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41話・腹を割る1
しおりを挟む仕事終わりを狙ってショウゴの職場に来た。
ショウゴの着ている作業服はオイルなどでところどころ汚れていた。空調のない整備所で客の車の点検やオイル交換をしていたからだろう。ガソリンスタンドには屋根があるが、基本的には屋外だ。ショウゴは以前会った時より更に日焼けしていた。
「それで、なんだよ話って」
俺のすぐ隣のフェンスにもたれ、ショウゴが促してきた。
話があるからと職場まで来たのは俺だが、本人を前にすると切り出しにくい。だが、仕事で疲れているコイツを意味もなく引き止めるわけにもいかない。気持ちを落ち着けるために息を大きく吐き出し、意を決して口を開く。
「俺、働くことにした」
「へぇえ? どこで?」
「那加谷市」
俺の返答に、ショウゴは驚きで目を見開いた。
「なんでそんな遠くに」
「地元に俺が働けるような場所がないからだよ」
ここはパチンコ屋もないような田舎の町。駅前に何軒か飲み屋はあるが個人経営の小さな店ばかり。それ以外で夜間営業している店はほとんど無い。俺が働けるような職場は皆無と言っていい。だから、この町を出る。
那加谷市は俺たちの住む町からは遠い地方都市。電車を乗り継いで、片道何時間もかかるような場所だ。そこの人材派遣会社を幾つか受け、体質と二年の空白期間を理由に落とされたが、最後の一社に拾ってもらえた。
派遣会社を選んだ理由は、色んな職種を試してみたかったからだ。まず自分が何が出来るのか、一度も働いたことがない俺には分からない。合う仕事を見つけて、出来ればスキルアップも目指したい。夜間か完全屋内の仕事に限られるが、田舎町よりは選択肢がある。
「住むところは?」
「寮がある。あとは俺が行くだけ」
「そうか……」
はあ、と大きな溜め息を吐き出しながら、ショウゴは頭を掻いた。長い付き合いだ。これはコイツが動揺している時の仕草だと分かる。
「遠くに行く前に、おまえには直接礼を言っておかなきゃと思ってさ」
「礼? この前のことか?」
ショウゴが言っているのは、ストーカー野郎に殴られて気絶した俺を家まで運び、更に看病までしてくれた件だ。もちろんありがたく思っているが、それだけじゃない。
「いや。今までの全部だよ」
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