の招待とあれば、いつでも駆け付けたいです。ヒューさんからも、美味しいお茶を用意しているとありましたので」

ヒュー「はい。本日の紅茶はアールグレイです。リラックス効果がありますが、眠く成る成分カフェインが入っておりません。こちらに合うスコーンも用意させて頂きました」

イア「まぁ!美味しそう」

マリー「うむ、では頂くとしよう」










マリー「ローズマリーは今日も優雅に紅茶を嗜む 天使のシアロン 完」























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