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定められた運命
第67話:七つの魂
しおりを挟む「彼らが君に執着し、守護する理由。それは君が彼らと密接に関わっているからだよ」
八十神くんは穏やかな口調でゆっくりと話し始めた。月明かりに照らされた彼の横顔を眺めながら、あたしはその話を黙って聞いていた。
「彼らは生まれた時代や場所は違うけど、その人生において一つだけ共通点がある。それは『少女との別れ』だ。とある少女の死を切っ掛けに、彼らの意識に大きな変化か現れた」
思い浮かぶのは、夢に見た七つの記憶。
確かに少女との別れの場面ばかりだった。
「一人目は、許嫁の姫を喪った武将。彼は姫の死後、人の身では有り得ないような戦い方で自陣の窮地を救い、戦いの後に自ら命を絶った。彼は今も武勲の神として古戦場跡に祀られている」
これは御水振さんのことだ。
「二人目は、人買いの青年。商品である少女に野盗から逃がしてもらった後、共にいた子どもたちと廃寺に住み着き孤児院を開いた。多くの貧しい子どもの命を救い、その地では今でも語り継がれている」
これはきっと小凍羅さん。
「三人目は、荒くれ者たちの頭領。身代わりの花嫁が味方の火矢で敵もろとも焼き殺される覚悟を決めていたことに心打たれ、助けようとしたが結局共に死んでしまった。その後は祟り神となり、長年拝まれてようやく穏やかさを取り戻した」
螺圡我さん……祟り神だったんだ。
「四人目は、病んだ薬師。彼は流行り病を封じ込めるために弟子の少女を犠牲にしてしまったことを悔やみ、以後は薬草の研究を重ねて疫病根絶を目指して尽力した。多くの人の命を救ったことから死後に医の神として祀られている」
これは阿志芭さんだ。
「五人目は、虚弱な名家の長男。腹違いの妹の死後に跡取りとしての強い自覚を持ち、性悪な弟を追い出して実権を握った。病に倒れるまでの間にかなりの功績を上げて御家を盛り立て、祖霊として敬われている」
瑪珞さんはお兄ちゃんによく似てる。
「六人目は、気性の荒い武家の当主。唯一心を許していた雑用係の娘が妻の策略で死んでから己を恥じ、人が変わったかのように穏やかになった。その後は善政を布き、名君として地元で崇められている」
これは、まだ名前は知らないけど赤色の光の人だよね。
「七人目は、石工職人見習いの少年。彼は遊び仲間の少女が人柱になった後、城の向かいの山に庵を開き、彼女の魂を慰めるため、老衰で死ぬ直前まで無数の石仏を彫り続けた。高名な仏師として名を残している」
これは太儺奴さんだ。
不思議だなぁ。
八十神くんは何でこんな事まで知っているんだろう。それに、今の話は夢で見たから知ってはいるけれど、あたしに関係あるのかな。
「もちろん関係あるよ」
また心を読まれた。
どうなってるんだろう。そんなにあたしって考えてることが分かりやすいのかな。これじゃ隠し事なんて出来ないじゃん。
これもまた読まれたみたいで、八十神くんはこっちを見て困ったように笑っている。
「あのね、榊之宮さん。今までの話に出てきた女の子は全部君なんだよ」
「へぇ……えっ?」
思わず変な声が出ちゃった。
え、なに?
どういうこと???
「君は前世で彼らと出会い、その後の人生を変えたんだ」
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