【完結】別れを告げたら監禁生活!?

みやこ嬢

文字の大きさ
上 下
34 / 36

34話・抜き打ち本性チェック

しおりを挟む


 騎士団と合流したリオン様は道案内としてアルド様とダナさん、あと捕虜にした男たちを連れて隣国へと出立致しました。

 デュモン様が同行を強く希望するも、背中の傷が開きかけているため医師とグレース様に強く止められて断念したようです。
 リオン様の「リジーニ伯爵領は我が国の一部。放置できるか」という言葉を聞き、デュモン様はようやく引き下がりました。

「お嬢、すみません。オレがもっとうまく立ち回れば婚約破棄なんてことには」
「あなたが気にする必要はないわ。アルド様の女癖の悪さは噂で聞いてたもの。結婚を機にあたくし一筋になっていただければ過去の行いについては目を瞑りますけど、流石に堂々と愛人を紹介されるとは予想外でしたわ!」

 アルド様は社交的で奔放な方で、弟のリオン様とは真逆の性格と言えるでしょう。

「あたくしの分まであなたが怒ってくれたもの。もういいわ」

 あれほどまでにこだわっていた婚約を破棄したばかりだというのに、グレース様はどこか吹っ切れた様子です。

「さあさあ、いつまでも怪我人を起こしていてはいけませんよ。元気な方は別のお部屋に移りましょうね」

 老メイドもとい先代侯爵夫人に促され、私たちは二階の客室へと戻りました。グレース様はデュモン様のそばについていたいということで、階下の部屋に残しております。

「何とかなりそうで良かったわ」
「そうね、一時はどうなることかと」

 客室に戻り、三人だけになった途端にコニスとアリエラがソファーに崩れ落ちました。彼女たちは武装した男たち相手に箒や銀器で果敢に立ち向かい、身を守ったのです。貴族の令嬢はあのような場面で前に出ることなどまずありません。

「ありがとう。あなたたちがいてくれて、とても心強かったわ」

 改めて御礼の言葉を伝えると、二人は顔を見合わせて肩をすくめました。

「フラウが頑張ってるんだもん。わたしたちだってやる時はやるのよ」
「そうそう。フラウだって先代ネレイデット侯爵夫人をお助けしたじゃない。てゆーか、肩だいじょうぶ?」

 そういえば、助けた際に左肩を打たれていたのでした。思い出した途端、なんだか痛くなってきたような気がします。

「わ、忘れてましたわ……!」

 背中側にあるドレスの留め具を外し、ブラウスのボタンをゆるめて肩を出すと、二人が息を飲んだのが分かりました。そんなに酷いことになっているのかしら。

「うわあ、腫れてる。血は出てないけど」
「痛々しいわね。冷やしたほうがいいわ」

 そこへワゴンを押した先代侯爵夫人とルウがやってきました。お茶の支度をしてくれていたのね。
 腫れた私の肩を見て、驚きの表情で固まっております。

「ああ、わたしを助けるために打たれた時のものですよね。気付けなくてごめんなさい。すぐ医師を呼びますね」
「あっ、あたしが行きますよ! ついでにおじいちゃんから氷を貰ってきますぅ」

 すぐさまルウが階下に降りていきました。おじいちゃんとは老コック……先代侯爵様のことです。
 先代侯爵夫人はそばに寄り、いたわるようにそっと私の手を取ります。

「あなたはわたしの正体を知らずとも身を挺して守ってくれましたね。庭師の時もそう。普段からお手伝いを申し出てくれていたし、主人とふたりで感心しておりましたのよ」
「そんな……私など」
「いいえ。わたしがメイドに扮してお客様をおもてなしするのは単なる趣味ですが、お客人の人柄を見るためでもあります。身分の高い者には誰しも丁寧に接しますが、使用人相手にはついつい本性が出ますから」

 メイドは趣味でしたのね。つまり、別邸に招かれた客はみな試されていたのでしょう。

「ちなみに、グレース嬢も以前アルドによって連れて来られているのですよ。あの子は高慢に見えますが、庇護下にある者にはとても情に厚く優しい性分をしております。とても良い子だわ」

 グレース様は先代侯爵夫人の抜き打ち本性チェックをクリアしておりましたのね。その後ネタばらしをされたのでしょう。
 私は半月以上も別邸でお世話になっておりましたのに、ずっと知らないままでしたわ。本来ならばリオン様が教えてくださるべきだったのではないかしら。彼のことですから、きっと忘れているのだわ。

