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0話・衝動的な抱擁
しおりを挟む台所に立ち、慣れた手つきで包丁を使って食材を切り分けていく彼女。その小さな背中を見ていたら、吸い寄せられるように足が前に出た。
知り合ったばかりの女子高生が自分の家の台所で料理を作ってくれるという状況に浮き立つ気持ちがあったのだろう。それだけではない。無防備な後ろ姿にどうしようもなく惹かれた。焦がれるほどの、抗えない魅力があった。
「ねえ、フライパンどこ?」
背を向けたままの彼女に声を掛けられ、一瞬足が止まる。でも、触れたい衝動は抑えられない。ゴトン、と包丁がまな板に落ちた音がした。彼女が僅かに強張ったのが分かる。両腕を回して抱きつけば、見た目より遥かに華奢な、女の子特有の柔らかな感触と甘い匂いに混乱して何も考えられなくなった。
あれ、俺、どうしたんだっけ。
なんでミノリちゃんに抱き付いてるんだっけ。
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