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26話・友人の小言
しおりを挟む頭が痛くてガンガンする。
身体がダルくて気持ち悪い。
このままずっと眠っていたい。
ああ、なんでこんなにしんどいんだっけ。
額に冷たいものが乗せられてる。
なんだこれ。
「──あれ?」
重い瞼を無理やりこじ開けると、見慣れた天井が目に入った。俺んちの俺の部屋だ。開け放たれた窓の外、簾越しに見えるのは夕焼けの色。一瞬意味が分からなくてぼんやりと眺める。
「起きたか」
すると、声を掛けられた。窓の反対側に顔を向ければ、そこにはショウゴがいた。なんでコイツが俺の部屋にいるんだ。慌てて飛び起きようとしたが、身体のあちこちが痛くて動けない。動揺する俺を見て、ショウゴは大きな溜め息をついた。
「何もしねェから寝とけ」
「え、なんで部屋に……」
「リエから呼び出されて、倒れたおまえを運んだだけだ」
「リエが?」
そうだ、俺は河川敷の公園で気を失ったんだ。倒れた俺を運ぶためにリエがショウゴを呼んだのか。あの場に居たのは須崎以外女の子ばかりだったもんな。
「さっき近所の医者呼んで診てもらった。軽い熱中症だとよ」
「そっか。世話かけたな」
「別に構わねェが、頬と手の甲に軽い火傷。腹は打撲と内出血。こりゃあ何だ?」
「い、色々あったんだよ」
火傷は炎天下の中走り回ったせいで、腹はストーカー野郎こと須崎に殴られた跡だ。やけに痛いと思ったが内出血してたのか。現役空手部の拳は伊達じゃないな。
誰にやられたのかまではショウゴは知らされていないようだ。もし知ったら個人的に報復しに行きそうだもんな。須崎は悪質なストーカーだが高校生だ。社会人であるショウゴが殴ったら問題になる。
ふと見れば、枕元には氷水が入った洗面器が置いてあった。ショウゴが濡れタオルを手に取り、氷水に浸して固く絞ってから再び額の上に乗せる。さっきの冷たいのはこれか。殴られた腹部にも湿布が貼ってある。
もしかして、ずっと看病してくれていたのか。
「ミノリちゃんたちは?」
「おまえがダウンしてる間にメガネの子と一緒に車で自宅に送り届けた。心配してたぞ」
「そっか」
ルミちゃんがついてるなら安心だ。怖い目に遭ったばかりだ。ゆっくり休んで心の傷を癒してもらいたい。
「それにしても、おまえの部屋は相変わらず何もねェな。上がるのは二年、いや三年ぶりか」
「……」
ここ数年ショウゴを家に入れたことはない。あの日以来ずっと拒んできたからだ。
今回は非常事態で、俺も意識がなかったから不可抗力とも言える。コイツには迷惑を掛けた。気持ちは落ち着かないが、今すぐ出て行けとは言えない。
「こんな晴れた昼間に外に出たのか」
「ああ」
「何のケアもせずにか?」
「急いでたんだよ」
「日焼け止め、見当たらねェんだけど」
「……この前使い切ってから買ってない」
「ハァ? アホか」
ショウゴが呆れて溜め息をついた。
軽度とはいえ、色素欠乏症である俺が何の対策も無しに昼間外に出るなんて有り得ない。一応UVカットのパーカーとサングラスは身に付けていたが、全てを防げるわけではない。サンスクリーン剤を全身にしっかり塗ってようやく外出できるのだ。
学生時代からの付き合いで、ショウゴはそういった事情もよく知っている。だから小言を言う。
「それより聞きたいことがある」
前置きをしてから、ショウゴは険しい目つきで俺を見下ろした。
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