「リオンはアルドと違って不器用ですから貴女に迷惑をかけるでしょうけど、どうか見捨てないでやってください」
「え、ええ……」

 しっかりと手を握られ、直接頼まれてしまいました。そんなこと言われたら断れません。

 医師に診ていただき、ルウが持ってきてくれた氷で冷やします。肩の腫れは数日で引くだろうとの見立てに安堵しました。

「フラウの肩がこんなになってたの、リオン様が知ったらめちゃくちゃ怒りそうだよね~」
「反乱軍が血祭りに上げられてたかも」

 リオン様が何も知らないうちに出立したことで、反乱軍は命拾いをしたのかもしれません。
しおりを挟む
感想 35

あなたにおすすめの小説

私達、政略結婚ですから。

恋愛
オルヒデーエは、来月ザイデルバスト王子との結婚を控えていた。しかし2年前に王宮に来て以来、王子とはろくに会わず話もしない。一方で1年前現れたレディ・トゥルペは、王子に指輪を贈られ、二人きりで会ってもいる。王子に自分達の関係性を問いただすも「政略結婚だが」と知らん顔、レディ・トゥルペも、オルヒデーエに向かって「政略結婚ですから」としたり顔。半年前からは、レディ・トゥルペに数々の嫌がらせをしたという噂まで流れていた。 それが罪状として読み上げられる中、オルヒデーエは王子との数少ない思い出を振り返り、その処断を待つ。

拝啓、愛しの侯爵様~行き遅れ令嬢ですが、運命の人は案外近くにいたようです~

藤原ライラ
ファンタジー
心を奪われた手紙の先には、運命の人が待っていた――  子爵令嬢のキャロラインは、両親を早くに亡くし、年の離れた弟の面倒を見ているうちにすっかり婚期を逃しつつあった。夜会でも誰からも相手にされない彼女は、新しい出会いを求めて文通を始めることに。届いた美しい字で洗練された内容の手紙に、相手はきっとうんと年上の素敵なおじ様のはずだとキャロラインは予想する。  彼とのやり取りにときめく毎日だがそれに難癖をつける者がいた。幼馴染で侯爵家の嫡男、クリストファーである。 「理想の相手なんかに巡り合えるわけないだろう。現実を見た方がいい」  四つ年下の彼はいつも辛辣で彼女には冷たい。  そんな時キャロラインは、夜会で想像した文通相手とそっくりな人物に出会ってしまう……。  文通相手の正体は一体誰なのか。そしてキャロラインの恋の行方は!? じれじれ両片思いです。 ※他サイトでも掲載しています。 イラスト:ひろ様(https://xfolio.jp/portfolio/hiro_foxtail)

【完結】氷の王太子に嫁いだら、毎晩甘やかされすぎて困っています

21時完結
恋愛
王国一の冷血漢と噂される王太子レオナード殿下。 誰に対しても冷たく、感情を見せることがないことから、「氷の王太子」と恐れられている。 そんな彼との政略結婚が決まったのは、公爵家の地味な令嬢リリア。 (殿下は私に興味なんてないはず……) 結婚前はそう思っていたのに―― 「リリア、寒くないか?」 「……え?」 「もっとこっちに寄れ。俺の腕の中なら、温かいだろう?」 冷酷なはずの殿下が、新婚初夜から優しすぎる!? それどころか、毎晩のように甘やかされ、気づけば離してもらえなくなっていた。 「お前の笑顔は俺だけのものだ。他の男に見せるな」 「こんなに可愛いお前を、冷たく扱うわけがないだろう?」 (ちょ、待ってください! 殿下、本当に氷のように冷たい人なんですよね!?) 結婚してみたら、噂とは真逆で、私にだけ甘すぎる旦那様だったようです――!?

