59 / 98
定められた運命
第58話:魂の傷
しおりを挟む中間テストも終わってひと安心。
色々あって、あんまりテスト勉強出来なかったけど、ひとつも赤点にはならなかった。数学だけはホントにギリギリだったから、お母さんに答案用紙見せるのに勇気が要ったけどね。
で、休みの日にお兄ちゃんに勉強を見てもらうことになった。
「朝陽さん、私たちまでいいんですか?」
「数学ニガテだからマジで助かります!」
「うん。折角だからみんなで復習しよう」
お勉強会 in 我が家。
あたしやお兄ちゃんの部屋は狭いからリビングを少し片付けて、そこに集まった。良ければ千景ちゃんと夢路ちゃんも一緒に、ってお兄ちゃんが言ってくれたんだ。
それと……
「あ、あのっ、お願いします!」
「そんなに緊張しないでよ叶恵ちゃん」
「でも、……」
そう、今回叶恵ちゃんも呼んだ。
あたしの家に来たのは初めてだから、ずっとガチガチに緊張してる。千景ちゃんがいるから怯えているのかもしれない。仲良しグループが違うし、たまに対立してたからね。
いつも一緒にいた歩香ちゃんの様子が変わってしまい、教室だけでなく学校外でも近寄れなくなったこともある。もう一人の深雪ちゃんも誘ったけど断られちゃった。まあ、家が遠いからね。
叶恵ちゃんちも遠いけど、負い目があるからか、強めに誘ったら来てくれた。
そして、呼んだ一番の理由はお兄ちゃんから頼まれたからだ。叶恵ちゃんは前に禍ツ神に憑かれたことがあるから、その後の回復状態を直接見て確認したいんだって。
縁結びの祠の件から一ヶ月くらい経ってるけど、なんで今頃?
「どの教科でもいいよ。分からないところがあったら聞いてね」
「「「「はーい!」」」」
勉強会自体は二時間ほどで終わった。
ニガテな教科をじっくり教えてもらい、つまづいていたところを克服し、少しだけ自信がついた。みんなも同じみたいで、帰り際は笑顔でお兄ちゃんにお礼を言っていた。
「分からないことがあったらいつでも連絡してね。僕は基本いつでも大丈夫だから」
なんと、いつのまにか連絡先の交換までしていた。あたしと夢路ちゃんは持ってないけど、千景ちゃんと叶恵ちゃんはスマホ持ってるんだよね。
「わ、私もスマホ買ってもらう……!」
夢路ちゃんがこんなに悔しそうな顔してるの初めて見た。あたしも次のテストで良い点取れたら買ってもらおうかな。
「叶恵ちゃん、どうだった?」
みんなが帰ってから、お兄ちゃんの部屋でお話する。勉強会だけが目的じゃなかったからね。
「うん。思ったより禍ツ神の影響は残ってなかったよ。憑依されてた時間が短かったのと、阿志芭さんが綺麗に浄化してすぐ小凍羅さんが中に入ったからだろうね」
「よかったぁ! ……ってことは、下手をしたら悪い影響が残ってたかもしれないってこと?」
「そう。一度憑かれるとその強さに比例した傷が魂につく。今回は曲がりなりにも神様だったからね。廃人になる可能性もあったんだ」
「ひえぇ……!」
叶恵ちゃんが行方不明になった夜、あたしが行かなくても、いずれ大人が見つけ出すことは出来たとは思う。でも、それだと危なかったんだ。
暗い中、勇気を出して探しにいって良かった!
『其方は本当に他の者のことばかりだな』
『そーそー。変わんないよねー』
『次に似たようなことがあっても行かさねえ』
『こんだけ言われりゃ行かねーよなぁ?』
圧が、圧がすごい。
「それと、彼女の友達……歩香ちゃんだっけ。その子の豹変っぷりが気になるね」
勉強会の最中、雑談しながらそれとなく叶恵ちゃんから最近の歩香ちゃんの様子を聞き出した。
学校では相変わらず八十神くんにべったりだけど、それ以外では様子が違うらしい。歩香ちゃんのお母さんが心配して叶恵ちゃんのお母さんに相談するほど、家ではひと言も喋らないし喜怒哀楽を出さないんだって。
「何かに憑かれてるのかもしれない」
「そんな……」
もしそうなら早くなんとかしなくちゃ。
0
お気に入りに追加
26
あなたにおすすめの小説
【完結】「幼馴染を敬愛する婚約者様、そんなに幼馴染を優先したいならお好きにどうぞ。ただし私との婚約を解消してからにして下さいね」
まほりろ
恋愛
婚約者のベン様は幼馴染で公爵令嬢のアリッサ様に呼び出されるとアリッサ様の元に行ってしまう。
お茶会や誕生日パーティや婚約記念日や学園のパーティや王家主催のパーティでも、それは変わらない。
いくらアリッサ様がもうすぐ隣国の公爵家に嫁ぐ身で、心身が不安定な状態だといってもやりすぎだわ。
そんなある日ベン様から、
「俺はアリッサについて隣国に行く!
お前は親が決めた婚約者だから仕方ないから結婚してやる!
結婚後は侯爵家のことはお前が一人で切り盛りしろ!
年に一回帰国して子作りはしてやるからありがたく思え!」
と言われました。
今まで色々と我慢してきましたがこの言葉が決定打となり、この瞬間私はベン様との婚約解消を決意したのです。
ベン様は好きなだけ幼馴染のアリッサ様の側にいてください、ただし私の婚約を解消したあとでですが。
ベン様も地味な私の顔を見なくてスッキリするでしょう。
なのに婚約解消した翌日ベン様が迫ってきて……。
私に婚約解消されたから、侯爵家の後継ぎから外された?
卒業後に実家から勘当される?
アリッサ様に「平民になった幼馴染がいるなんて他人に知られたくないの。二度と会いに来ないで!」と言われた?
私と再度婚約して侯爵家の後継者の座に戻りたい?
そんなこと今さら言われても知りません!
※他サイトにも投稿しています。
※百合っぽく見えますが百合要素はありません。
※加筆修正しました。2024年7月11日
「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」
2022年5月4日、小説家になろうで日間総合6位まで上がった作品です。
※表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました
結城芙由奈
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】
私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。
2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます
*「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
※2023年8月 書籍化
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。
束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。
だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。
そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。
全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。
気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。
そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。
すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。
【完】あの、……どなたでしょうか?
桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー
爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」
見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は………
「あの、……どなたのことでしょうか?」
まさかの意味不明発言!!
今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!!
結末やいかに!!
*******************
執筆終了済みです。
記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話
甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。
王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。
その時、王子の元に一通の手紙が届いた。
そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。
王子は絶望感に苛まれ後悔をする。
王子が主人公のお話です。
番外編『使える主をみつけた男の話』の更新はじめました。
本編を読まなくてもわかるお話です。
旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます
結城芙由奈
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】
ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる