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定められた運命

第68話:お役目

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 前世?
 いま、前世って言った?
 それって、生まれる前の話だよね。

「あたしが、御水振オミフリさんたちの人生を変えた……?」
「そう。彼らはそれぞれの人生で君に出会い、そして喪うことを機に魂の格を上げた。只人タダビトから神に近い存在と成った」

 夢に見た七つの記憶。
 あの女の子はあたしの前世。
 みんながあたしを守ろうとしてくれている理由が初めて分かった。



──また其方そなた
  言葉が交わせるようになって嬉しい


──お嬢ちゃんは
  ほんっとに変わんないね~!



 みんなはあたしを通り越して誰か・・を見ていた。それは、前世のあたしだったんだね。

「あの、八十神やそがみくん。七つの光とあたしの関係は分かったけど、それがどうして今の状況になっちゃうわけ? これくらいの話なら別にみんなが居る時でも……」
「それはもちろん、今からする話が本題だからだよ。彼らに聞かれたら反対されるに決まってる。だから、先に君だけに話しておきたかったんだ」

 みんなが反対するような話なの?

 雲が出て、月が隠れて、森の中は真っ暗になった。すぐ隣に座っているはずの八十神くんの姿すら見えなくなる。思わず手を伸ばし、彼の上着の裾を見つけて掴んだ。
 八十神くんは怖いけど、ちゃんとこうして話をしてくれている。あたしの手を振り解かずにいてくれる。味方じゃないかもしれないけど、悪い人じゃないと思う。そう思いたい。

榊之宮さかきのみやさんの前世は今までに七回、その全てで十五歳になる前に死を迎えている。そして、それは今世も例外ではない・・・・・・・・・

 隣に座る彼の姿は見えないけど、声だけはハッキリと聞こえた。何かすごいことを言われた気がする。

「……あの、聞き違いじゃなければ、あたしは十四で死ぬ運命ってこと?」
「うん」
「そ、そうなんだぁ……」

 いやいやいや、今まさに十四歳なんだけど。
 次の誕生日が来る前に死んじゃうの?

 でも、なんで?

「君はある目的のために下界に降ろされたお役目を持つ特別な魂なんだ。もう分かってるとは思うけど『特定の魂に影響を与えて神格化させる』こと。それが君の役割だよ」
「し、神格化……」
「そう。君は今までの転生で七つの魂の神格化に成功している。彼らが不思議な力を使えるのは神上かみあがりしているからだ」
「え、でも、じゃあ、今のあたしは誰を……」
「恐らく君のお兄さん、榊之宮 朝陽さかきのみや あさひだろうね。生まれながらに強い霊力を持っているけど、今のままでは使いこなせず自滅を待つのみ。君の死を切っ掛けに、ちゃんとした修業を積んで行者ぎょうじゃにでもなるんじゃないかな」

 お兄ちゃんの魂を神格化させる?
 確かに、あたしが死んだらそうなるのかもしれない。でも、そんなこと……

「今までなら放っておいても良かったんだけど、今回は邪魔が入って君が死ねない・・・・・・。何故だと思う?」
「……お、御水振さんたちが守ってるから……」
「彼らが居る限り、君が何度死に向かっても助かってしまう。それに、肝心の君のお兄さんもね。今までかなり無理をしてきたはずだよ。これでは君はお役目を果たせない」

 お兄ちゃんはこの町に点在するおかしなところを対処してきた。禍ツ神マガツカミに好かれやすいあたしを守るために。

 でも、最近になって急に異変が増えた。


 山中の縁結びの祠。

 神社の末社。

 学校の慰霊碑。

 そして忌み地。


 八十神くんがこの町に来た頃からだ。



「もしかして、全部八十神くんが仕組んだの? あたしが予定通り死に向かえるように」
「うん」
「あたし以外が巻き込まれてたよね?」
「君の性質は『自己犠牲』だからね。誰かを守ろうとする時、君は必ず命を投げ出す。これは魂に刻まれたプログラムみたいなものなんだ。今までだってそうだっただろう?」
「だから、叶恵かなえちゃんを?」
「うん」
「叶恵ちゃんは八十神くんが好きだったんだよ? 一歩間違えば死んでたかもしれないのに」
「でも、君は間に合った・・・・・・・。彼女を救うために禍ツ神に身を委ねようとした」

 そんなことのためにクラスメイトを巻き込んで、命を脅かすなんで信じられない。
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