夫と息子は私が守ります!〜呪いを受けた夫とワケあり義息子を守る転生令嬢の奮闘記〜

梵天丸
恋愛
グリーン侯爵家のシャーレットは、妾の子ということで本妻の子たちとは差別化され、不遇な扱いを受けていた。 そんなシャーレットにある日、いわくつきの公爵との結婚の話が舞い込む。 実はシャーレットはバツイチで元保育士の転生令嬢だった。そしてこの物語の舞台は、彼女が愛読していた小説の世界のものだ。原作の小説には4行ほどしか登場しないシャーレットは、公爵との結婚後すぐに離婚し、出戻っていた。しかしその後、シャーレットは30歳年上のやもめ子爵に嫁がされた挙げ句、愛人に殺されるという不遇な脇役だった。 悲惨な末路を避けるためには、何としても公爵との結婚を長続きさせるしかない。 しかし、嫁いだ先の公爵家は、極寒の北国にある上、夫である公爵は魔女の呪いを受けて目が見えない。さらに公爵を始め、公爵家の人たちはシャーレットに対してよそよそしく、いかにも早く出て行って欲しいという雰囲気だった。原作のシャーレットが耐えきれずに離婚した理由が分かる。しかし、実家に戻れば、悲惨な末路が待っている。シャーレットは図々しく居座る計画を立てる。 そんなある日、シャーレットは城の中で公爵にそっくりな子どもと出会う。その子どもは、公爵のことを「お父さん」と呼んだ。

あなたのためなら

天海月
恋愛
エルランド国の王であるセルヴィスは、禁忌魔術を使って偽の番を騙った女レクシアと婚約したが、嘘は露見し婚約破棄後に彼女は処刑となった。 その後、セルヴィスの真の番だという侯爵令嬢アメリアが現れ、二人は婚姻を結んだ。 アメリアは心からセルヴィスを愛し、彼からの愛を求めた。 しかし、今のセルヴィスは彼女に愛を返すことが出来なくなっていた。 理由も分からないアメリアは、セルヴィスが愛してくれないのは自分の行いが悪いからに違いないと自らを責めはじめ、次第に歯車が狂っていく。 全ては偽の番に過度のショックを受けたセルヴィスが、衝動的に行ってしまった或ることが原因だった・・・。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

どうも、死んだはずの悪役令嬢です。

西藤島 みや
ファンタジー
ある夏の夜。公爵令嬢のアシュレイは王宮殿の舞踏会で、婚約者のルディ皇子にいつも通り罵声を浴びせられていた。 皇子の罵声のせいで、男にだらしなく浪費家と思われて王宮殿の使用人どころか通っている学園でも遠巻きにされているアシュレイ。 アシュレイの誕生日だというのに、エスコートすら放棄して、皇子づきのメイドのミュシャに気を遣うよう求めてくる皇子と取り巻き達に、呆れるばかり。 「幼馴染みだかなんだかしらないけれど、もう限界だわ。あの人達に罰があたればいいのに」 こっそり呟いた瞬間、 《願いを聞き届けてあげるよ!》 何故か全くの別人になってしまっていたアシュレイ。目の前で、アシュレイが倒れて意識不明になるのを見ることになる。 「よくも、義妹にこんなことを!皇子、婚約はなかったことにしてもらいます!」 義父と義兄はアシュレイが状況を理解する前に、アシュレイの体を持ち去ってしまう。 今までミュシャを崇めてアシュレイを冷遇してきた取り巻き達は、次々と不幸に巻き込まれてゆき…ついには、ミュシャや皇子まで… ひたすら一人づつざまあされていくのを、呆然と見守ることになってしまった公爵令嬢と、怒り心頭の義父と義兄の物語。 はたしてアシュレイは元に戻れるのか? 剣と魔法と妖精の住む世界の、まあまあよくあるざまあメインの物語です。 ざまあが書きたかった。それだけです。

【完結】「君を手に入れるためなら、何でもするよ?」――冷徹公爵の執着愛から逃げられません」

21時完結
恋愛
「君との婚約はなかったことにしよう」 そう言い放ったのは、幼い頃から婚約者だった第一王子アレクシス。 理由は簡単――新たな愛を見つけたから。 (まあ、よくある話よね) 私は王子の愛を信じていたわけでもないし、泣き喚くつもりもない。 むしろ、自由になれてラッキー! これで平穏な人生を―― そう思っていたのに。 「お前が王子との婚約を解消したと聞いた時、心が震えたよ」 「これで、ようやく君を手に入れられる」 王都一の冷徹貴族と恐れられる公爵・レオンハルトが、なぜか私に異常な執着を見せ始めた。 それどころか、王子が私に未練がましく接しようとすると―― 「君を奪う者は、例外なく排除する」 と、不穏な笑みを浮かべながら告げてきて――!? (ちょっと待って、これって普通の求愛じゃない!) 冷酷無慈悲と噂される公爵様は、どうやら私のためなら何でもするらしい。 ……って、私の周りから次々と邪魔者が消えていくのは気のせいですか!? 自由を手に入れるはずが、今度は公爵様の異常な愛から逃げられなくなってしまいました――。

処理中です...