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46話・小さな願い
しおりを挟む「プーさん、もしかして知ってた?」
泣き腫らして真っ赤になった目元をハンカチで拭いながら、ミノリちゃんが俺のほうをちらりと見た。
「実はルミちゃんから聞いた」
「やっぱり」
「教えてもらえなかったら、俺なんも知らないままだったよ。ミノリちゃんがこんなに悩んでるのにさ」
「だ、だって」
やっと話してくれたけど、この件に俺を巻き込むつもりはないようだ。
十日ほど体力作りをしてきたとはいえ、ようやく息切れせずにおばあちゃん達の強歩についていけるようになった程度。根っからのスポーツマンである須崎に敵うはずもない。というか、漫画やゲームじゃないんだから、アイツを倒せばいいという問題ではない。
「須崎には勝てないけど、アイツがミノリちゃんに近付かないよう間に入るくらいなら出来るよ。話し合いの場に行って直接文句言ってやろっか」
「ううん大丈夫。これは私の問題だもん。お父さん達に相談して、須崎君にハッキリ断る!」
弱気だった彼女がほんの少しだけ闘志を見せた。しかし、今までだって何度も断っていたはずだ。生半可な対応では同じことの繰り返しになってしまう。
「でも、怖いから……一緒に居てほしい」
真っ赤な顔を伏せながら、震える声でミノリちゃんが俺にそう言った。目をぎゅっと閉じて、膝の上に置かれた手には力が入っている。俺にこの『ささやかなお願い』をするだけで、彼女はかなりの勇気を必要としたんだろう。
「わかった。一緒にいる」
「ありがとうプーさん」
やっと俺を頼ってくれた。
絶対彼女の力になってやる。
俺は腕力もないしケンカもしたことがない。ハッキリ言えば役立たずだ。だが、わざわざルミちゃんが今回の件を教えに来てくれたのは、俺にしか出来ないことがあるからだ。自分の役割を理解して、あらゆる事態に対応出来るように備えておく必要がある。
実はミノリちゃんから話をしてもらう前に下準備を済ませている。あとは当日の須崎の出方を見て対応するだけ。話し合いだけで諦めてくれればいいんだけど、そんな簡単にはいかないだろう。
あくまで奥の手。
俺が出るのは最終手段だ。
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