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未来のはじまり

第86話:繋がり

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 七つの魂との繋がりを断つ。

 それが、あたしが完全に自由になるための条件。
 それはつまり、御水振オミフリさんたちとのお別れを意味する。

「彼らは祀られている場所から離れ過ぎた。君が生まれた時から君の守りに付いている。そろそろ戻らないと消滅しちゃうよ」
「消えちゃうの?」
「彼らの力の源は祈りだからね。それを補給しないまま十数年も離れたままでは何もしなくてもそのうち消える。……今はかなり弱っているようだけど、君たちは本来もっと強い神だったはずだ」

 そうか。今世のあたしを守るために本来の居場所から離れたんだ。そのせいで弱ってしまっている。

其方そなたの側で果てるなら本望だ』
「御水振さん……」

 青色の光があたしに寄り添ってそう囁く。
 この声にどれだけ支えられてきたことだろう。

「だから、君たちが一柱ひとりでも消滅したら榊之宮さかきのみやさんの完全開放の条件が満たされないんだってば」

 やや呆れたように八十神やそがみくんが口を挟んだ。

「先日の戦いでかなり力を消耗している。もう猶予はないよ。今日この場で彼らとの繋がりを断ってしまおう」

「え、そんな……」

 せっかく前世も思い出して、先日ようやく全員と話せるようになったばかりなのに、急にお別れしろだなんて言われても。

 そういえば、いつもなら口を挟んでくる彼らが今日はとても大人しい。話し合いの邪魔をしないように気を使ってくれていると思い込んでいた。ううん、ここ数日ずっと大人しかった。
 話すのも大変なくらい疲れ果ててるの?

 離れたくない。
 でも、みんなが消えちゃうのはもっと嫌。

「……わかった。みんなとさよならする」

 悲しいけど仕方ない。
 あたしは来世以降どうなっても構わないけど、せっかく頑張ってくれたお兄ちゃんや千景ちゃんたち、そして八十神くんの手助けを無駄にしたくない。

「じゃあこっちに来て。丹田たんでんと尾骨に触れさせてもらうよ」

 手招きされたので立ち上がろうとしたら、隣に座るお兄ちゃんから手を引っ張られて止められた。

「おい待て八十神。それは触らんと出来んことなのか? 教師の目の前でクラスメイトにセクハラはどうかと思うが」
「やだな先生。いやらしい目で見ないでくださいよ。これは必要な手続きなんですから」
「ホントかぁ? おまえ不思議な力が使えるんだから、触らずにパパッと何でも出来んじゃねーの?」
「出来なくもないけど、直接触れずにやると力加減が出来なくて榊之宮さかきのみやさんにダメージを与えてしまうんだ。だから、安全かつ確実に済ませるためには仕方ないんだよ」

 鞍多くらた先生と玲司れいじさんからの指摘に、八十神くんは肩をすくめて答えた。

 んん?
 よく考えたら、ここにいるみんなの前でおへその下とお尻を触られるってことだよね??
 だから二人は必死に止めようとしてくれてるんだ。

「あたしは大丈夫だから」
夕月ゆうづき……」

 お兄ちゃんの手をそっと離し、八十神くんの隣に移動する。

「あ、でも、触られたらみんながまたあたしの部屋に飛ばされちゃうかも?」
「それもそうだね」
「ていうか、なんで毎回あたしの部屋に飛ばされてたんだろ」
「うーん……寝室が一番榊之宮さんの気配が濃いからかな? だから本体から引き離された時に自動的にそこへ避難してたんだろうね」

 へえ~、ちゃんと理由があったんだ。

「じゃあ、この部屋から出られないようにしておこう」

 そう言って八十神くんは数秒目を閉じた。見た目には何も変わりないけど、何かしたのかな。

「……これで彼らは君の部屋に飛ばされない。残りの二ヶ所に触れて完全に繋がりを断った後に結界を消せば、それぞれ祀られている場所へと戻る」
「う、うん」

 いよいよ七つの光との別れの時。

 みんなに見守られる中、八十神くんはそっとあたしの身体に触れて彼らとの繋がりを解いた。
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