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定められた運命

第58話:魂の傷

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 中間テストも終わってひと安心。
 色々あって、あんまりテスト勉強出来なかったけど、ひとつも赤点にはならなかった。数学だけはホントにギリギリだったから、お母さんに答案用紙見せるのに勇気が要ったけどね。

 で、休みの日にお兄ちゃんに勉強を見てもらうことになった。

朝陽あさひさん、私たちまでいいんですか?」
「数学ニガテだからマジで助かります!」
「うん。折角だからみんなで復習しよう」

 お勉強会 in 我が家。

 あたしやお兄ちゃんの部屋は狭いからリビングを少し片付けて、そこに集まった。良ければ千景ちかげちゃんと夢路ゆめじちゃんも一緒に、ってお兄ちゃんが言ってくれたんだ。
 それと……

「あ、あのっ、お願いします!」
「そんなに緊張しないでよ叶恵かなえちゃん」
「でも、……」

 そう、今回叶恵ちゃんも呼んだ。
 あたしの家に来たのは初めてだから、ずっとガチガチに緊張してる。千景ちゃんがいるから怯えているのかもしれない。仲良しグループが違うし、たまに対立してたからね。

 いつも一緒にいた歩香あゆかちゃんの様子が変わってしまい、教室だけでなく学校外でも近寄れなくなったこともある。もう一人の深雪みゆきちゃんも誘ったけど断られちゃった。まあ、家が遠いからね。
 叶恵ちゃんちも遠いけど、負い目があるからか、強めに誘ったら来てくれた。

 そして、呼んだ一番の理由はお兄ちゃんから頼まれたからだ。叶恵ちゃんは前に禍ツ神マガツカミに憑かれたことがあるから、その後の回復状態を直接見て確認したいんだって。

 縁結びの祠の件から一ヶ月くらい経ってるけど、なんで今頃?





「どの教科でもいいよ。分からないところがあったら聞いてね」
「「「「はーい!」」」」

 勉強会自体は二時間ほどで終わった。
 ニガテな教科をじっくり教えてもらい、つまづいていたところを克服し、少しだけ自信がついた。みんなも同じみたいで、帰り際は笑顔でお兄ちゃんにお礼を言っていた。

「分からないことがあったらいつでも連絡してね。僕は基本いつでも大丈夫だから」

 なんと、いつのまにか連絡先の交換までしていた。あたしと夢路ちゃんは持ってないけど、千景ちゃんと叶恵ちゃんはスマホ持ってるんだよね。

「わ、私もスマホ買ってもらう……!」

 夢路ちゃんがこんなに悔しそうな顔してるの初めて見た。あたしも次のテストで良い点取れたら買ってもらおうかな。






「叶恵ちゃん、どうだった?」

 みんなが帰ってから、お兄ちゃんの部屋でお話する。勉強会だけが目的じゃなかったからね。

「うん。思ったより禍ツ神の影響は残ってなかったよ。憑依されてた時間が短かったのと、阿志芭アシハさんが綺麗に浄化してすぐ小凍羅コトラさんが中に入ったからだろうね」
「よかったぁ! ……ってことは、下手をしたら悪い影響が残ってたかもしれないってこと?」
「そう。一度憑かれるとその強さに比例した傷が魂につく。今回は曲がりなりにも神様だったからね。廃人になる可能性もあったんだ」
「ひえぇ……!」

 叶恵ちゃんが行方不明になった夜、あたしが行かなくても、いずれ大人が見つけ出すことは出来たとは思う。でも、それだと危なかったんだ。

 暗い中、勇気を出して探しにいって良かった!

其方そなたは本当に他の者のことばかりだな』
『そーそー。変わんないよねー』
『次に似たようなことがあっても行かさねえ』
『こんだけ言われりゃ行かねーよなぁ?』

 圧が、圧がすごい。

「それと、彼女の友達……歩香ちゃんだっけ。その子の豹変っぷりが気になるね」

 勉強会の最中、雑談しながらそれとなく叶恵ちゃんから最近の歩香ちゃんの様子を聞き出した。

 学校では相変わらず八十神やそがみくんにべったりだけど、それ以外では様子が違うらしい。歩香ちゃんのお母さんが心配して叶恵ちゃんのお母さんに相談するほど、家ではひと言も喋らないし喜怒哀楽を出さないんだって。

「何かに憑かれてるのかもしれない」
「そんな……」

 もしそうなら早くなんとかしなくちゃ。
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