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学校の怪
第38話:過去の事件
しおりを挟む「慰霊碑、そんなに危ないの?」
学校で飼っていた動物たちのお墓だと聞いている。きちんとお墓があるんだから化けて出たりはしないんじゃないの?
「あそこに入っているのは天寿をまっとうした動物だけじゃない。もしそうなら、わざわざ慰霊碑なんて仰々しいものは必要ないからね」
「どういうこと? お世話する生徒が減ったから飼うのをやめたんじゃないの?」
更に尋ねると、眼鏡の奥にある瞳が悲しそうに揺らいだ。お兄ちゃんは少し躊躇ったあと、沈んだ声でぽつぽつと話し始めた。
「あそこで祀られてる動物たちの大半は殺されたんだ。やったのは生徒じゃない。隣町の不良が夜中に学校の敷地に入り込んで面白半分に殺した」
「えっ……」
信じられない!
「僕が生まれる前の事件だから親世代しか真実は知らないはずだよ。当時、現場はひどい有り様だったらしい。学校も生徒も新しく動物を飼うのが怖くなったんだろうね。それ以降は慰霊碑を建て、飼育小屋は使われなくなった」
「……」
そんなことがあったなんて。
むかし学校でそんな悲惨な事件があったことどころか、慰霊碑の存在も知らなかった。
「慰霊碑はすぐに直したんだし、放っておいても大丈夫かな?」
『いや、そうとも言い切れん』
『倒れた石を元に戻したくらいじゃダメなんだよね~』
御水振さんと小凍羅さんが話に入ってきた。いつのまにか七つの光があたしの周りに姿を現している。
「やはり、荒れてますか」
『早く鎮めねば周りに影響が出るだろう』
「……そうですか」
御水振さんの返答に、お兄ちゃんは顎に手を当てて考え込み始めた。
「周りに影響って、なにか起こるの?」
「悪い気に晒されていると考え方が攻撃的になったり自暴自棄になったりするんだ。治安の悪いところは大体そうだよ」
「え、やだそんなの」
おばけが襲ってくるとかそういうのじゃないんだ。気付かないうちに気持ちが歪んできてしまうってこと?
「僕が行きたいところなんだけど、あいにくまだ本調子じゃなくて」
「無理しなくていいよ! 今だって、起きて話をするの疲れるでしょ?」
神社の末社の神様を何とかするためにお兄ちゃんはかなり無理をした。あれから二日しか経ってないから回復していない。
「あたしが行く!」
『今回はそれが良いだろうな』
『ボクたちがついてっから、余程のことがない限りは安全だしね~』
「……そうだね」
いつもは止めるお兄ちゃんも今回ばかりは賛同してくれた。
「僕には鎮めることしか出来なかったけど、阿志芭さんの力なら動物たちの魂を浄化できると思う」
「う、うん」
「昼間近付けば人目につく。御水振さんたちは普通の人には見えないとはいえ、もし何かあれば夕月が怪しまれる」
「そ、そっか」
でも、確かにそうだ。ただでさえも他に何もない場所だ。慰霊碑が壊されたばかりの時期だし、迂闊に近付けば校舎の窓から丸見え。かといって、誰もいない時間帯……例えば夜に学校に忍び込むのは怖い。
『其方の周りには弱い霊は近付けぬ。阿志芭の力で強制的に浄化しておるからな』
「現場に行くだけで終わるかな?」
『そうとも限らん。ひとつひとつは弱い動物霊だが、まとまれば手強い』
うまくいけば慰霊碑に触れるだけで済む。
もし手強い霊になってたら、縁結びの祠の時みたいに、みんなの力を借りて弱めてから浄化しなくてはならない。
「明日やってみる!」
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